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覚悟
七年前のことである。
ある夜、伍員は父親の主君である楚の平王から突然宮殿に呼び出しを受けた。
すでに父の伍奢は召喚されたまま帰ってこない。まわりの人たちはみな「どうせ殺される。行くな」と言った。「伍奢はもう死んでいるだろう。わざわさせ殺されに行くことはない」
しかし、もしかしたら父を救うことができるかもしれない。その可能性があるにもかかわらず、逃げることはできない。
そんな悲壮な覚悟を決めて、伍員は宮殿に出かけた。
おそらく平王は、父も自分も殺すだろう。自分を生かしておけば、父の仇を討とうとするに決まっているからだ。しかしそれでもかまわない。たとえ犬死することになっても、自分は不孝はしない。
少年ながら、伍員はそう思った。