魔法書▲▽魔法心理
前回は容姿今回は魔法!いよいよ主人公が魔法に手を出します!異世界系なのにいまだに魔法を一度も使ってない主人公…始めて使う魔法はどんな魔法なのか!
「驚いてる驚いてる……自分の顔を見たプレデックがどんな可愛い反応をするか、気になって村人達から貰ってきた甲斐があったよ」
ロッドはそう言うといつも通りのアホ面を鏡越しに晒してきた。
(今までずっと男だと思っていたのに……まさか"男の娘"だったとは……、道理で女物の服ばかりなわけだ)
ロッドはプレデックが男だと知っていて、それなのにわざわざ女物の服を持ってきたのだ。それでもロッドには間違えて貰ってきたなんて様子は全く感じられず。むしろこれを着るのが普通、見たいに接してきていた。
(はぁ……、どうしようもない事実だし、素直に受け止めるしかないか)
深いため息を吐きつつプレデックは、最初の木箱の物色を再び始めた。
箱の中身を見渡すと一番最初に目に留まったのは液体を入れた瓶だった。数本置いてあり、一つだけ目立つ小瓶があった。プレデックは一際目立つ小瓶が気になり手に取ると、
「お、やっぱりプレデックは女の子だなぁ……一番最初に香水に目を付けるとは」
鏡を下ろし、プレデックが手に持つ物を見たロッドがそう言う。
(香水……)
鼻に優しい、甘い香りが蓋からしてきた。蓋を取り替えるとプッシュ型になるタイプのもので、香水の匂いの種類はどこの世界も同じなのか、プレデックが地球で嗅いだことのある匂いだった。
プレデックは中身の確認が終わった瓶を元に戻し、今度は中身が分からない袋を開いた。
(眩しい……)
金と銀の色を輝かせた硬貨のような物が出てきた。この世界の通貨だろう。硬貨ではあるが一枚の大きさは直径5センチほどで、日本の100円玉を五枚くらい重ねた厚さだ。
(うぅ眩しい……閉じよ)
袋の開け口を閉じるとプレデックの視線は自然と本を見ていた。気になり、木箱から取り出そうとするが、分厚い上に重くて今のプレデックじゃ木箱から本を取り出せない。
「お、この歳で本が気になるとは勉強熱心だな……」
プレデックの行動を全て肯定してくれるロッドはそう言うと片手で一冊、魔法概念と書かれた本を手に取ると地面に置いてくれた。
(魔法概念……面白そうだ)
本を開くと文字がズラーっと書かれている。
(うぅ……読めない文字がちょくちょくあるな)
本を開き、読めない文字の羅列にプレデックは渋い顔をしていると、その様子を見たロッドが「どれどれ」と言いながら音読を始めてくれた。
内容は、魔法にはいくつか種類があり。大きく分けると魔法、魔術、妖精魔法の三つに分かれているらしく、魔法は詠唱を唱えることで発動するものらしい。魔術は詠唱を唱えないで発動するみたいだ。
(魔術の方が有能じゃん!)
っと、最初思っていたプレデックだが、さらに説明を聞けば魔術は魔力コントロールが難しく、魔法と違い、魔力の消費量が魔法より多く、その上全体的に発動する魔法の格が下がるらしい。妖精魔法は妖精を経由することで魔力をあげたり魔法の威力をあげたりする事ができるみたいで、魔力コントロールを手伝ってくれる、要は補佐役だ。この中で一番、この妖精魔法が便利で使いやすいだろう。
そして魔法、魔術、妖精魔法。どの魔法様式にも階級、クラスと言われるものがあり。ミニアルクラス、イミイルクラス、オイウルクラス、エーミルクラス、アービンオルクラス、この五つに分かれている。
最初から順に常用初期魔法、基礎魔法、発展魔法、応用魔法、発展応用魔法。という感じで、更に細かく区切って説明をすると、ミニアルクラスは日常で使うような魔法ばかりで基本、魔術で発動するらしく。手間が省けるんだとか。
イミイルクラスは魔法の基礎で、主に戦闘や護衛など、それ以外では見世物としても使われることが多く、使い道の幅は広い。
魔術で素早く発動する人もいれば詠唱を唱えて戦闘で威力を重視することも出来るようだ。詠唱も他のクラスより手早く出来るのがポイントらしい。
中間のオイウルクラス、発展魔法様式。基礎魔法を発展させた物の名称で、シンプルに消費する魔力が増え、魔法の威力を上げる事ができる。
(もし戦闘で使うならイミイルクラスでいいんじゃないか?)
