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黒猫令嬢は毒舌魔術師の手の中で  作者: gacchi(がっち)


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22.学園生活

学園に編入する日、マリーナさんが作ってくれた制服に着替える。

紺色のワンピースにボレロ。そして、ベールがついた帽子。


「ベールで髪と猫耳を隠すんだね」


「はい。以前のように風でめくれたりはしません!

誰かが帽子を取ろうとしても、手をはじくようになっています」


「すごい……さすがマリーナさん」


以前、エクトル様の風魔術でフードがめくれて、

黒髪と猫耳を見られてしまったのを思い出す。

学園であんなことが起きれば騒ぎになってしまう。


マリーナさんに帽子をかぶせてもらって、ベールを調整してもらう。

中から外は見えるけど、外からは見えないようになっている。

ちらりと鼻と唇が見え、のぞきこんでも目までしか見えない。

これなら人前に出ても安心できる。


「名前はシャル様の名で登録してあります。

 魔術師は家名を名乗らなくていいので、問題ありません」


「そうなの?家名を名乗らなくてもいいんだ」


さすがにアンクタン家の名で編入してしまったら、

ドリアーヌに気がつかれてしまう。


ジルベール様は私を保護したとお父様に連絡をした時、

私がジルベール様の屋敷にいることを家族にも言わないようにと、

きつく脅したと言っていた。


お父様が本当に家族に言っていないのであれば、

ドリアーヌは私が死んだと思っているかもしれない。

それなら、そう思わせておいた方がいい。



「シャル様は魔術院に所属するのが決まっていますので、

 魔術に関する授業は免除になります。

 午前中の座学だけ受けたら終わりです」


「午前中だけ?午後は?」


「馬車が迎えに来ますので、午後は魔術院でお過ごしください」


「本当!?」


よかった。学園に行くのはうれしいけれど、

一日中ジルベール様と離れるのはさみしかった。


午後は今まで通り魔術院で本を読んで過ごせるとわかって、

不安だったのが半分に減った気がする。


準備ができたのでソファに座るジルベール様に声をかけると、

読みかけの本をテーブルに置いた。


「ジルベール様。用意できました!」


「あぁ、終わったのか。よし、行こう」


いつものように抱き上げられて馬車に乗る。

身体の大きさは元に戻ったのに、相変わらずひざの上に座らされる。

重いんじゃないかと思ったけれど、ジルベール様に言わせれば、

それほど大きさも重さも変わっていないそうだ。


そんなに小柄だと思っていなかったのだけど、

マリーナさんよりも小さいし、自分よりも小さい人を見たことがない。

あれ。もしかして、私ってすごく小さい……?


「何を考えているのかわからないが、緊張はしていないようだな」


「え。あ、緊張!言われたらしてきました……」


「そんなに心配されなくても、私も学園に付き添いますから」


「マリーナさんが一緒に来てくれるの?」


「はい。さすがにジルベール様が行ったら騒ぎになりますから」


困った顔のマリーナさんに、それはないんじゃないかと思う。

研究に忙しいジルベール様が付き添いなんてするわけがない。

だけど、ジルベール様は嫌そうにマリーナさんに注意する。


「騒ぎになるくらい問題ないだろうに……。

 マリーナ、俺の代わりに付き添うんだ。ちゃんとシャルを守れよ」


「もちろんです!」


「ならいい。シャル、魔術院で待ってる。

 昼食は一緒に食べよう」


「はい!」


馬車が学園について、私とマリーナさんだけ降りる。

ジルベール様が馬車から出ると騒ぎになるからと、

私たちだけささっと降りた。


「では、行ってきます」


「ああ。無理するなよ」


「はい!」


ジルベール様を乗せた馬車は魔術院へと向かう。

その後ろをルイさんとルナさんも馬でついていく。

二人が手を振ってくれたので手を振り返した。


「では、行きましょうか。シャル様」


「うん」


「おそらく、担任教師からの紹介で、

 シャル様がジルベール様の助手内定者だということも知られると思います。

 周りから何か聞かれて答えに困ったら、

 話してもいいかジルベール様に確認する、と答えてください」


「うん、わかった」


「あとは、この腕輪を渡しておきます」


「腕輪?」


手渡されたの銀細工の細い腕輪だった。

腕にはめてみたら、小さくなって手首にちょうどいい大きさになる。


「左腕につけた場合は、右手でさわってください。

 それで私に知らせが届きます。

 困った時、誰かに絡まれそうな時、

 緊急時には絶対に知らせてくださいね」


「わ、わかったわ」


マリーナさんが怖い表情になったので、ちょっとだけ身構える。

そんなに心配するほど学園って危険なんだろうか。

私はドリアーヌに関わらなければ大丈夫だと思っていたのに。



マリーナさんは侍女なので、授業中はそばにいられない。

こればかりは魔術院の魔術師といっても無理だという。

侍女待機室に向かうマリーナさんと別れて、教員室へと向かった。


年配の男性教師に連れられ、自分の教室へと向かう。

三年の高位貴族用の教室に編入するらしい。


教師ががらりと教室のドアを開け、中に入る。

その後ろについた中に入ると、一斉に視線を浴びた。

こんなに大勢の人の前に出るのは初めてで、

逃げ出したくなるのをこらえた。


「今日から編入するシャル君だ。

 シャル君は魔術院に所属することが決まっている。

 あのジルベール様の助手内定者だ。

 家名は公表されていないが、失礼のないように」


「シャ、シャルです。よろしくしてください」


あまり詳しい自己紹介はしないようにと言われていたので、

名前だけにしておいた。


この教室は十一名。令息が四名。令嬢が七名のようだ。

空いている席に座ると、周りから見られている気がする。

それでも話しかけられることはなく、授業に集中する。


初めての授業。知っていることばかりだったけれど、

それでもすごく楽しい。


午前中の授業があっという間に終わり、

マリーナさんが迎えに来るのを待つ。

教室にいた学生たちは昼食をとるために皆あちこちに移動し始める。


そんな中、一人の令嬢が私へとまっすぐ歩いてくる。

どこかで会ったことがあるような雰囲気の令嬢。

令嬢と会ったことなんてないのに、不思議。


その令嬢は私の前に立つと、早口でこう言った。


「どうしてあなたがジルベール様の助手なの?

 マリーナ姉様でもダメだったのに!」


「マリーナ姉様?」



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