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④旅立ち

「ギルサンダー国王、いや、ルアンド国王が直々にどうされたんですか?」


「やめてくれ」


ギルサンダーは、神妙な顔をして話を続けてきた。友好国である【マゼランダ】が魔族に攻め込まれており、救援を求められていることだった。有益な貿易を結ぶ関係でもあり、ここで【マゼランダ】がやられてしまうと食料の供給も怪しくなってくる。それに次はこっちに来る可能性だってある。周囲の隣国が結束し、この争いを退け安泰をもたらしたいという願いだった。


「わかった、行って倒してくるよ」


「チヒロ、そんな簡単に……わ、私も行く! 今度は離れないんだから!」


「ナナ……」


 俺はうれしい気持ちを抑えて、ナナはここに残ることを説得した。そしてギルサンダーが新たに創設した【ブレイドイリュージョン】という学校に入って頑張ることをお勧めした。名前はダサかった。


『俺がいなくても何かあったとき、少しでも自分の身を守れるように、ギルサンダーには守ってもらうよう交換条件も出したし』


「そろそろ魔力の開放が近いのかい?」


「うん、そういえば今日だ。11歳になれば今自分が持っている魔力を全部使えるようにしておいたんだ」


「チヒロ、11歳の誕生部おめでとう!」


 孤児院では、チヒロの誕生日が祝われた。ナナが準備していた。もちろん、ギルサンダーたちも手伝ってくれてても華やかだった。


『これも師匠の仕業なんだけど』


 師匠は、俺が魔力に頼りっきりで、身体能力の向上がない点を危惧していた。最後は地力が出るといつも言っていた。そのため、この2年間は魔力を身体強化には一切使えなかった。そして毎日魔力の貯蔵を行った。ナナに弱くなったと思われていたのは、単純に弱弱しかったからだろう。だが今は、毎日のトレーニングの成果もあって変わってきた。牢屋にいた時でさえ知らず知らず体幹を鍛えていた。単に筋力をつけたわけではない。心技体のとくに、体と技の調和を意識してきた。


「時間だ」


チヒロは、身体魔法が使えるようになった。


「っははっ。 こりゃだいぶ違うや、師匠は間違いない! 信じよう!!」


『もう一つもだいぶたまっているみたいだ』


 声高らかにチヒロは自分を鼓舞するように叫んだ。すべては、魔王を倒し、ナナと幸せに暮らすために。俺は、ナナの敵討ちから、ナナを救うために戦うことになりこれまでより桁違いの気合が入っていた。そして次の日の朝、チヒロは出発することとなった。一人で行くのかと思いきや、ギルサンダーが選んだ仲間が一緒に行くことになった。


「本当は俺も一緒に行くべきところなんだが」


「いや、国王はしっかりここでやることを」


「すまぬ、だが生意気な!」


 ギルサンダーは軽くゲンコツをした。その後ろには、体には似合わないほど大きな大剣を持った女の子がいた。その子はこちらを舐めまわすようにみてくる。


「この子は? 」


話を聞くと、ギルサンダーの年が離れた妹だそうだ。国王の妹という立場になる。いっても聞かず、チヒロと一緒に魔族討伐に向かうと言ってきかなかったそうだ。名は『ジュナ』というそうだ。


「実力は保証する。俺より強い」


「ギルサンダーより? 剣技では強いやつはいないって言ってじゃないか」


「それはこの国王騎士の中での話だ。」


 少し兄としての意地が見えた。こうしてチヒロはジュナと【マゼランダ】に向かうことになった。道中は、疲れもあることから馬車での移動となった。一旦優秀な馬がいる王国まで、近場の馬車を借りて向かうことになった。


『身体強化で思いっきり走った方が早いけど、それだと魔力も消費するからか』


「チヒロさん、大丈夫ですよ! 『プルク』っていう馬は、めっちゃはやいです。 とくべつなんですよ」


「そ、そうなんだね」


「チヒロっ」


 チヒロは、ナナからほっぺたにキスをもらった。何度も思い出しながらにやにやしていると、王国に着いた。馬から降りると、ジュナが座っていたところの匂いを嗅いでいるおじさんを見かけた。


「おい」


 チヒロは、たまらず声をかけた。


「なにしてんだよ」


「は? なんだお前?」


「あ?」


口論になりかけたところでジュナが仲裁に入った。


「こんなことしてる場合じゃないでしょ?」


「あ、あぁ。」


 チヒロは、こういったおじさん、特に女性をいかにも性的に見るような場面がとにかく許せなかった。


『あとでぶん殴ってやる』


「ねぇねぇ、チヒロさんってもしかして私のこと?」


「ん??」


 ジュナも大概で、自分に好意があると勘違いしてしまった。そして、『プルク』に乗った俺たちはとんでもない勢いで、【マゼランダ】に着こうとしていた。











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