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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

パーティーリーダーと浮気した恋人に裏切られ追放された俺、創造魔術で無双する。〜どうやら俺の作る道具は規格外に高性能らしい。元仲間達が大変な目にあって、助けを求めてくるがもう遅い。俺は美少女と旅に出る〜

作者: イルティ

 こちらの作品は、


『魔王、育てます! 〜魔族に転生した俺、史上最強の魔族パワーで無双する! 俺を使い潰した軍隊に帰ってこいと懇願されるがもう遅い! 俺は超絶可愛いロリっ子魔王様を育てながら、世界征服を目指します!〜』


 https://ncode.syosetu.com/n7210hx/


 の二部以降で登場するキャラクターを主役とした、短編小説となります。

 続きが気になる方は、是非リンク先の本編をご覧ください!

「セト、テメェをこのパーティーから追放する。さっさと出て行け」


 ギルドの酒場にて……。

 パーティーリーダーのレドから、俺は唐突にそんなことを告げられた。


 俺の名前はセト=ランゲツ。

 平均よりはちょい上の顔と身長、真っ白な天然パーマ。


 仕事はそこまで熱心に打ち込まず、だがある程度の成果は出せるように働いた。

 特にクビになる心当たりもないので、突然の宣告で困惑している。


 クビの理由をリーダーに尋ねてみた。


「ん? 出て行けって……急にどうした? 何かの冗談か?」

「は? 自覚ないのかよ? おまえは、このパーティのお荷物になってんの!」


 あまりにも憎々しげに、そんな言葉をぶちまけるリーダー。

 俺の胸ぐらに掴みかかり、リーダーが続ける。


「テメェは俺らのなかで最弱なんだよ! 戦闘じゃまるで役に立たねぇ! そんな奴を、お荷物と言わずになんて言うんだ!」

「ちょっと待て。戦闘には、役割ってものがあるだろ?」


 頭に血が上った様子のリーダーに、俺が冷静に言い返した。

 聞いて、ひとまず俺から離れるリーダー。


 俺の役割は後衛。

 あまり戦闘に関わらない役職だ。

 

 あらゆる無機物を作り出す魔術。

 その能力を使って、俺はパーティーで物資の管理を担当していた。


 そのことは、リーダー以外の仲間たちもよく理解していることだろう。

 他の仲間に頼ろうと思って、俺が続ける。


「なあ、ルー。俺はちゃんと、戦闘以外で役に立ってるよな?」


 俺はパーティーの聖職者、ルーに尋ねた。


 彼女は、俺がパーティーの中で一番中の良い人物だ。

 というか、俺たちは恋人同士と言うやつなのである。


 付き合って一月。

 出来立て熱々のカップルなのだ。


 ルーが続ける。


「まさか。貴方みたいな雑魚が、レド様の役に立ってると本気で勘違いしているの?」

「はぁ!?」


 あまりにも敵意全開で語る彼女に対し、俺は気の抜けた声を出してしまう。


 どうしてだよ……。

 俺たちは恋人同士じゃないか!?


 困惑する俺に対し、ルーが蔑んだ目を向けて続ける。


「悪いわね、セト。私、本命はレド様だったの」

「……この腐れビッチが」


 俺が睨みながら言うと、鼻で笑いながらルーが続ける。


「だって、よく考えてみなさいよ? アンタみたいな貧乏人と、貴族出身で仕事もできるレド様とじゃ天と地ほどの差があるのよ。具体的に言うと金ね。レドとアンタじゃ、生まれ持った資金力が違うもの」


 なんとも現金な理由である。


 いや、確かに俺が貧乏なのは事実だ……。

 そこを否定することはできない。


 しかし、それはパーティーで仕事をした分の給料を、レドがほぼ独り占めするからである。


 俺の手元に入る給料は雀の涙ほど。

 それじゃあ最低限の生活しか送れない。


 酒もギャンブルも嗜む程度しかできないのだ。

 レドが続ける。


「ルーの言うとおりだ。男は所詮、金よ。金のないお前に魅力はない。それと比べて、俺は実家の金がたんまりと使える。冒険者としてもボロ儲け。まさに、勝ち組とは俺のことよ!」

「キャー! レド様ったらカッコいー! すいませんウェイターさん、ドンペリ一本追加お願いしまーす!」


 レドをやたらと持て囃すルー。


 いや、恋人ってか……やってることただのキャバ嬢ですが?

 完全に財布としてみなされてるよね、レド?