プレデックはオイウルクラスの説明について疑問を抱きロッドを見つめるが、ロッドから返ってきたのはプレデックが何を知りたいのか分からないという表情だった。
(ダメだこりゃ、後半二つは名前の通りの説明で特に細かい解説がないし。名称から想像すると応用は使える魔法を上手く使い回すとかか? わからん)
そんなこんなで時間が過ぎていき、家の外が暗くなった。時刻は夜、すでに太陽は西の空に沈み、上弦の欠けた月が夜空にかかる頃。レイミーがロッド達のもとにやって来た。
「そろそろご飯の支度をしようかしら」
囁くような声で、レイミーがそう言いながら音読をしているロッドの間に割って入って来た。
「夜になっちゃったな……今日はここでおしまい……か…………」
「あらあら、お勉強を邪魔しちゃったかしら、ずいぶんと熱心に聞いていたんですね」
「あぁ、顔真っ赤にして次へ次へってすごく催促してきたよ、相当面白かったんだな……」
ロッドはそう言うと眠ってるプレデックの頬に指を当て、感慨深そうにその眠る表情を眺めていた。
「あらあら、ロッドさんも騎士を辞めて自由の身になったって言って旦那に狩りの享受をせがんでたじゃない」
「あぁ、あのときの俺と同じ目をしてるよこいつは……大物になるぜ?」
「当然よ、この子はスィークル・アイ家の生き残り……あの子の息子なんだから…………」
静かな空間、二人のそんな会話が交わされる。
「こいつのこの先が思いやられるな…………」
深い表情をするロッドの瞳にはプレデックが映っておらず、心ここにあらずな状態に近しかった。
▲▽▲▽▲▽▲▽
次の日、プレデックは目を覚ますとその瞳に最初に映ったのは、暑苦しい男の胸板だった。プレデックは思わず吐きそうになるのを我慢した。その場から離れ、いつもの寝床じゃないことに気付くが特に気に留めるほどの事じゃないためか辺りを確認した。
物音がするのでキッチンの方を見やるとレイミーが朝食を作っている姿が見えた。
プレデックはいつも通り朝食を取るテーブルの椅子に。た全身の力を使い椅子の足からよじ登ると一度座席の上に立ってから腰を下ろした。ちなみに、歩けるようになってから毎日、椅子に座るのが大変過ぎたためかプレデックは半分寝てても座ることが出来るようになっている。
今日も半目の状態で料理が出来上がるのを待つ。レイミーがテキパキ料理を進めるのを見ながら、ぼーっとしていると、
「ただいまぁ!」
勢いよく扉をぶち開け、大声で帰宅を宣言するのはアルメロだ。プレデックはビックリして半目状態から完全に目を開けた。半目状態を妨げる原因作った方へ顔を向けるとそこには斧を担ぎ、上裸の姿のアルメロが汗をかきながらも心地よさそうな笑顔で家に入ってきたのが見えた。
「あらあら、アナタ。プレデックがビックリしちゃうから大きな音を出すのを止めなさい、私の心臓にも悪いです。」
「おほう……す……すまんのう…………」
薄い笑顔を張り付けたレイミーには頭上がらずのようで。
注意されると先程までの威勢はどこへやら、肩を萎ませたアルメロが弱い返事をした。
「あとアナタ、汗くさいです。外で体を洗ってきてください」
「くさーい!」
「おほほう…………」
追い討ちをかけるようにレイミーはアルメロを外へと追いやる。それに乗っかる形でプレデックもレイミーの言葉に続いた。正直、レイミーの言う通りアルメロはかなり臭かった。
「ふわぁ~アルメロおじちゃんは一日ぶりだって言うのに朝から元気だね……老いを感じさせないのは昔から変わらない辺り、尊敬するよ……」
アルメロの騒音に釣られて目を覚ましたロッドが、気だるそうに欠伸を掻きながらテーブルの元へやってきた。
(昔からこうだったのか。なんと言うか、暑苦しい……正直嫌いなタイプだ)
「ワシはいつになっても変わらないぞ!」
「ははっ……、アルメロおじちゃんらしいわ」
「そうねぇ……」
(いつになっても変わらない……か)
そんなものはプレデックもそうで、彼は前世からなにも変わってない。この人たちは血が繋がってないのにお互いを信頼しあっていて仲が良い。その光景にプレデックの、蓮の濃密な前世での時間が克明に思い出される。
(こいつらの信頼の枠に、俺も入っているのかな……)
前世で感じてきた雰囲気とは違う、なんと言うのか、
(家族みたいだ)
家族、これが家族なのだとしたら、この雰囲気が家族なのだとしたら。それは彼の知らない全く別の空間であり、彼の知る物とは似て非なる雰囲気だった。
なんとも言えない感情を心の底に抱きながらプレデックは朝のルーティーンを済ませた。
プレデックは昨日家に届いた木箱の中に置いてあった本を再び読み始めた。普段であればレイミーが洗濯を済ませ、ロッキングチェアに座り編み物をしてるのをぼーっと正面から見てるくらいしかやることがなく、外に出ようにも窓は光を家中に届けさせるために高い位置にある。そもそも、開け閉め出きて、外へとつながる物がない。玄関の扉は重く、開けることが出来ない上、そこ以外に出口がないときてる。なのでほぼ毎日、レイミーの編み物を一日中見てるくらいしかやることがない。
(だが今は違う!)
