9千年ぶり?
昨日の分です。今日もまた投稿
世界各地に、古代遺跡は眠っている。
専門家が言うには、まだ半数以上発見されていないものがあるだろう、とのことだ。
数多くある遺跡の中でも、水中遺跡や樹系遺跡、海底神殿は特に珍しい。
水中遺跡は今の所一つしか見つかっておらず、各国より厳重に保護されている。
海底神殿は辿り着くのが難しいため、見つけるのに一苦労。今の所、2つしか発見されていない。
樹系遺跡は、かつて起こった世界大戦にて消失してしまい、現存しているものはないとのことだった。
それをどうやら、アラスさんは見つけてしまったらしい。
かつて存在した樹系遺跡は、ひと目見れば明らかに遺跡だとわかるような作りになっていたらしいのだが、今僕らの目の前に聳え立つ大木は、やはり立派な大木にしか見えない。
「これが、遺跡...?」
「うん。ほら、古代魔法独特の魔力の流れを感じるでしょ?」
「うむ、この辺りの精霊もかなりの古参。古代文明の名残のある者達ばかりだから、遺跡で間違いないだろう」
なるほど、わからないけどわかった。
つまり、現代っ子と明らかに違うオーラを持った老人方がおられるから遺跡だろう、と。
若い精霊は遺跡には集まらないのね。
「はい、ここで『アラヴァザの石』の出番でぇす」
そう言って木の根元周辺の土を重力魔法で浮かせた。
重力魔法ってかなり制御が難しいはずなんだけど...この人無詠唱・無魔具補助で自然に発動してるの、おかしいと思うんだよね。
もう、全体的におかしい。
アラスさんが土を浮かせた事で、木の根が顕になった。
その根は歪で、全ての根が網状に絡み合って規則的に大小の網目を作っている。あまりにも不自然。
こんな細い根でこの大木が支えきれるはずがない。確かに、これは普通の木ではなさそうだ。
「ラウフ、どれが正解?」
「うむ、ここだな」
そう言って精霊大王は無数にある網目の一つを指差す。とくに特徴があるわけでもない。他と何ら変わりのない目だ。
もっと大きい網目だってあるし、小さいのも、歪な形をしたのもある。
『ハズレ』も『正解』もなんのことかサッパリだが、その『正解』というのがこんな、他にも同じような目が沢山あるようなやつには思えなかった。
「あーりがとさん」
そう、軽く礼を言いながら箱から取り出した『アラヴァザの石』を取り出し、その網目にはめた。
すると、周りの根が動き出し、石を覆ったかと思うと、その根が元に戻った頃には『アラヴァザの石』は消えていた。
「え、国家財産...」
なんていう、平民感丸出しの呟きしか出てこなかったのはしょうがないことだと思う。
「だーいじょぶ大丈夫。一兆ラーツなんてその気になればすぐにでも稼げるし、まだまだお金は残ってるから」
なんか、言いたいことはわかるけど、そういう問題じゃない気がする。
うん、まぁ所詮平民の僕とは感覚が違うよね。うん、しってた。
平民のなかでも割と裕福な方だとは思ってたんだけどね。
「さぁ、行こうか」
そう言うと、アラスさんは木にそのまま真っ直ぐ歩いていった。
ぶつかる!!と、そう思った頃にはアラスさんは木の中に入っていた。
「ほら、はやくおいでよ」と、手招きされる。
木の幹から手だけだして手招きをするのは少し控えていただきたいところだ。
なかなかにシュールだし、なかなかに...幽霊感が......。
手招きの速度が落ちていくにつれて幽霊感も増していっている。ちょっと幽霊苦手なんだよな()
「幽霊。」
意識してやってたのかよ!!もう、なんなのこの人!!