 そんなバカ二人を横目に、俺が続ける。


「貴族つったって、所詮田舎の小さな領土しか持ってない家だろ? そんなに見栄はって遊び歩いて、資金が尽きたらまた実家にせびりにいくのかよ?」

「あん? テメェ、今なんつった?」


 キレて、ウェイターが運んできたドンペリの瓶を奪い取るレド。

 瓶を開け、その中身を俺の頭にぶっかけてきた。


 口周りに垂れてきた酒を一口……。

 うん、美味い。


 こんな高い酒、久々に飲んだ。

 ここ最近、安い酒ばかり飲んで体調最悪だったからな……。


 などと強がっている俺を見て、レドが続ける。


「この貧乏人が! テメェと俺は地位が違うんだよ! 俺はどんなに高い酒だろうと、湯水のごとく雑に扱うことができる! だから、これはお前にやるよ! そんなに酒が好きなら、地面に這いつくばりながら泥水のように啜ってろ!」


 言って、レドが酒瓶を地面に投げつける。


 パリン。


 酒瓶が割れ、地面が水浸しになった。

 それを見て、ルーが口を開く。


「ざまぁないわね、この負け犬が! どんなに強がったって、アンタは結局レドに私を取られた敗北者なのよ!」

「敗北者?」

「その通りよ! 冒険者として働き、何も得ず! リーダーに女を奪われる! 実に空虚な男じゃないのよ!」


 言われて、少し納得する俺。


 俺が空虚な人間だと言うのは確かだ。

 それを言い返すつもりはない。


 夢も希望も、生きる目的まで……。

 そんなもの、とっくに捨てて生きてきたんだ。


 挙句、片田舎のギルドで安月給で働く底辺に成り下がった。

 まさしく空虚……。


 実に無様な男じゃないか?

 そんなことを思っていると、ルーがレドに近づいて言う。


「ともかく、そこにいられると目障りだから……さっさと消えてくださる? もっとも、私とレド様の熱い蜜月を見ていたいと言うのなら……止めはしないけど?」


 言って、レドとルーが唇を重ねる。

 情熱的でディープなヤツだ。


 しかも、ワザと俺に見せつけるようにやたら長くキスし合っている。


 流石に、これは見ていても気分が悪くなるだけだな……。

 早々にその場を立ち去ろうとすると、レドが呼び止める。


「なんだよ、何も言わないのか? 彼女を取られて、間男に何も言えない腰抜けなのかよ……おーまーえーはー!」


 馬鹿にするよう吐くレドに、俺が気怠げに言い返す。


「まあ、いい女だ。大事にしてやれ。安い娼館に通うよりは、面倒が少なくて楽かもだぞ?」

「ちょ……セト、アンタ!」


 コケにされて、キレるルー。


 キレたいのは俺の方だ……。

 こんだけコケにされて、腹が立たないわけがない。


 だが面倒だから早く帰ろうと思っただけだ。

 それを呼び止めるなら、いいぜ……言ってやるよ。


 俺がレドに向かって、あることを尋ねてみる。

 

「最後に一ついいか? 俺がパーティーから抜けたら、多分……いや、ほぼ確実にアンタらは大変なことになる。それでも、俺をクビにするのか?」


 聞いて、鼻で笑いながら答えるレド。


「なんでだよ? なるわけねえだろ! 役立たずが一人いなくなるだけだぞ?」

「そうか。なら、俺の魔術の効力が切れても大丈夫ってことだよな?」


 うっすら笑いながら俺が言う。


 俺の使える特殊な能力、魔術。

 それはごく一部の人間だけが持つスペシャルな力。


 しかし、俺の魔術はあまり強い能力ではなかった……。

 だから実質、それが原因で俺は前の職場を追い出されていたりする。


 だが、このパーティーで俺の力はそこそこ役に立った。

 というか、なくてはならない存在になったのだ。


 何故なら、このパーティーが使っている道具はほとんど俺の魔術で作られている。


 材料費も、道具を買う金も一切必要ない。

 最高にプライスレスな能力なのだ。


 それを聞いて、レドが吹き出しながら続ける。


「プフッ! お前の魔術が消えて、俺たちが困るだぁ? 馬鹿も休み休み言いやがれ! お前はただ、道具を量産するだけの能力だろうが! そんなもん、俺の財力で同じもんを買い揃えばなんとでもなるんだよ!」


 俺の想像通りの言葉を並べるレド。


 確かに、俺の作る道具は普通の道具と大差ない。

 ただ一つ、魔力を纏っているという点で俺の道具の方が優れているのだ。


 魔力を纏った道具は、そうでない道具と比べて機能がちょっぴり向上する。

 その力を使えば、まあそれなりに楽に仕事がこなせるのだ。


 道具を変えれば、その恩恵も受けられなくなるだろう。


 それでも、まぁ……。

 レドがここまで言うのなら大丈夫なのだろう。


 これ以上言い争っても仕方ない。


 そう考えて、ここで俺は折れることにする。

 その場から立ち去りながら、俺は最後に言い残した。


「そうか。じゃ、これでさよならだ」

「おう! 二度とその汚ねぇツラ見せんじゃねぇぞ!」


 言って、ルーといちゃつき始めるレド。


「はっはっは! 使えないクズを追い出せると気分がいいな! 今夜は寝かせないぞ、ルー!」

「ああん! もちろんですわ、レド様ぁ〜! 今夜もたっぷり、可愛がってくださいまし!」


 という、アホなやりとりがギルド中に響き渡る中。

 俺はアクビをしながらギルドを出て行った。


 

