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私の選択を聞いた陛下、皇妃様はとてもいい笑顔だ。娘ができたと大喜びしているのを見ると、ただ私に利用価値があるから引き取る、という気持ちで選択肢を出したわけではないようだ。


「ユーニス、改めまして……私はシリル。年は二十一になります。こんなにも可愛らしい妹ができて、嬉しいです」


「あ、よ、よろしくお願いします!」


「ねね、ユーニス。俺はイーデン、年齢は二十四だよ。イアン兄さんとは一つ違いなんだ。うんうん、ユーニスは可愛いねぇ」


「よろしくお願いします、イーデン様」


「違う違う、俺のこともシリルのことも兄さまって呼んで」


「あ……い、イーデン兄さま?」


「うん、ユーニス」


さっそくグイグイと距離を詰めてきたのはイーデン様とシリル様。二人して兄と呼んでほしい、というので案外、幼い一面を持っているのだななんて思う。それに、陛下も皇妃様も同じように父と母と呼んでほしいというので、家族はよく似ている。


皇女としての受け入れが決まってから、すぐに今後必要なことを皇妃様は提示した。どうしても皇女のお披露目があると顔を顰めているが、それさえすれば何をしてもいい、と言っている。住む場所も皇女になったのだから皇宮に住む必要はないとのこと。破格の待遇である。


「では、私は改めて皇女のユーニスへ婚約申し込みをする、ということでよろしいでしょうか」


「そのことなんだが、元からその場で婚約発表をするつもりだ。他国の伯爵家の令嬢とはいえ、ユーニスは元々アルムテア皇室の血が流れているからな」


「へっ……?」


あまりの破格待遇に驚くのはまだ早かった。陛下、もといお父さまはとんでもない爆弾を投下したから。私は何も知らなかったし、母からもそんな話は聞いたことがない。


「ああ、そうだと思いました」


「やっぱり、そうだよねぇ」


シリル兄さまもイーデン兄さまも、納得しているのを見るに、知らなかったのは私とレイフ様だけのようだ。どうやら、私の母はアルムテア帝国の皇女だったらしい。皇帝であるお父さまは従兄にあたるとのこと。先々代皇帝の娘だった母は、当時の唯一の皇女であったが、同盟を結ぶと言う意味を込めて戦力強化のためにエインズワース辺境伯へ嫁ぐことになったのだそう。


しかし、両国ともに情勢がゴタゴタしていたこともあって交流が途絶え、その間に母も亡くなってしまったために完全にやり取りがなくなった。リリム王国も情勢の関係で、母の嫁いだ辺境伯にまで目をかける余裕がなくなり、私という存在は忘れ去られて。そしてそんな時に、私はイアン兄さまとレイフ様を保護し、今に至る。


「君はね、ユーニス。私の祖母にもよく似ているんだ……」


懐かしそうに目を細めたお父さま。私の髪と瞳は、母譲りだった。その母の髪と瞳は、先々代皇帝の妃であった母の祖母にあたる女性のものと同じ。アルムテア帝国皇族の血が流れている女性の多くは、銀髪にアイスグリーンの瞳を持って生まれる。さらに魔法の適性属性もほぼ同じで、それぞれ使える使えないの個人差はあるが、大体が風属性か水属性になると言う。


イーデン兄さまやシリル兄さま、イアン兄さまはすでに故人の先々代皇妃様と、嫁いでいなかった母のことは肖像画で知っていたとのことで、よく似ていると思ったらしい。


「それに、ユーニスはアルムテア皇室特有の魔力ですし、よく見れば血縁があるのはすぐにわかります」


魔法に特化しているだけあって、シリル兄さまは個人が持つ魔力の特徴がわかる。故に、私に血縁関係があることは気づいていた、と言う。イーデン兄さまは、魔力の匂いをかぎ分けられて、その匂いが一緒だったからわかったと言っていた。


ちなみにイアン兄さまは、二人のような特技はないから、現存する公式記録から証拠を見つけていた、ととても現実的な言葉をくれた。


「しかし、陛下。皇女のお披露目をどのようにするおつもりですか? いきなりその場で婚約発表となると、さすがに他の貴族や派閥からの反感は避けられません」


レイフ様は、冷静に明かされた事実を受け入れていて、すぐにお披露目で起こるであろうことを、どうするのかとお父さまへ問うている。たしかに、今まで他国にいた令嬢を皇女として引き入れたのはまだ、血縁があるから納得ができる。でも、そのお披露目で一緒にウェイン公爵家との婚約を発表すれば、アルムテア帝国内の貴族を知らないのに? という反感は生まれてしまう。


「レイフもユーニスも、お互いを思いあっているだろう。それを引き離すなんて、私にはできない。たとえ、一時的にだとしてもだ」


茶目っ気たっぷりでウィンクしたお父さま。お披露目で婚約発表するリスクをわかっていて、私たちの意思を尊重してくれているのがわかる。その前に私の気持ちがバレているのは、恥ずかしいけれどね。



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