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東門の眼  作者: 恵梨奈孝彦
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伍員

 夜更けである。男が一人で椅子に座っていると、背の高い男が一人、扉を開けて入ってきた。

 背の高い男は彼の顔見て驚いたようだった。

 彼は入ってきた男に声をかけた。

「まあ、つっ立ってないでおかけなさい」

 入ってきた男は彼と机をはさんだ椅子に座りながら不機嫌そうに言った。

「なんだおまえは」

 彼は椅子から立ち上がって扉の方に歩き、くるりと向き直りながら言った。

「楚のような大国の王がたかが子供ひとりのためにこんな粗末な家にお渡りとは、よほどあの子にご執心と見える」

 男の顔色がさっと変わった。

「馬鹿な。わしは楚王などではない」

 彼はもとの椅子に座りながら言った。

「勝がいつまでも宿下がりをしているのに我慢ができず、わざわざ供も連れずにこんな所までやってくるとは、そうとう熱を上げているわけだ」

「何者だおまえは! 勝はどこにいる!」

「勝はここにはいない」

「なんだと?」

「おまえは勝の連れていた童から、うまく勝の居場所を聞き出したつもりだろうが、おまえはこちらの思わくどおり、ここにおびき寄せられてきたわけだ」

 男は叫んだ。

「おまえは何者だ!」

「勝はは七年前おまえに殺された、白公の息子だ!」

 男はさらにかん高い声で叫んだ。

「おまえは何者だ!」

「覚えているだろう。おまえは王太子が自分を危うくするのではないかと疑い、自分の息子を殺した。そしてそれを諫めたわが父、伍奢と勝の父白公を殺した。

 そしておれは、父とともに宮殿に召喚され、おまえに、口にするのもおぞましいようなはずかしめを受けた、太傅伍奢の子、伍員胥だ!」

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