ムッとした勢いで僕も木にむかって突っ込んでいく。木が近づくにつれ、不安が芽生えたが僕の体は難なく通過。
大木の中はオレンジの灯籠がつってあるが薄暗く、少し肌寒かった。
いかにも幽霊が出るぞ、という雰囲気。
「ばぁ」
「うわぁああああああああああっっっっ!?」
上から何かが落ちてきたと思い、幽霊だ!!とパニックになって騒いでいると、背後からスゥッと凍るような冷たい風に首筋を撫でられ、ついに恐怖で涙目になっていると、聞き慣れた二人の笑い声がこの木の中の空間に響いた。
「みたか?よわ坊め、我が『ばぁ』と眼の前に現れただけでギャアギャア騒いでおったぞ!クククククっ!愉快愉快!!」
「ははははっ!!ちょっと魔法で弱〜い風吹かせただけなのに泣きそうになっちゃって!もしかしなくても幽霊苦手??(笑)」
「苦手ですよ!!もう、大の大人がそんな大人げないことしないでくださいよ!!精霊大王様はともかく!!」
「なぬ!?なぜ我はともかくなのだ!」
「普段の言動が小学生なんです!」
「ぐはっ!さっきのはクリティカルヒット...」
「もう、行きましょう!!幽霊とかもう辞めてくださいね!」
「「りょうかい...」」
しゅん、と犬の耳がたれているのが見えそうな具合に大人二人が落ち込みながらとぼとぼ僕の後ろを歩いている。
なんで僕が先頭なの...?
大木の中は少し広い空間になっており、下へ降りる細い階段があった。
それを降りていくと、長い通路になっており、一本道なのでそのまま突き進む。
ねぇ、なんで僕が先頭??
特に何事もなく歩いていると、不意に何かに足を掴まれた。
まさか、また幽霊とかいって遊んでいるのか?などと思っていると、アラスさんが飛び出してきて、僕の足元に炎魔法を放った。
「ラウフ!封印!!」
「うむ!」
何が起こったのか解らず呆然としていると、精霊大王がご親切に説明してくれた。
どうやら、僕は木の根に足を捕らえられたらしい。
この遺跡の罠でもないらしく、『異物』の仕業だと言っていた。
「この遺跡に属さない『異物』のしたことなのはわかったのだが、それがなにかはわかっておらぬ。少なくとも今は、な。少し配下に調べさせておくから安心せい」
急に王様感出してきたな、残念美少年。
一度言ってみたいよ、『配下に調べさせておく』とか。 なんだかんだ言って頼もしいんだよね。
「うん、遺跡に属さないものへの対処は遅れてしまうだろうから、そっちはラウフに任せていいかな?俺は遺跡の方に集中したいからさ」
「もちろんだ!任せておくがよい!」
あ、今まで特に何もないまま来れたのってアラスさんが対処してくれていたからだったんだ。
なんというか、やっぱり流石だなぁ。
言動が大人げない時もたまにあるけれど。
そうして、遺跡の方はアラスさん、『異物』は精霊大王が対処してくれ、僕は特に何もせず至極安全に薄暗い広間にたどり着いた。
所々に天井から光が差し込んでいる。
中央には、人影のような何か。
「あれ、あれれ〜?ラウじゃん!おっひさぁ〜?」
そう言ってその何かは不気味に、静かに笑った。
そして光のもとへ一歩、踏み出た。
「元気、してたぁ?」
ラウ、ってラウフか。名前省略好きが多いなぁ、僕の周りは。
そんな少し場違いな事を思いながら精霊大王の顔をちらり、と見てみると―――
普段の傲慢的な態度からは想像のできない、血の気の引いた表情になっていた。
「あ、あ...な、なぜ......?なぜこんなところに...?あ、あぁ、だから...我でも正体が掴めなかったのか...」
完全に動揺していたが、なにかに納得しているようだ。
あの精霊大王を、姿を見せるだけでこんなにも動揺させるこの人物って一体―――?
「9000年ぶりかなぁ?俺のこと、忘れてるわけないよねぇ??」
「も、もちろんだ―――
兄上。」
兄上こんな早く出す気はなかったんだ...
ほんと、なかったんです...
ただ、ちょっと出したい衝動に駆られて()
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追記:サーバーの混雑エラーに引っかかって投稿遅くなりました