42
アランと話を終えた後、私たちはさらに帝国の中でも端に位置する場所に移動した。のどかなその場所は、レイフ様の治める領地とは真逆の気候。アランにも詳しく教えてもらったが、こちらは帝国でも南方にあるが故に、温暖らしい。
「別荘地帯、というわけですね」
「はい、貴族に人気の地帯です」
どうやら皇家の別荘もあるようだが、他の貴族たちも別荘をこちらに建てているらしく、比較的地方の中では栄えているとのこと。それなりに人の出入りがあるのであれば、栄えるのは自然なことかもしれない。何せ、来る客が太い。
そしてこの地には特定の領主はおらず、一応管轄は皇家となっているため、任命された管理者が期限付きで任期を終えるまで暫定領主として存在する。任期が来れば帝都に戻り、帝都で仕事を行い、またこの地に新たな管理者が任命されて着任、同じ人を連続で任命しないようにしているらしい。
ちゃんも理由もあって、端的に言うと不正を防ぐという意味合いが強いとのこと。後はその地に住まう地元民たちに対して、平等の税金などを課さねばならないため、領主ごとに金額が変わってはいけない。そして、その違いから地元民たちの「あの人の方がよかった」等の不平感を無くす意味合いもある。
「確かに、過ごしやすそうです」
ふわり、と頬を撫でる風は心地いい温かさ。南方にあると言っても、他国に比べると北寄り。そういうところも、暑すぎない理由らしい。また、過ごしやすい点から他国の貴族が遊びに来ることもあるんだとか。別荘地帯として栄えているからこその、一種の観光地区。
帝国内で特産品を扱う地域も、観光地区化している場所もある。それこそ一定水準の自治が、きちんとそれぞれ行き届いている証拠。治安維持も十分に行えている、というのは帝国にとってもプラス。諸外国から来る人たちにもいい印象になるから。
「ここまで上手に運営ができるとは……」
貴族の領地経営でまさに、失敗ばかりを目の当たりにしてきた私にとって、この帝国は怖いくらいに上手くできすぎている。己の欲望に忠実すぎるのも問題だが、こんなにも統制が取れすぎているのも、ある意味怖い。
「それほど、規律が厳しい、とも言えるのでしょうか」
「その面はあるかと存じます。騎士になるにしても、聖職者になるにしても、それぞれに厳しい規律がありますから。その規律は当然、貴族だろうと皇族だろうと関係はありませんし……」
「規律があってもお構いなし、な方々はいますが……」
苦笑いを溢しつつも、アランは規律の厳しさが治安維持に繋がっている、と思っているようだ。法律として存在するそれらは、罪を犯した場合、貴賤関係は一切不問のうえで裁判が行われる。高位貴族でも皇族でも、重罪犯であれば相応の刑罰が下される。
帝国歴史書の中には、実際に高位貴族・皇族で罰を受けた、と記録があったものもあった。そうして数々の失敗から学びながら、今を作り出している、と締めくくられた書籍。激動の時代をも経験した長い歴史を持つ帝国、その全てを誰かが時代を移り変わりながらも見ていた。