魔法書があるのだ、分からない文字があればレイミーに聞くことで何とか本を読み進めていた。
(ふむふむ、オイウルクラスの魔法の仕組みが何となく分かったぞ)
発展魔法―通称オイウルクラス
この魔法はイミイルクラスと違い、基本的には魔力の消費が大きい、けれどイミイルクラスで発動する魔法の大きさによってオイウルクラスの需要性が上がる見たいだ。
例えば、イミイルクラスで大きな魔法を放つと、その魔法の大きさによって消費する魔力が大きくなる。それに比べて、オイウルクラスはイミイルクラスと同じくらい大きな魔法を放とうとすると、イミイルクラスより威力の高い魔法を、少ない魔力で放つことができるのだ。
まとめるとイミイルクラスは比例式なのに対し、オイウルクラスは反比例式で。放つ魔法の威力が小さければ小さいほど消費する魔力はイミイルクラスと比べて大きくなり、放つ魔法が大きければ大きいほどイミイルクラスと比べると魔力の消費が少なくなる。
オイウルクラスとイミイルクラスは使い分けが大事で、もちろん魔力コントロールの事も考えると更に複雑になる。
(次はエーミルクラス……)
レイミーが驚いたようにプレデックを見ている。プレデックはレイミーからの視線を感じ取り、何かあるのか聞くように顔を向けた。
「あら、熱心に読んでるのに邪魔しちゃったみたいで、ごめんなさいね、私の編み物を夢中に見てるときもそうだったけどまさか、こんな難しい本を夢中で読むなんて」
(……?)
プレデックはレイミーがなぜ自分に関心を寄せたか分からず首を傾けた。
「あら、ごめんなさいよく分からなかったわよね……プレデック……あなたの読んでるその本。それは大体13歳くらいの子が学園で読み始める内容の物なのよ」
(この世界には学園があったのか。ここが異世界だって分からなかったときは中学でセインみたいな奴が出来たら大切にしようと覚悟を決めていたけど、異世界だって気づいてからはいつの間にか存在を忘れていたな)
「あら、やっぱり分からないわよね……それにしても子供の成長力はすごいわ……ちなみにそこにある二冊の本が13歳より前の子供が読み始める物よ」
そう言ってレイミーがプレデックの横に置いてある分厚い大きな本に指を指した。ミニアルクラス、イミイルクラスとかかれた本だ。
(しまった! あれが初級編だったか! 。俺みたいな奴はこの世界では異端児扱いされたりするんじゃないか? 。少し心配になってきた。もうちょい子供もっぽくするか? 、いやでもそしたら俺が暇になるし……)
ようやくレイミーの寄せる関心の意図が汲めたプレデックは事態の緊急性に思わず焦りの表情を浮かべた。
「あらあら、心配しなくても大丈夫よ。あなたみたいな子は王都では少ないわけでもないのよ。貴族生まれの子供なら大体この歳位から、あなたは少し早いけど、魔法教育を始めている所はたくさんあるわ。ただあなたが読む本は少し内容が濃いだけ」
プレデックの不安な表情がそこまで出ていたのか、レイミーが安心させるように言ってくる。
(なんだ、良かった……少しびびったじゃねぇか)
レイミーの言葉に安心するプレデック、異端者扱いされて不遇を受けるのはもう勘弁だ。
(にしても王都……王都かぁ……)