 *



 なんだかんだあって、俺は働き口を失った。

 次の職場を見つけなければ、日々の生活費でさえすぐに尽きてしまうだろう。


 俺は残りの少ない資金を持って、大きな賭けに打って出た。

 文字通り、ギャンブルである。


「さぁ! 張った! 張った! 丁か、半か?」


 賭場にて、振り子が俺たち参加者に選択を要求する。


 丁か半か。

 どちらか的中させれば、俺は利益を得られる寸法だ。


 覚悟を決めて、言った(全額ベット)


「丁ウォォォ!」

 

 結果は半だった。


「はぁ……不幸だ」


 賭場の外で項垂れる俺。


 こうして俺は全財産を失った。

 パーティー共有で借りていた宿からも追い出されている。


 俺は一文なしで真冬の星空の下に放り出されたわけだ。


 これを不幸と言わずなんと呼ぶ?

 俺はいつだってそうだ……。


 ずっと不幸な人生を歩んできた。

 親に捨てられ、生きるために必死だった少年時代……。


 前の職場、軍に入ってからは……。

 まあ衣食住充実した、それなりに満足できる生活だった。


 だが気に食わない上官をぶん殴ってから、生活は一変。

 それから俺は軍に追われる身となった。


 だから国の端っこ……。

 こんな田舎町で細々と逃亡生活せざるを得ないのだ。


 ならいっそ国外に逃亡しないのか?

 そう思うだろうが、俺にそんな気力はない。


 新しく言葉を覚えるつもりはないし、何より俺はこの国を気に入っているのだ。


 死ぬまで、この国のどっかで生きてられりゃそれでいい……。

 それでいいのだが、今回は特に最悪だ。


 前のパーティーをクビになった後、すぐに別のパーティーを探した。

 だが俺を雇ってくれるパーティーは、ついぞ現れなかったのだ。


 というのにも理由がある。

 俺が話しかけた連中は、みんな声を揃えてこんなことを言った。


『悪いけど、アンタを仲間にするわけにはいかないんだ。レドの命令でね』

『あの貴族のボンボン。アンタをギルドで働かせないため、そこら中に根回ししてるみたいだぜ?』

『まあ、私らも貴族様に逆らうわけにはいかないからねぇ……悪く思わないでくれよ』

『レドとかいう貴族? ああ、来た来た! 二日ぐらい前にウチの娼館に来てねぇ? その、なんていうか……相手した子が言ってたんだけど、粗末なブツだったらしいよ? そのくせ、態度だけやたらデカいんだって。その態度のデカさを、少しはテメェのチンポに分けてやれないのかね? ギャハハハハハハ!』


 要するに、権力に物を言わせて俺の再就職を阻止するつもりらしい。

 ったく、貴族様の権力ってのはスゲェよなぁ!


 ちなみに最後のは、俺がさっき行ってきた娼館のマダムの証言である。


 さて、この状況で俺は何をするべきか?

 問題は山積みだが、まず最初に片付けるべき事柄は明白だ。


 ……今夜寝泊まりする宿どうしよう?

 そんなことを考えながら、目的地もなくフラフラと歩く俺。


「金ぇ借りるか? にしても、担保にする物なんざねぇし……」


 俺が言うが、疑問に思ったんじゃないか?

 俺の能力を使えば、金でも何でも作ることができるんじゃないかと?


 まさか、そんなセコイこと俺が試さないわけがないだろう?

 だがその時に失敗したから、この作戦は使いたくないのだ。


 具体的に言うと、俺の能力には射程距離と持続時間がある。

 俺が作った物は、俺本体から離れたり時間が経つと消滅するのだ。


 それ以降、俺は金にゃ誠実に向き合っている。

 二度と偽物の金は作らねぇと決めた。

 

 だからと言って、宿無しはまた別の問題である。

 

 この問題を解決するためには、仕方ない……。

 信念を曲げて金を作ろう、そう考えた瞬間。

 

