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転生したひねくれ者は二度目の人生をどう送る?  作者: すり寄る玉の輿
幼児期
3/30

経過▲▽プレデター

 

 プレデックがこの世界の疑問を抱いてから約4ヶ月。


(やはりここは地球ではない別の世界だった)


 あの日あの後、ロッドからいろんな童話を聞いてプレデックはそれを確信をしていた。

 そして、その童話のいくつかが事実だったことにも驚いたようで、この世界は地球とは違う性質の星らしい。童話の内容は地球にある物とは全く違い、どれもプレデックには聞き覚えのないものだった。


 そして、この4ヶ月の間でプレデックは物伝いで歩けるようになっていた。本気を出せば自力で歩くことが出来るみたいだが、尋常じゃない疲労に襲われるためあまり積極的にはしていなかったようだ。


 疑問を持ち初めたその日、ロッドはあの後付きっきりでプレデックをあやしていた。子供だから仕方はないのだがプレデック自身かなりあれでストレスが溜まっていたようで、子供ではあるが子ども扱いをされたくないという身体と心情が子供としての背反に悩まさせられていた。

 特にロッドのアホ面(変顔)効果はひどく、プレデックの血糖値上昇量の上り幅がえげつなかったそうだ。


 そしてその間にプレデックはこの世界の歴史を少し知った。なぜ少しなのか、それはロッドの聞かせる話の内容が全くと言っていいほど面白くなく、かつ話が長くてプレデックが途中で何度も寝てしまうからまともに頭に入ってこないのだ。

 プレデック自身前世でも学校の授業が面白くなく何度も寝ていた思い出があり、ロッドの話はそれに近しい感覚があったのだろう。


 ロッドの聞かせてくる歴史の話は童話とは違く、タイトルは魔王と勇者というもので、この世界には魔王がいるらしくその魔王と勇者の関係が描かれた物語だそうだ。どうやら、この物語は今のプレデックのいるこの世界が出来上がるために起きた、一番最初で最恐の無二の出来事だったらしい。


 これがプレデックの知ったこの世界の歴史の少し。

 具体的には知らされていない、プレデックがすぐに寝るのでロッドがとても分かりやすく簡略化してくれたそうだが彼曰くこれはほんとにおおよそだそうな。


 プレデックは童話の中の単語で、魔法やら魔術やら妖精やらが出てきたことを覚えてるが事実ならまさにファンタジーな異世界ではないかと胸を高鳴らせたりもしていた。

 が、そんなファンタジーな異世界でプレデックはおじさんにあやされゆりかごから天井しか眺めれてない。


(なんだろう……赤ちゃんってこんなに暇なんだな、ここまで意識がしっかりしてると暇でしかたねぇ……)


 ロッドは週に1~2回のペースでやってくる、プレデックに会っては甘い表情を浮かべて色んな童話を読み聞かせてくれた。


 ロッドはその中に毎度かなり子供には難しくつまらない内容の長い物語を聞かせようとしてくる。そう、魔王と勇者だ。よほど聞かせたいのか次の話を持ち出してきたと思ったら毎度これなのだ。

 隙あらば聞かせてくるロッドに対しプレデックは毎度話の序章でわざとらしく寝入っている。両者のそんな攻防にロッドはいよいよ音を上げ聞かせようとはしなくなった。


 そもそも、この魔王と勇者という作品、話が難しいのだ。とてもじゃないがプレデックのような歳の子が聞いて理解できるものではない。


(あれ……こう考えるとロッドの脳ミソのミソ濃度がかなり希薄いのでは?)


 と、むしろ子供より理解力がないのではとプレデックは思い始めていた。


 そして、この四カ月の間に何度かロッドとアルメロが一緒に狩りをするのを見学したりもした。

 最初まではレイミーがプレデックを一緒に連れて行くのに賛成をしかねていた。だが、暇で仕方がなかったプレデックは、ロッドのズボンの裾を摘まむとそれを見たレイミーが白旗を上げ観念した。


 そして狩りの中不思議な力、魔法だと思われる力を駆使して動物を捕まえるところを何度か見かけたプレデック自身、この力の存在が魔法かどうかはまだ確信を持てていない。


 だが、狩りをするときロッドは普段のお茶らけた態度とは裏腹に、真剣に獲物を捉える姿はプレデックに素朴な関心を抱かせた。息を殺し、確実にかつ華麗に獲物を仕留める光景には、例えその職の基幹を知らずとも一連のロッドの動作には凄味があると語らせる。

