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転生したひねくれ者は二度目の人生をどう送る?  作者: すり寄る玉の輿
幼児期
7/30

最終決戦▲▽初めて見るもの

いや~いよいよ熊さんとの最終決戦ですね!どんな勝ち方をするのか大体想像はできるとは思いますけど是非楽しんでみてください!

 

「グルルルアァァッ!!」


 咆哮を上げるプレデターの迫力に気圧され、プレデックの震えが段を上げて痙攣に変わった。


(やばいやばいやばいやばいやばい!これ絶対死ぬって……きっと今の泣きっ面汚いだろうなぁ)


 今まで意地汚く生きてきたのだ。今さらそんな事で恥じるなんてことは今のプレデックにはない。


 二本の足を支えに立ち、咆哮をしていたプレデターが、抜け落ちるように前足を地に落とすとその瞬間に轟音が鳴り響いた。

 プレデックは感覚が麻痺してふらつく足を何とか動かし、プレデターに背を向けて前へ進んだ。

 相手は獣、それに対しプレデックは赤子。

 さらには歩きたてだ。そんな状態の子供が化け物から逃げきれる筈も当然ない。


(あぁ……何とかしないとまじで洒落にならねぇ)


 プレデックが喧嘩を売ってもロッドを取り巻く五匹のプレデターの内一匹しか引き剥がすことができなかった。

 そして、その一匹は最初にいた熊であり、左目に矢を突き刺している。


 多少のダメージを負っているものの、ひ弱なプレデックではあまり効果を成さない。引き剥がしても喧嘩を売ったプレデック自身、特にこれと言って勝算なんてものも無い。


(これじゃ前世からなんも変わってねぇじゃねぇか)


 そんなことを考えてると背後から突然の風切り音。その音と共に追い風がプレデックを吹き飛ばした。


(うおっ!あの熊、腕を振るっただけでこれかよ……化けもんかよ。あ、バケモンだったわ。これ地面に着いたら死ぬって)


 そう思いながらもプレデックは慣れない身体を動かしなんとか受け身をとった。身体を起き上げると目の前、目と鼻の先ほどの距離にまでプレデターが近づいてきているのが分かった。


「ガルフッ……」


 荒い吐息をするプレデター。眼前、多少距離があってもその巨体を目にするとプレデックの身体が震えて身動きがとれない。そんなプレデックを見るプレデターは、子供相手なのにも関わらず殺意を満々に剥き出し突撃してきた。


(あぁ、死んだな……)


 自身に迫る死を諭した矢先。プレデターが突撃してくる際に踏み込んだ地面が崩れ落ちた。


 落とし穴だ。


「ガルルァッ?!!」


 プレデックにしては珍しく、幸運が味方に付いてくれた。だが、それも束の間。

 大きな音を立てて落とし穴に落ちる仲間を、ロッドを取り巻くプレデター達が一斉にプレデックの方へと向き直った。

 赤子だからそこまで脅威を感じなかったのだろう。でも、実際はその赤子を追いかけた仲間が驚きの声を上げ落とし穴に落ちたのだ。

 一部始終を知らないプレデター達はプレデックが魔法でも使ったように見えたに違いない。


 プレデックに脅威の目を向けると四匹が様子を伺うように遠くから現場を眺めている。そして何を思ったのか、今度は殺意を瞳の奥に宿らせると、四匹がプレデックに向かって突撃してきた。

 無謀な彼の知る限り、落とし穴含めた罠は一つしかない。罠にはまったプレデターは悲鳴をあげながらなんとかその場から抜け出そうとしている。


 状況は最悪、四匹のプレデターが震えるプレデックに襲い掛かるその瞬間。


「オイウル・ブレイドファイア!」


 聞き慣れない詠唱がその場に響いた直後。襲い掛かるプレデター達の首根っこを、複数の炎で形作られた剣が何本も突き刺さった。突き刺さった炎の剣の光が急速に増していくと、圧倒的な力の渦が空気を吸い込み大爆発を起こした。

 土煙が舞い上がり。視界が遮られ、周囲を確認できない。


 ゴポッ……。


 土から何かが這い出るような音が何処からか聞こえると。獣の足音がすぐ近くで聞こえた。音には戦意が感じ取れず段々とこの場から離れていく様に遠ざかっていった。


「おほう、一匹逃げられてしもうたのう」


 土煙の中から聞き覚えのある声が響いた。


(ジジイだ!)