「誰か、助けて!」


 助けを呼ぶ声が聞こえた。

 女の子の声だ。


 大通りから外れた路地裏。

 人気のない真っ黒な場所で、ガラの悪い男二人に絡まれる少女を見つけた。


「助けて欲しいのは俺なんだがね……」


 そんな言葉を吐き捨てながら、路地裏に入っていく俺。


 ここで見捨ててしまったら、寝つきが悪くなる。

 それ以前に、俺は女には優しいタチだ。


 女に手を挙げる輩は、相手が誰であろうと許せない。

 俺は男二人に近づき、言った。


「楽しそうだな、俺も混ぜてくれよ」


 聞いて、こちらを振り返る男たち。

 俺の姿を発見した少女が、声を張り上げる。


「助けてください! 私、この人たちに襲われて……」

「うるせぇ! テメェは黙ってろ!」


 少女にそんな言葉を吐き捨てる男。

 もう一方の男も俺に近づき、言った。


「へっへっへ。あいにく、この女は俺たち二人専用なんだ。欲しいなら他を当たんな」

「それに、何もやましいことはしてないぜ? 俺たちはただ、この子に同じパーティーに入れと勧誘してるだけだ。決めるのはこの子。自由意志、ってヤツだぜ?」


 半笑いで、そんなふざけたセリフを吐く男二人。

 男はデカいのが一人、ヒョロいのが一人と言ったところ。


 女の子は華奢で、茶髪で、ツーサイドアップの美少女だ。

 身長は低めで、僧侶っぽい格好をしている。


 パーティーへの勧誘か……。

 それは余計に都合が良い。


 俺がデカい方の男の胸ぐらをつかんで、言った。


「その女を仲間にすんのは俺だ」

「はぁ? いきなり何すんだよ、テメェ!」


 大きい男が言うと、ヒョロい男が懐からナイフを取り出す。

 そしてそのまま俺に遅いかかかってきた。


「やっちまえ! 相棒!」

「ケケケケケ!」


 ヒョロい男が高笑いしながら、ナイフを振り下ろした瞬間、


 ダダダダダッ!


 ヒョロい男の体に、一瞬で俺が左腕の連打を叩き込んだ。

 鼻を潰され、血を吹き出しながら倒れる男。


 表情が一気に暗くなったデカい男が、続ける。


「ヒッ! い、命だけは……助けてくれ」

「じゃ、あの女の子から手を引くか?」

「も、勿論だ……」


 男の返答に、俺は笑顔を見せながら。


 ドゴッ!


 路地裏の壁に向かって男を投げ飛ばした。

 建物には人型の穴が空き、内部に男が転がり込む。

 

 これで野郎二人の処理は終わりだな。

 だが、肝心なのは女の子が無事かどうかである。


 腰を抜かし、地面にへたり込む少女へ向かって俺が話しかけた。


「立てるか?」


 言って、俺が差し出した手を少女が掴みながら、


「……ありがとうございます」


 笑顔でそう言った。


 さて、これはなんとも理想的な展開だ。

 うまくいけば、今ある問題が全て解決するかもしれない。


 お互いに面と向かい合った状態で、俺が少女に向かって言った。


「頼みがあるんだけどさ。宿代、貸してくんない?」

「……へ?」



 *



 女の子を助けたことで、無事泊まる宿を確保した俺。

 宿の一室で休みながら、女の子が俺に話しかける。


「すみません。私もあまりお金なくて、こんな安い宿になってしまって……」

「いや。寝泊まりできる場所が確保できただけ、ありがてぇよ」


 申し訳なさそうに語る少女に対し、俺があっさりと答える。

 

 優しい子だな……。

 見ず知らずの男に金をせびられて、普通は迷惑がるだろうに。


 だがこの子は黙って俺を宿に泊めてくれた。

 しかも同室になったってのに、嫌な顔一つせず接してくれる。


 少し警戒心が薄い気もするが……。

 この子はきっといい女に成長するだろう。


 ちなみに俺はロリコンじゃないので、この子を襲おうなんて考えは微塵もない。


 それを先に言っておく。

 見境なしの変態と思われたら、後で面倒だからな。


 少女が続ける。


「そういえば、自己紹介もまだでしたよね?」


 聞いて、そういやそうだなと思う俺。

 続けて少女が名を名乗った。


「私はミカ。ギルドで働くためこの街へやってきました。歳は十二です」


 十二か。

 思っていたより若いな。


 落ち着いた様子だったので、もう少し年上に見えた。

 次いで俺も自分の名を名乗る。


「セト=ランゲツだ。ここのギルドで一年ぐらい働いてる。一応、アンタの先輩に当たるわけだ」

「え、セトさんも?」


 聞いて、目を輝かせながら続けるミカ。


「私、まだ分からないことが多くて。でも、セトさんみたいな優しい人が先輩なら……あの、私にギルドでの仕事を教えてくれませんか?」


 優しい人、か……。

 嬉しいこと言ってくれるじゃねぇの。


 でもそれは間違いだ。

 そのことをはっきり俺は伝える。


「ああ、俺でよけりゃなんなりと。だが、見た目に騙されちゃいけねぇよ。男ってのは、みんな女の子には優しいもんなんだぜ?」


 聞いて、キョトンとするミカ。

 しばし待って、ミカが続ける。


「でも、さっきの人たちは見るからに怖かったですよ?」

「ありゃただのチンピラだ。長生きしたけりゃ、あーゆーのには関わらねえのが得策だ」


 言って、俺はベッドに横たわる。

 目を閉じながら続けた。


「ともかく、俺はもう寝る。何か聞きたいことがあんなら、また明日な」

「……はい!」


 やたら元気なミカの返事。


 寝る前に大声を聞くのは、酒浸りの頭には響いてキツいな……。

 だが、おかげで俺もそれなりに明日が楽しみになった。


 んのことに感謝しながら、ゆっくり眠りについていく……。



 *



 翌日。

 早速ギルドにやってきた俺たちは、ミカの登録手続きを済ませた。


 これで晴れてミカは冒険者になったのだ。

 笑顔でミカが言う。


「ありがとうございます! これでようやく、私も冒険者になれました!」

「そうか。だが、喜ぶのはまだちょいと早いぜ」


 俺がミカの頭に手を置きながら、続ける。


「仕事をキチンとこなして、帰ってきてこそ一人前の冒険者だ」


 聞いて、意気込むミカ。

 

