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7千万ラーツ。

「ぉぉおおおおおおお!!!少し前まで小さな町だったのに、物凄い発展ぶりだな!」



 転移魔法で帝都についた途端、精霊大王がはしゃぎ始めた。

 小学一年生の遠足につきあわされている気分だ。こういうのは本業の方を引っ張ってきて相手をしてもらったほうが...。



「『少し前』って何百年も昔だろう。この前1300年間人間の国を覗いていないって言ってなかったっけ」


「ほんの1300年だろう!!」


「君何歳?」


「忘れた!この下り週イチでやっておるぞ?」



 週イチでやってるんだ。飽きないのかな、この人達。

 そうワイワイとしながら、目の前の黒い大きなドーム状の建物に入る。



「あ、ちょっと大人しくしてて」



 そういうと、アラスさんは入り口付近に立っている若い男性に紹介状を渡す。



「サイラス・ファラエノプシス様とお連れの方々ですね。お席はこちらのA−16でございます。席へはそこの案内スタッフがお連れしますので、どうぞあちらへ」



 アラスさんは男の人から席の番号の書かれた紙を受け取ると、案内スタッフのいる場所へと向かう。

 案内スタッフの女性は僕ら2人が追いついたことを確認すると、魔法陣の描かれた小さい紙を取り出し、足元に落とした。

 すると、白い転移魔法陣より一回りちいさい、白とオレンジ色の混ざった魔法陣が現れ、景色が移り変わった。

 どうやら僕らは2階の特等席にいるようだ。



「それでは、良いショッピングを。」



 そう言い残すと、先程と同じ手順で案内スタッフの女性は戻っていった。

 オークションをショッピングって呼ぶのにはなんだか違和感があるけれど、まぁ間違っていないしなぁ。

 いや、でもショッピング...?城が建つような大金動かしてショッピング.........?違和感。



「ほぉ、融合魔法か。アラス以外に使える者がいるとは驚きだな」


「え?どういうことです?」



 まるでアラスさん以外は使えなかったような。

 でも、融合魔法なんて初めて見たし、初めて聞いた。

 僕の知識が足りないだけだと思うけど...



「ほんの昔まではアラスしか使えていなかったのだよ。まぁ、開発者がアラスだったから当然だがな。

 あの者もかなりの強者だろう。それでも、融合魔法というのは極めて難易度が高い。細部まで計算し尽くし、少しの誤差も許してはいけない。少しでもミスをすれば―――」


「すれば?」


「四肢が吹き飛んでいたであろうな!!我らに被害は出ないよう結界魔法も発動されてたがな。気が利く気が利く」


「はぁああ!?それをあの人は使ったんですか!?なんでわざわざ!?」


「融合魔法の魔法陣は美しいからな。演出だろう」



 えぇ...なんて思いながら開発者らしいアラスさんに目をやると、「演出だね(笑)」と笑っていた。

 笑えませんよアラスさん。目の前で四肢が吹き飛んでいたかも知れないんだから。考えただけで恐ろしい。



「でも、あの魔法が失敗することなんて万に一つもありえないよ」



 いつの間にスタッフに淹れられた紅茶を優雅に嗜みながらアラスさんが笑った。

 てかスタッフさん来てたんだ。暗殺者並みに気配がないよこのスタッフ。元諜報部隊の人でも雇ったの?あのぐれちゃんさんは。



「あの魔法陣の描かれてる紙は、俺がぐれちゃんに渡した原本を複製したものだからね。ある一定の魔力量があれば誰にだって扱えるよ」



 ミニテーブルに置かれた茶菓子をつまみながら説明してくれた。

 なるほど、原本はこの大天才の俺が描いたものだから失敗はありえない、と言うわけですね。なるほどなるほど。

 じゃあ僕にも使えるのだろうか?



「勿論カイ坊も使えるよ。あいつの子供なだけあって魔力量は半端ないからね!」



 やっぱりこの人エスパーだ。

 それより、僕って魔力量多いんだな。初めて知った。

 魔力量を測るのは学校に入ってからなので、まだ一度も測ったことがないのだ。

 僕が入学する際に楽しみにしている事柄の一つでもある。


 『あいつの子供』の部分はスルーだ。



「皆様、大変長らく御待たせ致しました。これより、第5回アータイルオークションを始めます!まず始めにアータイル商会会長、グレゴリー・アータイルより御挨拶の言葉を―――」



 グレゴリーさんがスポットライトへ歩み出て、“主催者の挨拶”をはじめた。

 これほど有名で大規模なオークションだから何十回も開いているものだと思っていたけれど、そういえばアータイル商会が設立されたのはほんの二十数年前で、オークションは4年に一度なので二桁も行っていないのか。