 煙が晴れると意識を失っているロッドの腕を、自身の肩に回し担ぎ上げながらアルメロは周辺を見渡した。プレデックを視界に入れた途端、たった今ロッドを担ぎ上げる仕草をしたのにも関わらず、肩に回し引き上げた彼の体を投げ捨て、プレデックに向かってアルメロが両手を広げて走りよってきた。


「おほ~う! プレデック~。生きてたんじゃなぁ~こんなにぼろぼろになりおっ――て?」


 アルメロはプレデックの目の前にあった落とし穴に気づかないくらい夢中になっていたようで。某夢の国のキャラや有名なネズミとネコの子供向け作品でよく見かけられる、空中で足を掻く仕草をやってのけた。


(この世界ってああいう事が出きるのか。いや、多分こいつだけだな……)


「いてててて~……ワシとしたことがうっかり周りが見えとちょらんかった」


 ヒーヒー良いながら腰に手を当て呟く老人。


(一緒に狩りをしてるときから思ってたけど孫を溺愛しすぎなんだよなぁこいつ……)


 この老人、歳の割に『プレデックを抱くのはロッドじゃなくてワシなんじゃっ!』と、駄々を捏ねていた思い出がある。狩りをしてるときもプレデックに見える様にキビキビ動いてはこちらを見てないかと何度もチラ見をしていたり。アルメロのそんな姿がプレデックに見られていないと知ったときは、露骨にがっかりするくらいには孫であるプレデックを溺愛している。プレデックはアルメロに少し軽蔑の目を向け見下した。


「そんなに見られるとジジイ照れちゃうっ……//」


 そんなことを言い、頬を赤らめるアルメロ。プレデックの内心彼に対しかなり、


(気色悪い……)


 老人相手にかなりきつめな評価をするプレデック。だがこの老人はかなりの実力者であるのではと考察を始めていた。


(さっきの魔法、ジジイが放った剣の魔法が爆発して熊を粉々にしてたけど、宝石だけは破片としてそこら辺に散らばっていて地面に突き刺さっているな)


 もちろんプレデックの後ろにも。奇跡的に当たらなかっただけで、下手したらプレデックはここで死んでたかも知れない。考えただけでゾッとする。ここでも普段味方をしてくれない運が回ってきたのだ。


(今日は何回死線を越えなきゃいけないんだ……)


 そう思いながらも心の底では脅威を追い払ったことに安堵していた。


「さて、そこで干上がってるロッドを連れて家へ帰るとするかのう、プレデックも疲れたじゃろうに……今はワシの腕の中でゆっくり休んでると良い……」


 そう言いアルメロはプレデックを右腕で抱き抱えロッドの左腕を再度肩に回した。


(やっとこの激戦も終わった……)


 今は夕刻。プレデターと遭遇したのが昼過ぎなので大分長きに渡って死闘を繰り広げていた。一匹取り逃したのはプレデックにとっては少し心残りではあったのだけれども、


(もうあいつとの対面は勘弁だ…家に帰ってゆっくり寝よう……)


 どっと疲れがのしかかる帰り道。毒気が一気に抜けていき、アルメロの腕でプレデックはいつの間にかぐっすり寝てしまっていた。



 ▲▽▲▽▲▽▲▽



 …………ラン……カラン。


 玄関、この家の入り口の扉に付いている鈴の音が聞こえ、プレデックの目が覚める。


(う……ん…………、ふわぁ~……寝た寝た、うっかり家に着く前に寝ちまった……)


 部屋の中が明るい。昼位だろう、大分長い時間寝てしまっていたようだ。


 グゥ~。


 腹の音が鳴り、プレデックは食事を求めてゆりかごからゆっくり這い出た。


「あらあら、お腹を鳴らして起きるなんて食いしん坊さんね、今から食事の用意をするからゆっくり待っててね」


 顔を擦りながらよちよち歩き、木材で作られた机に向かう途中。ロッキングチェアに座り今の一連を見ていたレイミーがそう言い、声をかけてきた。

 レイミーはプレデックの様子を見ると編み物を中断して椅子から離れた。厚手の服の上からエプロンを着るとキッチンに向かっていく。

 プレデックはレイミーの言うことを聞き。椅子に座る。ちなみにロリオネル家の椅子は高く、今のプレデックには椅子一つ上るのにも全身の筋力を使うくらい高い。

 レイミーはせこせこと料理の準備を始めてる。


 レイミーが料理の支度を済ませていくのを椅子に座り、机越しに眺めて待っていると、プレデックは玄関入り口、扉の前に木箱が置いてある事に気がついた。


(なんだあれ? ここからだと中身がよく見えない……)