そう言えばプレデックはこの近くにあると言われている村にすら行ったことがない。村人とも会ってないので、今のところプレデックが持つ面識はこの老夫婦とロッドだけだ。
生まれて間もないのも事実だが、村の人らがどんな者なのかはプレデックも少し気になるところ。
(何せ俺に女用の服しか渡さなかったやつらだからな! 多分ジジイかロッドが女服をわけてくれとか言ったんだろうが)
事情を知らないとはいえああもたくさん子供服をくれるような人達だ、友達になれる子供がたくさんいるかもしれない。
(……っと、道草を食ってしまった。魔法書の続きを読むとするか)
プレデックはレイミーに止められた魔法概念の本の続きを読み始めた。
応用魔法―通称エーミルクラス
これは魔力コントロールが強く要求されるもので。基本は扱うクラスはなんでも良い。イミイルクラスにミニアルクラスの魔法を加えることで効果の後付けができるみたいな感じだ。
例えば、イミイルクラスの炎魔法にミニアルクラスの風魔法を内側から瞬発的に広げるように発動することで爆発を起こす。これは、オイウルクラスでもでき、アルメロがプレデターを無双するときに出てきた炎の剣。あれは剣の外膜が低温の熱が覆っており、中で蓄えられた高温の熱が抑えられていて、何かしらの拍子で突発的に外膜が薄くなるか若しくはなくなることで爆発を引き起こす。オイウルクラスは一つの属性魔法で応用を効かせるために比較的に消費する魔力は少なくなる。
(けど、今の場合だと弱点は思い付く限りでその炎の剣の外膜の温度を上げるか、更に上から高温の熱を加えるか、って所が対処法になるだろうな)
それに対してエーミルクラスは、取扱うクラスは自由で、複数の属性扱うことができる。オイウルクラスより対処が困難になり文字通りいろんな属性を使い、応用することで場を切り抜けることができる。その代わり、消費する魔力は各クラスを足した量になる。その上、文字上で語るのでは簡単だが、他属性を同時に使うのはかなり難しい。魔力コントロールのセンスとそれを作り上げる魔力の量が必要だ。
そしてこのエーミルクラスの一番の利点は、新しい魔法を作れるところだろう。他属性、他クラスの魔法を同時に使う。それは、魔法の合成と言って良い。
(けど、消費する魔力が尋常じゃなさそうだな……。そして最後はこれか)
発展応用魔法―通称アービンオルクラス
これは言わずもがな、エーミルクラスのオイウルクラス版だ。エーミルクラスも元は他クラスの複合魔法。もちろん、各クラスの消費魔力が上がればその分が足されて魔力の消費が半端じゃなくなる。が、このアービンオルクラスはその問題が多少解決されるのだ。
復習すると発展魔法は反比例式なので、エーミルクラスの魔法でイミイルクラスとミニアルクラスの魔力の消費が少ない魔法同士を組み合わせたとすると、そのまま魔力の消費が少ないエーミルクラスが完成する。
それに対してアービンオルクラスは同じように組み合わせると反比例でエーミルクラスよりも大分多量に魔力を消費してしまう。だから強力なクラス同士を組み合わせることでエーミルクラスよりも魔力の消費を制限することが出来る。
(これに魔法、魔術、妖精魔法が加わることで更に魔法の使い道や汎用性が広がる……魔法……おもしれぇ……!)