 素人のプレデックでさえその時のロッドが今までとは別格の事様だとわかるくらいには既に何度も目が惹かれている。

 ひねくれ者のプレデックでさえ難癖を付けられないくらいだ。


 そして今日はロッドとアルメロが共同で狩猟をする日だ、いつも通りプレデックもつれていってもらう。



 ▲▽▲▽▲▽▲▽



 ロッドはいつもの通り息を殺し押し黙ると殺気さえも潜めいつもと違う鋭い眼光が、草木を食べる鹿を捉えると力いっぱいに矢を射いた。

 放たれた矢が一直線に進み鹿の急所に刺さると少し身悶えした後ゆっくりとその身を地面に預け絶命した。


 プレデックは現在、ロッドの胸に吊り下がるように肩に掛けられた、布で作られた抱っこ紐に斜めに寝込んでいる。要約するといつでもロッドの乳が吸える体勢だ。


(やっぱこの態勢きついな……)


 正直おっさんの胸を借りるのはなかなかにキツイ。だがこれを拒めば家で暇をするしかない、かつ自身の配られた選択肢が少ないためこの態勢は妥協せざる負えなかった。


 選択肢が少ないとは、家に残るかアルメロの胸倉に移動するかのどちらかだ。勿論、プレデックはいつ死ぬかわからない老人の乳なんか尚更嫌だ。そういうわけでプレデックは渋々ロッドの胸を借りることを選んだのだ。


(一回だけ……ジジイの胸で過ごしたことがあるけど…いやぁーあれはきつかった……)


 プレデックは一度、アルメロの胸を借りたことがある。だが、その時はアルメロの加齢臭が強すぎた故にもう二度とこの老人の胸は借りないと覚悟を決めていた。


 ロッドが獲物を仕留めるのとは別のところで鹿と猪の二匹を仕留めたアルメロがやってきて二匹を家に持ち帰っていった。


「プレデックも弓を引いてみるか?」


 かれこれ三十分、アルメロが帰ってくるのを罠を仕掛けながら待つロッドがそうプレデックに尋ねた。


(言葉も話せない赤ん坊にそのサイズの弓を引いてみろと?)


 ロッドの冗談めかした問いかけを本気で受け取るプレデックはいよいよこの男の頭の出来が心配になってきている。

 そんなふうにプレデックはロッドを悲哀を込めた目で見つめていると、


「!」


 異変を察したロッドが顔を上げ正面の木々を訝しげな目で見つめ始めた。状況を理解した様子のロッドの額を汗が駆け走る。表情をより一層険しくするとロッドは大きく息を吞んだ。


「おいおい本気かよ…プレデックと居る時、しかも、アルメロおじちゃんが家に動物を置きに戻ってる時に限ってこの森の魔獣のぬしのお出ましかよ…………」


(魔獣?初めて聞くがこの世界には動物と違って魔獣が居るのか)


 動物とどう違うのだろう、やはり他の生き物とは違う少し異形な形をした生物なのか。ロッドとは対照的に状況を甘く推察するプレデックはそんな呑気なことを考えていた。


 ドスン……ドスン…………。


 骨の真まで響かせるような重い足音が木々の奥から鳴り響くと魔獣のぬしが近づいることを知らせた。


「…………なあプレデック。良いことを教えてやるよ。俺たち狩人は……いや、この世界では魔獣のぬしのことをプレデターって呼んでるんだ……そしてそのプレデターの強さは一匹につき最低でも王国の兵士四人は絶対に必要なくらいなんだぜ」


 プレデター、その誇張しすぎたようにも思えるほど見識に見合うくらいでかい生き物が今、木々一端から姿を現した。


(マジ…かよ…………)


 この時プレデックは、目の前に現れた生き物がプレデターなんてそんなかわいい名前で収まるようなものではないと、そう判断せざる負えない程に、ただひたすらに、目の前に立ちはだかる怪物染みた生物に対し適切な名づけを見付けることができなかった。


 目の前には迫力大満点、六メートルは優に越える背中や足に鉱石を生やす特徴的な体躯をした、そんなあんまりに特異で異質な生き物が、殺意の宿った鋭く赤い瞳を放つ巨体な熊が、うめき声とすさまじい轟音を発しロッドとプレデックを見つめていた。


 プレデターと呼ばれる化け物が木々から一閃する眼光が六つ。


 ──計三頭が勢いを乗せた吶喊(とつかん)と共に姿を見せた──


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