 真面目な子だな。

 こっちの言うことを、一言一句キッチリ守ろうとしやがる。


 少し気負い過ぎな気もするが……。

 まあ、こちらとしてはやりやすくて助かる。


 一緒に仕事しながら適切な距離を図っていこう。

 そんなこんなで、ギルドから出ていこうとすると、


「おうおうおう! 負け犬のセトじゃねえか! 何やってんだ、こんな場所で?」


 やたらテンションの高い男の声が聞こえる。

 

 レドだ。

 野郎が傍にルーをはべらせて、俺を見下すように言う。


「もう、このギルドにお前の居場所なんざありゃしねえんだよ! お前、確か一人じゃ仕事受けらんねんだよなぁ? しかも、どこのパーティーにも入るのを拒否られたと聞く……嫌われすぎだろ! お前!」


 よくもまぁ自分のやったことを棚に上げて、そこまでイキれるもんだ。

 しかし、俺が一人で仕事を受けられないのは事実である。


 そも俺は逃亡者なのだ。

 ギルドに個人情報を登録できるわけがない。


 だからパーティーに入る必要があるのだ。

 他の連中に協力して、その分の報酬をギルドからでなく仲間から貰う。


 そうやって俺は今まで稼いできた。

 だから今回はミカに協力して、報酬を山分けする約束になっている。


 そうなっては、もう以前のパーティーリーダーに関わる理由はない。

 レドを無視して、俺がミカを連れて横を通り過ぎようとすると、


「ちょっと待て! なんだこのガキは!」


 レドがミカの腕を掴んで止めた。 

 レドが続ける。


「お前、こんなガキを仲間にしてんのか? 落ちぶれたもんだな! 元はギルド最強の、俺のパーティーに所属していた癖にヨォ!」

「離してください!」


 抵抗し、男の腕を振り払うミカ。

 ニヤリと笑ってレドが続ける。


「おっと、言葉には気をつけたほうがいいぜ嬢ちゃん! 俺の気分次第では、お前みたいなガキでも俺のパーティーに迎え入れてやってもいいんだからな! 俺のパーティーは違うぞ? エリートしか入れねぇ! 給料もトップクラス! 薔薇色の人生が待ってるぜぇ?」

「お断りします」


 ハッキリ拒絶するミカ。


「チンピラは相手にするなって、セトさんから教わりましたから」

「チンピラ!? この高貴な俺様が? ふざけんな! おいセト!」


 言って、レドが訂正しろと言わんばかりに俺を睨みつけてくる。

 なのでお望み通り訂正してやった。


「違うぞミカ。こういう奴はチンカスってんだ。チンピラより尚、タチが悪い」

「なるほど、わかりました!」

「いや、女の子になんつー下ネタ吹き込んでんの!? お前!」


 元気よく俺の言葉に賛同するミカを見て、言葉を荒げるレド。


 無様なもんだな。

 俺がフッと笑い、最後に言葉を言い残してその場を去る。


「じゃあな、粗チン野郎」

「ちょ! 何でお前がそれ知ってんだよ!」

 

 言って、慌ててレドが必死の形相でルーに尋ねる。


「男って大きさじゃないよね! 大事なのはテクニックとかだよね!」

「いや、夜のアレは大きさもテクニックもセトの方が……」

「前の男と比べるの辞めてもらっていいかな! それ、男が一番傷つくやつだから!」


 まーたそんな阿呆どもの会話を聞きながら、俺たちはギルドを出発するのであった。



 *



 だだっ広い平原にやってくる。

 

 ミカ最初の仕事ということで、そこまで難易度の高くない場所を選んだ。

 この平原には、レベルの低いモンスターしか出現しない。


 初心者でも、安全に仕事をこなすことができる人気のスポットだ。


 ただ一匹。

 このエリア最強の主と呼ばれるモンスターが存在する。


 そいつは、この世界でも五本の指に入る凶悪なモンスターの一匹らしい。 

 というわけで、今回の標的はソイツ……、


「『神天覇王龍(しんてんはおうりゅう)ヴァイス=ウロボロス』の撃退をしてもらう」


 俺がミカに言う。


神天覇王龍(しんてんはおうりゅう)ヴァイス=ウロボロス!? いや、無理!」


 速攻で拒絶するミカ。


 否定から入るとは感心しないな?

 まずはやってみないと何も始まらないぞ?


 と、目の前で神天覇王龍(しんてんはおうりゅう)ヴァイス=ウロボロスと戦うミカを見物しながら、のんびり俺は考える。


 神天覇王龍(しんてんはおうりゅう)ヴァイス=ウロボロスは、まさにドラゴンの覇王といった見た目をしていた。


 デカい体に、強靭な鱗。

 おまけに、口からは常に超高温の炎を吐いている化け物だ。


 ドゴッッッ!!!


