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黒猫令嬢は毒舌魔術師の手の中で  作者: gacchi(がっち)


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23/37

23.友人を得る?

「どうしてあなたがジルベール様の助手なの?

 マリーナ姉様でもダメだったのに!」


「マリーナ姉様?」


この令嬢はマリーナさんの妹なのだろうか。

そういえばマリーナさんは貴族出身だったのを思い出す。


「あなたはマリーナさんの妹なの?」


「違うわ。従妹よ。エレーナ・バイイ。

 って、私のことはどうでもいいわ。

 どうしてあなたが助手内定なのよ!」


バイイ家は侯爵家だったはず。

マリーナさんが私に貴族名鑑を覚えさせたのはこういう時のためか。

相手の身分がわかったのはいいけど、

質問の答えはどうしていいかわからない。


「どうして私が助手なのかはわかりません。

 ジルベール様に聞いてきます」


婚約者だから助手にするのか、

保護する名目が必要だったから助手なのか。

理由を聞いていなかったことに気がつく。


「馬鹿にしているの!?」


「いえ、本当に知らないので。

 ジルベール様に聞かないと私にも理由はわからなくて」


どうやら怒らせてしまったようだ。

だけど、何を言えば許してくれるのかわからない。

困っていたら、マリーナさんが教室に迎えに来てくれた。


「エレーナ!?

 あなた、シャル様に何をしているのですか!」


「マリーナ姉様!」


よかった。これで何とかなりそう?

金髪青目のエレーナ様と薄茶色の髪で紫目のマリーナさん。

色は違うけど顔立ちは似ている。


こうして隣にいなければ気がつかないけれど、

並んでいれば姉妹だと言われても納得する。


「シャル様、申し訳ございません。

 従妹がいることを失念しておりました。

 エレーナが失礼なことをしたのではないでしょうか」


「姉様!どうして姉様が謝るのですか!

 別に変なことは聞いていません。

 どうして助手内定者になれたのか聞いただけです!

 だって、姉様だってなれなかったのに、

 どうしてこの人が選ばれたのかわからないから!」


「ジルベール様が認めたから助手内定者なのよ!

 あなたが疑問に思うこと自体が失礼になります!

 それに、もうすでに魔術院に所属が決まっているということが、

 どれだけすごいのか、わからないのですか!」


「え……うそ。もしかして上級魔術師なのですか?」


「そうでなければ学園卒業前に所属することなど不可能です!

 どうしてそういつも考えなしに行動するのですか?

 しっかり反省してシャル様に謝りなさい!」


「そ、そんなぁ……」


マリーナさんに怒られたエレーナ様は、

落ち込んだ様子で私の方に向き直った。

さっきまでの勢いはどこに行ったのか、しょんぼりしている。


「ごめんなさい……」


「えっと、納得してくれたのならもういいですよ。

 疑問に思うのも仕方ないですし」


「うぅ……いい人だった。本当にごめんなさい」


「ふふ。気にしてません」


ちょっと驚いたけれど、マリーナさんのことが好きなのかな。

だから、マリーナさんがなれなかった助手に、

知らない私がなると聞いて気に入らなかったんだ。

その気持ちはわかるから怒る気にはならない。


マリーナさん、優秀だしすごいもの。

こんな人が従姉妹にいたらあこがれるよね。


「エレーナ、あなたが学園にいるのを忘れていたけれど、

 ちょうどいいかもしれないわ。

 何かあればすぐに知らせなさい。

 シャル様に手を出そうとしている者がいれば、

 排除してかまわないから」


「わかりました!私がシャル様を守ります!」


「頼んだわよ」


「はい!」


さっきまであんなに怒っていたのに私を守ってくれるらしい。

それでいいのかなって首をかしげていたら、

マリーナさんとエレーナ様に微笑まれる。


「シャル様はこういう方だから」


「わかりました。全力でお守りします」


「……よくわからないけど、お願いします?」


揉めなかったからいいことにしようかな。

問題がおきればジルベール様も心配するだろうし。


エレーナ様にはまた明日と挨拶をして、

マリーナさんと馬車置き場に向かう。

ベンたちが迎えに来てくれているはず。


階段を下りて、外へ出る通路を歩いていたら、

外に赤いものが見えた気がして立ち止まる。


「シャル様、どうしたのですか?」


窓の外、中庭にドリアーヌがいた。

誰かと言い合いしているようだ。


「あれはシャル様の異母妹ですね。

 ……あの言い合いしている相手は、ジルベール様の従妹です」


「従妹?あぁ!侯爵家の屋敷に居座っている?」


「ええ、もう子爵家に戻ったようですけど、その従妹です。

 名前はシルヴィ・オサール。オサール子爵家の一人娘です」


「どうしてドリアーヌと言い合いしているんだろう。

 声が聞ける場所まで行ってもいい?」


「止めておきましょう。関わらないほうがよさそうですし、

 ジルベール様が待っていますよ。

 あの二人が言い合いしている理由は調べておきます」


「……そうだね。

 ジルベール様を待たせてはいけないよね。

 わかった。魔術院に行きましょう」


「はい」


二人のことは気になったけれど、急いで馬車置き場へと向かう。

もう馬車が迎えに来ていて、ベンたちが私たちを待っていた。

エレーナ様と話していたから待たせてしまっていたらしい。


「待たせてごめんなさい」


「問題ないですよ。さぁ、行きましょうか」


魔術院に着いた時にはお昼時間を過ぎていたけれど、

ジルベール様は昼食を取らずに待っていてくれた。

塔に入るとすぐに抱き上げられて無事を確認される。


「遅かったな。何かあったのか?」


「いろいろとありましたけど、たぶん大丈夫です」


今のところは何も起きてない。

だから、大丈夫なはずだと思ったのは二日後までのことだった。



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