 頑張って背を伸ばし、上から覗こうとするがそれでも中身が見えない。


(せっかく頑張って椅子に座ったのにまた降りるのか……)


 角度的に見えない木箱に興味が湧いてしまい、プレデックは椅子から降りると木箱の前に立った。目の前にしてみると自分と同じほどの高さがあることに多少驚くが、すぐに順応するとプレデックは木箱をよじ登り上半身を出し、中身を見下ろし確認した。中には瓶に何か液体を入れた物が何本かある。


 その隣には中身の見えない謎の皮袋。そして木箱を半分ほど占領する3つの本。本の背表紙にはこの世界の文字で魔法概念。ミニアルクラス魔法、イミイルクラス魔法と3つ、それぞれの本にそう書いてあった。


 カランカラン。


「おっ、起きたのかプレデック。心配したんだぞ」


 扉が開く音が聞こえプレデックはそこに目を向けると、ロッドが所々に包帯を巻きながら上裸でもう一つの木箱を下ろしてそう言ってきた。

 ぱっと見プレデックよりも心配された方がいい状態な気もするが、それを思わせないくらい元気な姿がそこにはあった。


(こいつ……昨日あのあと血まみれで気失ってたのにもうそんな動けんのかよ)


 そんなことを思いながらもロッドが下ろしたもう一つの木箱が気になりプレデックはそちらに目を向けた。


「ん? 中身が気になるのか?」


 言いながらロッドはプレデックの脇に手を通すと抱き抱え、腰を下ろして箱の中身を見せてくれた。ロッドが持ってきた木箱の中身は果物っぽい物と、ここにも謎の袋だ。しかもさっきの木箱の中の袋よりでかい、あとは衣類。


「これはな、クダンって言う果実でな、めちゃくちゃ美味いんだぞ」


 クダンと言う果物に指を指してロッドが甘い表情を浮かべた。


(うん……パッと見ドラゴンフルーツだけど色が違うな。濃いめの青色をしててこっちの方がドラゴンっぽい)


 腐ってるのではないか、そんな疑問が浮かび上がってくるが今は他の物も気になるためプレデックはこれを後に回すことにした。


「そしてこれがプリケツってやつでな、真ん中にでっかい種があってな?、他の果実と違って食べられる部分が少し減るが皮を向いて食べるとこれがまぁ美味いんだ」


(アウトだな……イントネーションこそ違うが桃の事をプリケツって言うのはさすがにセンスがイカれてる)


 確かにこの世界の桃は地球の桃よりワレメがしっかり入っているが、そのまんま名前をいれるのはさすがに人としてヤバイ。そう思うプレデックは名付け親をひどく軽蔑することにした。


(これを名付けたのは絶対これに発情した男だなうん)


「でこれは飛ばしてっと、これはチンってなま――」


「あらあら、ロッドさん。プレデックにお勉強させるのはいいですけどあまり間違えすぎた事を教えない様にしてくださいね? プレデック、ご飯が出来ましたよ」


「はい……」


 ロッドが衣類を飛ばしてバナナのような見た目の果物に向かって変なことを教えようとすると。レイミーが背中から鬼のような気配を醸し出してロッドの暴走を抑制した。ロッドは青い顔をすると、今まで元気に説明してた彼はいつぞやの様に語気が弱くなり非力な声が代わりに返事をした。


(しめた!)


 プレデックはそんなロッドを少しいじめてやろうとニヤッとロッドに悪い笑顔を向けると。


「チン……チン! …………チンっーー!」


 喃語でそう言いながら笑顔でロッドの胸から降り、レイミーの用意した机に向かった。ロッドのおふざけで教えてきた名前を連呼しながら、プレデックは椅子に座った。ロッドはプレデックの一連の行動に表情を真っ青にして固まっていた。


(そんな顔するなよロッド。桃じゃなくてバナナで止めに入る辺り、ババアも止めるのが遅い気もするが……気にしないでおこう……)


 多少の同情を向けるプレデックは、心の中でロッドをバカにするようにほくそ笑んだ。


 ――後日プレデックは、桃がこの世界では本当にプリケツと呼ばれているのだとレイミーから聞かされた――


熊さんとの長い戦いがようやく終わりましたね!

主人公も最後まで諦めなかったためここまで報われたのかもしれませんね!そして主人公はロッドが持ってきた木箱の中のラインナップに一つ嫌な予感を覚えますがそれは一体なんなのでしょうか?


次話はいよいよ主人公の容姿が発覚!?ロッドが持ってきた木箱の中身の嫌な予感とは?!

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