プレデックは魔法の奥深さに興奮して感嘆の息を溢した。
「あらあら」
レイミーが嬉しそうに微笑んでくるが、プレデックはそれに気づかず自分の世界に入り浸っていた。
「「ただいまぁ!」」
扉をぶち開ける大きな音が、そんな有頂天なプレデックの世界にヒビを入れると、一気に彼は現実に引き戻された。
アルメロとロッドだ。二人は体中に汗をかいていた。
昼下がり、レイミーが昼食の支度を始める時間だ。
「あらあら、プレデターの残党は見つかったのかしら?」
「「いや! 、見つからなかった!」」
男二人声を揃えてそう言うと、レイミーに言われる前に気持ち良さそうに水浴びをしに行った。
(多分嘘だなあいつら。残党狩りなんてしてなかったと思うわ)
二人の噓にレイミーも気づいているようで、二人が楽しそうにしてるのを邪魔する様子もなく暖かい目で眺めていた。
(あれはバカ二人をみる目だな……)
そして昼過ぎ。食卓を囲み、レイミーは今までのプレデックの様子を嬉しそうにアルメロとロッドに話した。
「まじか! すげぇなプレデック! おじさん感動しちゃうよ!」
「おほう……本当にそのとおりじゃ! ワシも若い頃は魔法熱心だったんじゃぞ!」
(うむ、誉められるのも悪くない)
プレデックは少し顔を赤面させつつも胸を張り、鼻を鳴らし膨らませた。
「そうじゃプレデック、面白い魔法を教えてやる」
そう言うとアルメロは席を立ち、プレデックを抱き上げ椅子から地面に下ろすと、二本指を立て、そちらの方に視線を落とした。
「ミニアル・サンダーライン」
そう唱えるとアルメロが立てた両手の指の間に目で見えるくらいの電流が走り一本の線を形作られた。
「そしてこれをこうしてっと」
電気で出来た一本の線がデフォルメされた熊を作ると動き始めた。
(すげぇ……)
プレデックが感動してると、アルメロはプレデックの顔をみて微笑んだ。
「プレデック。お前もやってみるかの?」
そう訪ねてきてプレデックぱあっと明るくなると大きく首を縦に振った。
「おほう……かわええのう、あいわかった! まずは今見たものをイメージしてワシと同じように詠唱するんじゃ」
プレデックは両手の指を立て“雷”をイメージして詠唱を唱えた。
「みにある・さんだーらいん!」
瞬間、指と指の間に雷の線が出来る。
(出来た! ジジイと違ってなんかバチバチ言ってるけど……)
「おほう、ようできたのう! 。……ん? なんか魔力大きくなってきてない?」
(……え?)
アルメロが疑問を口にするとその瞬間、“雷”が暴走し、アルメロに向かって放電した。
「おっほーーーーーう!」
体感わずか一秒。すぐに“雷”は消え、プレデックの体の力が抜けていった。意識はだんだんと遠退き、プレデックは後ろへ倒れてしまった。
プレデックが完全に意識を失う直前。アルメロが、倒れる彼の身体を支えるのを感じてそのまま意識が途切れていった。
──そしてプレデックはこの時はまだ、自分が想像してたのは"電気"じゃなくて"雷"だったことに気付かなかった──
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プチ番外編
──ばぶばぶ、朝のルーティーン──
レイミーとロッドの密談からの一週間。
プレデックは、目が覚めるといつも通りの、見慣れた天井が朝を迎えてくれる。
プレデックはいつも通りゆりかごから這い出ると良い匂いのする方向へと歩いていった。
椅子の足は高い、座るのにも全身の体を使う。頂上(座席)に着くとプレデックはしりもちを付いて朝食が出来上がるのを待った。レイミーは毎朝プレデックより早くに起きては既に朝食の準備をしている。
今日の朝食は、ホワイトシチューにパンを浸してへにょんへにょんになったパン。子供の口内を労った食べ物を今日もレイミーは幸せそうな顔であーんをしてくる。プレデックもそれに答えるように笑顔であーんと口を開け出迎えて──
「あぃやぃいいあやっ!」
プレデックはいつも通り、目の前のスプーンをはたき落とし回らない呂律で嫌だと抗議した。
(何でだっ! この一週間ずっとこれだ! 朝! 昼! 晩! 拷問だ!)
ロッドとアルメロはバイキング形式で美味しそうなものを食べている。最初まではなにもしなくても食べさせて貰えるので三日目まではプレデックも違和感を抱かず食べていた。だが、四日目から限界がやって来た。
ふてくされてるプレデックにレイミーは、フォークを刺したバナナをプレデックに食べさせようとあーんとする。プレデックもパンじゃない別の食べ物につられて反射的にあーんと口を開きバナナを出迎えた。すると口に入ったのはへにょんへにょんになったパンだった。
(んぐ…………しまった!)
プレデックは毎度これにハマってしまっている。頭で分かっていても体が無意識にパン以外を求めるせいでずっと同じ手にかかっているのだ。
プレデックはこれを通称ぱんぱん地獄と呼んでいる。由来は、
──(ちょっとエロい……)──
魔法一つ使うのに本来求められた及第点を越えてくる主人公…悪運が強いですね笑笑そして今回プチ番外編を作ってみました!プチかどうかってつつかれたらぼろが出ますがプチなんです!。
ということで今のところ次話はロッドの狩り講座です!