 その一撃は、地面を大きく抉る。

 回避しながらミカが言った。


「だって神天覇王龍ですよ!? 名前からして絶対強いですもん! 間違いなく初陣で戦っていい相手じゃありません!」

「はーい、集中して。相手から目を離さなーい。ともかく、攻撃を一発当てるとこから始めようか」


 後方コーチ役を買って出る俺。


 ミカには、俺が作った剣一本を持たせて戦わせている。

 ともかく、相手に攻撃を当てることができなければ何も始まらないのだ。


 ミカが続ける。


「というか、そもそも私後衛なんですけど! 仲間にバフとか掛けるのが仕事なんですけど! 何で、前衛で剣持って戦わなくちゃいけないんですかね!」

「泣き言を言うな。冒険者たるもの、できることは一つでも多い方が良いに決まってる」


 言って、親指を立ててミカを応援する俺。

 

「大丈夫、お前ならやれるさ! 何故なら、俺がついてるからな!」

「ならセトが代わりに戦ってくださいよ!」


 ミカが言うと、相手が大きく前足を振りかぶる。

 

「ええい! ままよ!」


 覚悟を決めて、剣を振るうミカ。

 その大量の魔力を孕んだ一撃は、


 ズバッ!


 楽々と神天覇王龍の片腕を切断した。


「……え?」


 呆気にとられるミカ。

 その後ろから俺が近づき、ポンと手を置く。


「やったな、ミカ! ナイスファイト!」

「でも、セト……これって」


 俺の作った剣を見つめるミカ。

 そこで俺が剣の仕組みを説明する。


「コイツは俺の能力で作った剣だって言ったよな? 見た目は普通の剣と変わらないが、俺の魔力が込められている。だから武器としての性能が大幅にアップしてんだ。今回は魔力を多めに込めたから、たった一撃であれだけの威力が出せたってわけ」


 言って、神天覇王龍を見る俺。

 右腕を切断された神天覇王龍は、すぐさま飛んで逃げ去った。


 任務成功である。

 確認して、ミカが続けた。


「性能がアップするって……凄すぎますよ! こんなの、量産できたら軍隊より強いじゃないですか!」

「ああ。できるよ、量産。俺の魔力が尽きるまで、何本でも」


 聞いて、絶句するミカ。


 そんなに凄いことか?

 量産できたところで、所詮パーティーなんざ四人ぽっちだ。

 

 四人全員が俺の武器を使ったって、到底軍には叶わない。

 おまけに俺のこの性格だ。

 

 仲間どころか、友人すらマトモに作れない……。

 だからこんな能力、俺にとっては宝の持ち腐れでしかないのだ。


 それを否定するようにミカが言う。


「セトは凄い人です! 見直しました! 最初は、私を見殺しにするつもりかな? とか思いましたけど、違いました! セトはちゃんと、私の勝利を信じてくれてたんですね!」


 聞いて、オイオイ……と考える俺。


 俺がミカを見捨てるわけがないだろう?

 単独でアイツと戦わせたのも、ミカに勝たせて自信をつけさせるためだ。


 俺の目論見通り、今のミカは自信に満ち溢れた顔をしている。

 成功は自信に繋がり、自信は次の成果につながるのだ。


 俺はそのことをミカに教えたかった。


 無事成功して、安堵の表情で微笑む俺。

 そのままミカの頭を撫でて、言った。


「よくやった。じゃ、今日はもう帰ろうか」

「はい!」


 こうしてミカの冒険者業……。

 第一日目が、見事成功に終わった。



 *



 セトたちに遅れて……。

 レド、ルーらも仕事をしにギルドから出発したのであった。


 その最中での出来事である。


 彼らが向かったのは深い森の奥。

 セトらがいた平原より、何倍も強いモンスターがうろつく危険地帯だ。


 そこで、彼らはとんでもない事実に気づくことになる。


「なんだ! 何でこんなにモンスターが強いんだ!」


 狼型のモンスターに苦戦し、そんな言葉をぶちまけるリーダー。 

 続いてルーが言う。


「どうして! セトが作った武器より、遥かに高品質な武器を仕入れたのに!」


 彼らはセトを追い出した後、自費で高級な装備を買い揃えた。


 品質は悪くない。

 見た目も豪華になった。


 しかし、何故か以前より戦いに苦戦する。

 信じられない現実だけが、彼らの目の前にあった。


 レドが気づく。


「まさか、セトの作った武器の方が強いってのか? そんなことがあってたまるか! 俺がいくら出して、この装備を買い揃えたと思ってやがる!」


 言って、ブンブンと剣を振り回すレド。

 剣術の基礎もロクになっていない、お粗末な剣裁き。


 そんな彼でも、今までモンスターと互角以上に戦えていたのは……。

 全て、セトの作った高性能の武器のおかげであったのだ。


 そのことを察したレド。

 彼は持っている武器をすぐさま投げ捨て、セトの武器に切り替えた。


 振りかぶりながらレドが言う。


「馬鹿だな、セトの野郎……この武器を俺たちに残していきやがった。おかげで、俺は前みたいに戦える!」


 狼の頭に振り下ろされる一撃。


 バキンッ!


