最終話
翌日の昼間、目が覚めた紗織は樹梨が泣きじゃくっているのを見て驚いた。
何事かと聞いてみると、どうやら同性婚は認められなかったらしい。
更には、樹梨は紗織の翼の修理が完了したらアフリカへ、政府からの要請で機械仕掛けの翼専門の修理部隊として派遣されてしまうらしい。
「翼が直ったら、私はもう樹梨に会えないの?」
「わからない。けど、このワイヤレスヘッドホンでいつでも電話して良いから! あたし、紗織からの電話、ずっと待ってるから! だから、どうかあたしが帰国するまで生き抜いて。また紗織に会いたいから!」
紗織は樹梨からパステルブルーのヘッドホンを受け取った。
「会いたいのは私も同じだから、樹梨の帰国、ずっと待ってるよ」
3時間後、樹梨は1週間ものの故障を修理し終えた。
「背中には思っていたより深い損傷はないみたいだから、もう終わりだね」
「私はこれからどうすれば良いの?」
「今日の午後6時になったら空を飛んで、真っ白く光り輝く大きな建物へ行きなさい。
そこは心身に傷を負った女性だけが入れる建物だから、安心して。
あたしがそこに「紗織が来る」って6時半枠で予約入れといたから、時間守るのよ。私には紗織の翼の修理はできてもこころの傷は癒すことができなかったから。
7時枠でカウンセリングと診察の予約も入れといたから、絶対行くのよ!」
紗織は樹梨に抱きついた。
「ありがとう、樹梨」
「じゃあ、あたし、もう行かなきゃ」
「本当に行っちゃうんだね」
紗織が樹梨から離れると、樹梨は出入り口のほうを向いた。
「また会おうね、必ず」
「うん。必ず会おうね」
お互い、バイバイとは言わなかった。