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東門の眼  作者: 恵梨奈孝彦
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千載一遇

 その時、扉を激しく叩く音が聞こえた。

「王! そこにいらっしゃるのですか!?」

 平王が喉から絞り出したような声を出した。

「助けてくれ! 殺される!」

 王の家来が、宮殿から王がいなくなったのを見つけて、心配してさがしに来たらしい。王にこの場所を教えた子供を責めてここを聞き出したのだろう。

「王! 開けて下さい!」

「今押さえつけられている。この扉は中からも開かないんだ!」

「余計なことを言うな!」

 伍員は拳をかためて平王の頭を思い切りぶん殴った。

 その時、外からこんな声が聞こえてきた。

「おい、もっと人数を呼んでこい! 誰でもいい。とにかく力の強そうな男に金をやって連れてこい。とにかくこの扉をぶち破るんだ!」

 伍員は、一瞬どうするべきか迷った。せっかく復讐の機会が巡ってきたのに。あとほんの少しの時間があれば、七年間やりたくて仕方がなかったことをなし遂げることができたはずだった。しかし、鍵こそ頑丈に造ってあるが、扉自体は粗末なものだ。数人がかりで体当たりをされれば、蝶番のほうが外れてしまうだろう。

「くそっ」

 もう一息で復讐が完成するというのに、再びあの屈辱の日々を過ごすのか? しかしこのままではもうすぐ王り家来たちがここになだれこんでくる。自分がなぶり殺しにされてしまう。復讐を完成することができないまま、二度目の屈辱の中で死ぬのは耐えられない。

「くそっ」

 もう一度後頭部をぶん殴ってから、平王の体を放した。そのまま部屋を走り抜け、窓を破って外に飛び出した。

 伍員は闇の中を走りながら考えた。

 もう平王を城の外におびき出すことはできないだろう。しかし復讐をあきらめることはできない。ならば、今度は正攻法だ。呉と楚を戦争させる。楚を戦争によって破り、平王を殺す。再び復讐の機会を待つことになるが、今まで七年間待ってきたのだ。

 楚王が苦しみ悶えて死ぬさまを、かならずこの眼で見てやる。

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