 しかし無情にも、頭に直撃した瞬間ポロリと刃先が折れる。


『具体的に言うと、俺の能力には射程距離と持続時間がある』


 セトが言う通り、彼の能力は万能ではなかった。

 

 まず射程距離。

 セトが作った道具は、セト本体から離れれば離れるほど性能が劣化する。


 次に持続時間。

 セトが一度作った物は、一日も経てば形を保てなくなり塵となる。


 そしてちょうどこのタイミングで、レドらが持っていたセトの武器は全て消滅したのであった。


「なん……だと」


 望みが断たれ、絶望の表情を浮かべるレド。

 次の瞬間、ルーの悲鳴が聞こえる。


「きゃあ!?」


 追加のモンスターに囲まれるルー。

 ルーはレドに助けを求めた。


「助けて、レド様!」


 しかし、逆にレドはこれをチャンスだと捉える。

 モンスターがルーに集中してる間に、自分はこの場から逃げ出せるのでは?


 そう思って、すぐさまその場から逃げ出すレド。


「この粗チン野郎がァァァ!!!」


 逃亡するレドを見て、絶叫するルー。

 見捨てられたことを悟ったルーは、ただ体を震わせて死を待つだけとなった。


「ふざっけんじゃねぇ! こんなところで死んでたまるか!」


 言って、レドが思い出すのはセトのこと。


「全部あのクソ野郎のせいだ! 俺たちは、アイツを追い出して上手くいくはずだったのにヨォ!」


 レドは泣いた。

 惨めに喚き散らした。


「お前に頼めば! 俺たちは助かるのか! なあ、頼むよ! 俺は死にたくないんだ! 靴でもなんでも舐めてやる! お前の舎弟になってやる! だから、俺の命だけは助けてくれ!」


 それでも一心不乱に走り続ける。

 全ては、己が生き残るために。


「ゼェ……ゼェ……ここまでくれば、流石に」


 息を荒げるレド。


 見事、モンスターを振り切り森の外へ逃亡を成功させた。

 しかし森を抜けた先で、予想外の相手と出会うこととなる。


「見つけたぞ、レド」

「貴方は……ジェイク卿!?」


 馬の上に乗り、威厳たっぷりに語る大柄な男。


 彼は周囲の小貴族を統括する、その地域最大の権力者。

 立場的には、レドを遥かに上回る大貴族なのである。


 空いた口が塞がらないレド。

 そんな姿を見て、ジェイク卿が言う。


「私が貴様に会いに来た理由、分かっておるな?」


 聞いて、レドの頭に思い浮かぶのはセトのこと。


 レドはジェイク卿と、ある取引をしていた。

 セトの作った道具を、セトに無断でジェイク卿へ売りつけていたのだ。


 勿論、その利益はレドの独り占めである。

 そして当然、セトがパーティーを抜けたことで道具を送れなくなる。


 代わりに、レドは別の場所で仕入れた道具を売りつけた。

 しかしその性能は、セトの作った道具に遠く及ぶはずもなく……。


「よくもあんな使えぬ道具を、私に売りつけたな?」


 激怒するジェイク卿。

 すると、周囲で控えていた兵士がレドの体を拘束する。


 弁解するレド。


「お待ちください! 私は……私は騙されていたのです! あの武器は全て!」

「言い訳は後で聞こう。もっとも、これから行われるのは尋問ではなく……拷問だがな」


 聞く耳を持たず、ジェイク卿はレドを連行する。

 この後、壮絶な拷問を受け絶命することとなるレド。


 そんなこと知りもしないセトたちは、今も呑気に夕飯を食べているのであった。



 *


 

 ミカの初めての仕事から帰宅後……。

 ギルドと併設された酒場にて、俺たちは宴会を楽しんでいるのであった。


「「カンパーイ!」」


 ハイテンションで、グラスを当てる俺とミカ。


 俺が飲むのは当然酒だが、ミカはオレンジジュースである。

 テーブルに並べられた料理も中々に豪華な物だった。


 久々にマトモな飯にありつけたな……。

 それもこれも、ミカが頑張ったからに他ならない。


 俺がミカに礼を告げる。


「ありがとうな。俺なんかとパーティー組んでくれて」

「そんな……お礼を言うべきなのは、こっちですよ」


 言って、微笑みを向けるミカ。


「セトがいなかったら、気弱な私はすぐダメになってました」

「んなことねぇよ。ミカはよくやった。冒険者としての才能あるよ」


 聞いて、ミカが信じられないと言った表情で聞き返してくる。


「本当、ですか?」

「ああ、本当だ。嘘をつく必要なんかないだろう?」


 聞いて、ミカが大喜びで俺に抱きついてきた。


 コラコラ。

 急にどうしたんだ?


 そんなことやってないで……。

 早く夕飯を食べないと冷めちまうぞ?


