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⓪プロローグ

 牢屋に閉じ込められてからどれだけの時が流れただろうか。鉄格子の窓から見える月が俺がを見ているのか。俺が月を見ているのかもわからなくなってきた。


「おい、飯の時間だ」


 牢屋の衛兵は、残飯の中でも捨てるような食事を運んできた。


『可哀そうに、馬鹿なことをするからだ』


 俺は、自分の力のなさに失望していた。


「チヒロ! 何ボケっとしているのよ、しっかりして!」


「やぁ、ナナ。  今日もいい日だねぇ」


「何言ってんのよ、またふたりで補習してるだけじゃない! 」

 

「はは」


 とにかくナナは、かわいい可愛すぎる。学校でもそのモテっぷりは凄まじい。昔の話にはなるのだが、結婚を約束した仲だ。多分気持ちに変わりはないだろう、俺は幸せだ。俺と、ナナは孤児院出身で、この地方で一番の魔法と剣技の学校『ブルトン』に通っている。


「なんでこんなにできないのよ」


「ん――難しいよね、ちょっと力を抜いてやってみようかな、あと熱の温度を高くしようとしすぎて、その分の魔力をうまく生成できていないから、もっと暖かいくらいのイメージで炎をだしてみるかぁ」


「チヒロ! できたわ! 私、ジュンネル先生に見せてくる!」


「ぼ、僕もできた! 一緒にいこう!」


『この二人、いつも一緒ね。それはいいとして、ナナさんのファイヤーボールがしっかりできるようになっている。 何もアドバイスしていないのだけれども……それにしてもチヒロはやっぱり怪しいわ。ファイヤーボールの形は、魔力の不安定性から出力がまばらになるのが、普通。チヒロのファイヤーボールは不自然なくらい小さく一定の出力を保っている。こんな形、私でも制御できるかどうか』


ジュンネルは、チヒロを少しにらむように見つめた。


『やば、これはまずかったか』


チヒロは、すぐさま指先のファイヤーボールを不安定にした。


『さすがに怪しかったかな』


『そうそう、こんな感じに不安的にって。さっきのは偶然かしら。私の思い過ごしか……』


「二人とも合格! 次はもっと難しくなってくるから今の感覚を忘れないようにね!」


「はい!」


 ナナの両親は、戦士と魔法使いだったらしく、魔族に殺されたらしい。ナナは、そんな魔族を恨んでいて、いつか両親の仇を取りたいとこの学校を志願し見事入学した。そんな俺はというと、将来のお嫁さんと行動を共にするべくついてきたという形だ。そんなある日、この学校の会長のバヤシが屈強そうな護衛を複数人つれてやってきた。この地方ではかなりの権力者で歯向かえる奴はいない。


「強くなりそうなやつはいるか?」


「はい! バヤシ様のお力にきっとなれるかと」


「良き良き。よろしく頼むよ。それと、最近、かわいい子ははいってきたか? 」


「えっと――はい……」


校長のシュンザが苦しそうな表情をした。


「見てください……」


「よかろう」


 俺とナナは、補修が終わり学校を出て孤児院に戻ろうとしていた。その時、バヤシに目をつけられた。


「お前、名前は? 」


「ん? 私ですか?」


「お前以外にだれがいる」


「えっと」


「俺がいますよ! チヒロと言います」


「なんだこいつは。 そこの女、お前だ」


「ナナです」


「そうか。 これからよろしくな」


『あの娘、可愛すぎるではないか。たまらん。絶対わしものもにするぞ、今すぐに』


 俺たちは何のことかさっぱりわからなかった。その次の日、ナナは校長に呼び出された。そしてバヤシの家にメイド兼特待練習生として招かれることとなったのだ。これは、だれも止められない。拒否権はこちらにはなく、ましてや孤児院出身の子ならなおさらだ。


「チヒロ、お別れだね」


「いいのか」


「いいの。だって、特待生だよ。もっとすごい先生たちに教えてもらえるし、そして、きっと、強くなって……」


 俺は、はらわたが煮えくり返しそうなのを必死で抑えていた。ナナの目には、涙がたまっていた。俺はどうすればいいか考えていた。ナナの考えもある。結局は黙って受け入れるしかなかった。


『俺は何のために……』


 次の日、バヤシ御一行が迎えに来た。


丁寧に、バヤシまで一緒に迎えに来ている。ナナが別れ際でこっちを向いて口パクで何かを伝えてきた。


「チヒロ、いつか迎えに来てね」


「ナナ・・・・・・」


 バヤシは、ナナを迎え入れようと、抱きつこうとした。俺はその瞬間、自分が自分ではない感覚になり、バヤシを殴った。バヤシは身に着けていた防御の加護が発動し何とか耐えているようだが、血を吐き、ありえない方向に腕が曲がった。そして、屈強そうな御一行がすぐさまとびかかってきた。それを瞬時に跳ね除けた。その時、我に返った。


『やばい、逃げるしかないか』


 脳内で、瞬時に逃げる決断をした時、ナナに目をやった。一緒に逃げてほしい。一緒に来てほしい。そんな自分勝手な思いがあふれてた。だがナナは、悲鳴を上げ、恐怖で委縮し震えていた。


「ナナ……」


 俺は、追われる立場になりその場から一人で、逃げ出した。そして、今この牢獄にいる。王国の宝物庫には、記憶を消せる秘宝があるという噂があった。俺はナナの記憶を消そうと思い、侵入した。物色しているときにあの男がやってきた。あいつは強いっていう次元ではなかった。一日中戦闘をした。国王の部屋に忍び込んだことにより、反逆者として死刑宣告された。まだ、バヤシを殴っただけの罪だけであれば、死刑ではなく何年か服役すれば何とかなったはずだ。脱獄できたとしてもすべてが無謀に思えた。


「おい、お前ここから出るぞ」


声をかけてきたのはあの男だった。とてもやつれている様子だった。














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