死屍に鞭打つ
伍員は平王の体を鞭でひっぱたいた。
ボスっという鈍い音がした。
顔を上げて女たちと兵士に言った。
「笑え」
誰も声を発しない。
鞭で石畳をひっぱたいた。
「笑わないか!」
あちこちから緊張したような笑い声が起きた。伍員は乾いたような笑い声の中で平王の体を力まかせら打ち続けた。
そのうち二の腕の筋肉が痛くなってきた。それでもかまわず打った。全身から汗がふき出る。額から汗がたらたら流れた。ついに続けることができないくらい疲労した。しかたなくしばらく打つ子とを止め、呼吸を整えた。体力が回復すると、再び鞭を取って平王の体を打った。打っているうちに、平王の着せられている着物がずたずたに破れた。いつの間にか笑い声を上げているものは誰もいなくなった。
しかし平王の眠っているかの表情は、まるで変わらない。変わるはずがないことはわかっている。しかし自分が馬鹿にされているような気がしてきた。自分が夢見てきたのは、平王が泣き叫び、命乞いをする姿だ。しかし平王は口元に笑みを浮かべ、まるで楽しい夢でも見ているようにさえ見える。鞭を上げて、その顔を何度も打った。ついに皮膚が破れ、表情が消えた。と同時にぱっと白い粉のようなものが舞い上がった。それを見た瞬間、これが平王の体ではなく、ただのぼろ布のように思えてきた。
「くそっ!」
平王の顔を思い切り蹴った。しかし当たり所が悪かったのか、足の指にズンと激痛が走った。
「おのれ!」
今度はかかとで思いきり顔を踏みつけた。
数日後、これに立ち会わされた女たちと兵士は、すべて拷問の末に殺された。