 そんな考えとは裏腹に、ミカは言う。


「大好きです、セト」

「ああ、俺もだ……」


 言って、ミカの頭を撫でる俺。

 この生活も、なんとなく悪くないと感じた。


 これからミカと一緒に働いていくのも……。

 いつまで続くか分からねぇが、楽しくやっていけそうな気がした。


 そんなことをしみじみと感じながら、夕飯を食べていると、


「セト!  セト=ランゲツはここにいるか!」


 突然、大きな声がギルド中に響いた。


 俺の名前?

 誰かが俺を探しているのか?


 そう思って、ギルドの入り口を確認する。

 そしてソレを確認し、絶句する俺。


「レッ……レドッッッ!!!」


 そこにはボコボコにされたレドと、大勢の兵士たちが立っていた。


 明らかに只事じゃない。

 すると兵士の一人が要件を口にする。


「逃亡者、セト=ランゲツ! 貴様を拘束しに来た!」


 ヤベッ!

 

 軍に俺の所在がバレちまった……。

 こうなったら、捜索の手が及ばない場所まで逃げるしかない。


 だが、何でバレた?

 見るからにレドは拷問されたようだ。


 ちくしょう……。

 あの野郎、俺を売りやがった!


 こうしちゃいられない。

 すぐにこの場から逃げなくては。


 なーに、心配はいらない。

 俺は今までこんな状況、何度も乗り越えてきた。


 じゃなきゃ逃亡生活なんてできるわけないだろう?

 幸い、俺がこの街を出てっても困る人間は……。


 いや、今は一人いた。


 ミカ。

 お前をこの街に残していくことだけが寂しいよ。


 俺の傍で震えるミカ。


 だが、ごめん。

 お前を連れていくわけにはいかないんだ。


 お前を、危険な逃亡生活に付き合わせるわけにはいかない。

 お前には幸せに平穏な生活を送って欲しいんだ……。


 だから俺はミカを突き放し、言った。


「じゃあな、ミカ。短い付き合いだったが、後は元気でやれよ」


 言って、俺は能力で煙玉を作り出した。

 それをギルド中に撒き散らす。


「クソ! 煙幕か!」


 先手を取られ、焦る兵士たち。


 これなら逃げ切れそうだ。

 すぐさまギルドから逃走を図る。


 しばらく走り、街の端っこまできた。

 ここまで来たらひとまずは安心だ。


 後は馬車でも使って、街の外に出よう。

 俺がそう考えていると、


「短い付き合いになんてさせませんよ」


 声が聞こえた。

 その声の主を見て、驚愕した顔で俺が言う。

 

「ミカ……なんで、ついてきやがった。んなことしたら、もう冒険者家業なんて続けらんねぇぞ!」

「いいんです。私、気づいちゃったから」


 言って、微笑みながら続けるミカ。


「私、最初は冒険者になるためにこの街へ来たんです。冒険者って、なんか楽しそうな仕事でしょう? 平凡な私の人生には、ちょうどいい刺激だと思ったんです」

「……にしちゃあ、この選択はハードすぎるぞ?」

「はい。それでいいんです。だって、セトと一緒にいたほうが絶対に楽しいんですもん」


 言って、譲らないミカ。


 参ったな……。

 そこまで言われちゃ、俺に彼女の意思を否定することはできない。


 そもそも人に正しい道を解けるほど、俺は出来た人間じゃねぇ。

 だから俺に言えるのは、これだけだ。


「好きにしろ……俺は、どうなっても責任は取れないからな?」


 聞いて、ミカの顔が満面の笑みに変わる。

 そのまま俺の背中に飛びついてきた。


「ちょ、なんだよ……」

「ここまで走ってくるので疲れたんで、おぶってください!」

「たく、しゃーねぇな……」


 口ではそんな憎まれ口を叩きながらも、満更ではない顔をする俺。


 久々に思い出した感情だ。

 誰かと一緒に旅をするってのは、案外楽しいかもしれん。


 居場所を失い、仲間を失い……。

 ひとりぼっちになった俺の元に現れた、たった一人の女の子。

 

 そいつは図々しくも、俺の人生に割り込んできた。

 そして、俺にそれも悪くないと思わせやがったんだ。


 じゃあ、俺はそれを受け入れるしかないじゃないか。


「とりあえずどこ行こっか」


 言って、俺はミカを背負って歩き出す。


 果たして、これから俺たちにはどんな運命が待っているんだ?

 楽しみでもあるが、不安でもある。


 どうなるかなんて分からない。

 だったら、楽しんだ方が得だろう?


 するとミカが、さっきの俺の問いに答える。


「私、温泉行ってみたいです!」

「温泉か……いいな、それ」


 言って、俺たちは笑った。

 笑いながら一歩を踏み出したのだ。


 この先、俺たちがどうなるかは……また別の話。

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― 新着の感想 ―
[一言] チェンジというより、さようならフォーエバーの線でおなシャス!(´д`)(無理に顔をあわせんでもよいかと。どちらか一方目線でもう一方を語るで)
[一言] とりあえずビッチにも、死に損なって下手に生き延びる位の自費(慈悲でなく)はあってもいいと思った記念にカキコ。(´д`)(無事である必要はないが)
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