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虐げられた伯爵令嬢は獅子公爵様に愛される  作者: あさひ


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番外編 イアン 6

「失礼いたします。取り急ぎ報告を、とウェイン公爵様がいらっしゃいました」


「通せ。それから、戻ってくるまでは誰も通さないように」


「かしこまりました、他の者も外させます」


「頼んだ」


長い付き合いの侍従は、俺の事をよくわかっている。誰も通さないように、と聞いて他の人間を外させる。気遣いのできる、大変優秀な人物だ。にしても、急ぎとは何事かと不安になる。なんだか、ユーニスに関係しそうで。あの子は大切な妹、家族として過ごした期間など短くともそう思える存在なのだ。


「急な訪問にも関わらず、お時間を頂きありがとうございます」


「レイフ、今は二人だから口調は戻していいぞ」


「では、お言葉に甘えて。早速本題だが、ユーニスの御母堂は本当にあの辺境伯なのか?」


「公式記録からは、間違いない。ただ、こちらにある記録と相違無いという確認は、できていないんだ。なにせ、あちらの貴族との婚姻だからな」


リリム王国の持つ公式記録が書き換えられてしまえば、エルシー様の結婚相手は、そちらの記録が正しいものとして扱われる。あくまでも、こちらは隣国でしかない。故に、国内の貴族しか基本的に記録しないのだ。


「もしかすると、今の辺境伯は違う人物、と言いたいのか?」


「ああ、気になる情報が出た。これは、辺境伯領の中でも、こちらというよりは王国の別の領地に近い地域から。ちょうど、エルシー様の嫁がれてしばらくした頃、馬車の事故があったらしい」


「事故……?」


「それも乗っていたのは、当時のエインズワース辺境伯との話だった。話を聞かせてくれた人物によると、事故そのものを口止めして行った人間がいたらしい。何人か、事故の事を他所に漏らそうとして、口封じに消された者もいて、そこから誰もが口を噤んだそうだ。そして、それを話してくれた人物しか、もう知っている者もいない」


「……当時の辺境伯はすでに世代交代をしていた」


「年数的にも間違いない。おそらくだが、この事故で亡くなったとされる人物がユーニスの本当の父親だろう」


「それで、公式記録の話になるのだな」


「そういうことだ。こちらではエルシー様の嫁がれた後は記録にない。ということは、正式記録を書き換えれば、わからなくなる」


エルシー様の嫁がれた先は、エインズワース辺境伯で間違いない。ただ、もしその辺境伯が事故死し、相手が別人になれば。辺境伯であることは確かだから、間違いないと言い張れる。


それに、ユーニスを執拗に虐げたのも、理解したくはないが説明がつく。何より、ユーニスとほぼ年の変わらない妹がいることも。そうなれば、辺境伯家にあの子と血のつながりがある人間は、辺境伯本人以外にいない。その本人は、実父にはならないが。


「いろいろと、説明はつく。だが、なぜエルシー様はそのことをこちらに……」


「……エルシー様は、陛下と皇位継承を共に持つ御方だった。辞退されたが、離縁して戻ったとなると話は変わる。それに、ユーニスがお腹にいる状態なら、いらぬ憶測も……」


「たしかに、レイフの言うとおりだな。そもそも公式の貴族名鑑を書き換えられていたのなら、あちらに何を言われてもおかしくない。エルシー様の名誉も、疵つけられた可能性だってある」


上手いこと利用され、エルシー様は孤独な中、戦われた。ユーニスも、たった一人で戦う羽目になった。レイフの報告によれば、事故死した辺境伯はとても良い人だったようで、地域の評判は本当によかった。今の辺境伯は、それに比べると酷い有様で、皆一様に口を噤んでいるが、覚えている者は覚えているのだろう。


「他国に嫁がれた以上、俺たちにできることも少ないからな……無力だよ」


「どこの国も同じだろうな。それこそ、人質目的で輿入れさせる場合もあると聞いたことがある」


「やはり、ユーニスが国外に出されることにならなくてよかった。情が深い父上だ、話を聞いてお前たちを引き裂くことはないと、踏んでいたが……」


「お前か、あの話をしたのは。陛下に、やたらと涙ながらに語られたんだぞ」


「あぁ……父上の絡みがよく見える……」


軽く話は脱線したが、レイフからの報告は大変有意義だった。自分たちでは知りようのないことだったが、どうやらリリム王国内のレジスタンスたちと、情報を交換したらしい。一度、ユーニスを交えて顔を合わせたが、覚悟を決めた者たちの集まりだ。必ずや、その思いを成し遂げるだろう。


「それから、提示されたものが……」


「はっ……?」


「アルムテア皇室に繋がるユーニスに対して、また母君であったエルシー様に対して。多大なる損害を与えたことを、悔いていた。そこで、下す罰をアルムテアから出してほしい、と」


「それは、さすがに内政干渉になるだろう」


「あちら側としては、全て自国内で治めるにはもう、遅すぎたそうだ。何せ、やらかしが他にもあったらしいから」


「あー……そういう……」


他国に連なる誰かが、同じような目に遭っていたのなら、そこから言われていたのかもしれない。そして、その国の話を受けるなら、アルムテアにも必要な話になる。他国のどこかの話だけ許し、後は自分たちでやる、というのは諍いを起こすものだ。


「その代わり、クーデターが成功した暁には、変わらぬ外交を、と。良き隣人であることを、証明してもらいたいそうだ」


「国内が乱れた隙を狙われかねない、か。いいだろう、父上に進言しておく」


ユーニスに実父が生まれる前に亡くなったことを、エルシー様は伝えていなかった。それならば、俺たちはその話を伝えるべきではないのかもしれない。言うかは本当に迷う話だ、何せ彼女にある記憶は実父の姿が無いのだから。


だが、言えば納得はするだろう。血の繋がりがあるはずの実父からの暴力が、そもそも実父ではなかった、で解決する。

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