 そう考えると、ほんの数十年で交易の頂点を牛耳るまで成長したというのは、やはりとんでもないことなのだろう...などと、色々考えている内に挨拶が終わったようで、メインに移りだした。



「それでは皆様、お手元にある番号札をお取りください。本日の最初の商品は―――こちら!!北海の海底神殿にて見つかった神秘の魔導書(グリモワール)!お値段は1000万ラートから!」



 ラートというのはこの大陸の共通の通貨名だ。1000万ラート―――約10億円―――で普通の魔導書(グリモワール)を50冊は買い込めるだろう。

 魔導書(グリモワール)は古代文明の物しかなく、今の魔法技術では作ることができない。

 故に、『普通』の魔導書(グリモワール)でもかなりの値段はするのだが、有名かつ珍しい海底神殿で見つかった魔導書(グリモワール)となるとその値段は更に跳ね上がる。


 神秘の魔導書(グリモワール)か...少し興味があるな。魔導書(グリモワール)を解読できれば古代魔法が使えるようになるかも知れない。



「あ、そういえばあの神殿から持ち帰った物あのアホにほとんど渡してたね」


「あー、あの時か。なんだか懐かしいな。最後の海蛇竜(ナーガ)の時我が助けに行かねば危ういところだったな!」


「何いってんの。あれはお前が遊びたいって駄々こねてたから、優しいミヤっちが『出してあげよーよ?』ってエンジェルスマイルで言ってきたから渋々出してやったんだよ。」


「だ、駄々などこねてはおらんぞ!!」



 2000万、7000万と値段が上がっていく商品のことはガン無視で何やら横で戯れていらっしゃる。今日も仲がよろすぃい事で。先生は嬉しいです。

 この人達、本当に凄いんだけど普段の言動が残念なせいで時々この2人がスゲーってことを忘れてしまいそうになる。いかんいかん(語彙力)



「アラスさん、あの魔導書(グリモワール)はいいんですか?」


「あぁ、あれはもう熟読したからいいや」


「解読済!?まさかの!?しかも熟読!?」



 どういうことだ?アラスさんの前の職業を聞いてみた時、普通にはぐらかされてしまったけれど、古代魔導具鑑定に携わる仕事でもしていたのだろうか...?



「あれ拾ったの俺だし。魔導書拾ったら、読むよね。熟読するよね。」



 わからない!!全くわからない!!



「拾ったってことはつまり、その、」


「アラスがあの海底神殿を攻略したからな!」



 なぜか威張っ――誇らしげに教えてくれる精霊大王。なんで自分の事じゃないのにそんなに誇らしげなんだか...

 海底神殿を攻略...たしか、家の屋根裏にそんな感じのことが書かれた記事が保管されてあったはず。家に帰ったら確認してみよう。


 「わかりました、もうなんでもありですね」と精霊大王の熱いトークを軽く流して眼下で行われている買取戦争に意識を移す。

 二階の特等席というのはかなり見晴らしが良いもので、一瞬で誰が何ラート入札したかがわかる。

 なかなか楽しい席だなぁ。グレゴリーさんに感謝しておこう


 暫く地味な小競り合いが続いたが、突然の100億ラーツの声に場が静まる。

 声からしてかなり若い。驚いて100憶ラーツを入札した人物を見ると、自身の目を疑った。


 001。その番号札を挙げる使用人の横で足を組んでふんぞり返っているのは、僕と年端も行かない少年...いや、少女?だった。服と声からして少年だろう...顔が女の子だが。



「001番、100億ラーツ!100億ラーツです!他に入札する方はいませんか?.........それでは100億ラーツで001番様、落札!落札です!」



 おおお、と静かに歓声が起こった。

 それにしても100億は大胆だな。それほど欲しかったのだろうか。

 まぁ、僕も?ちょっとだけ?ほしかったけどね?

 貯金が足りないよね。圧倒的に。



「お!あの坊主大胆だな!気に入ったぞ!!」


「あぁ、俺もだ!あの子大物になるかさっさと死ぬね!!」



 アラスさん、それ本当に気に入ってるのだろうか...前半はともかく最後。



「むむ?あの坊主、ミヤルの息子ではないか!」


「あれ、ミヤっちって子供いたっけ?ってか作れるの?あのギャル男が」


「ふはははは!お前の気持ちも解らなくはないぞ!だが珍しいな、アラスが気が付かないなんて。カイ坊の方は察知したのに」


「うーん、なんでだろう。まぁ、俺も全知全能の神じゃないんだし。魔力を完全に抑えられたら読む気にならないから放っておくし、お母さんの方の魔力が濃かったらそれこそ解りにくいよ」


「それ、面倒で気にしてなかっただけだろう」


「しょうがないよ、これは。だってあのミヤっちに子供と奥さんだよ?信じられる?あのミヤっちだよ!?」


「うむ、あのミヤルだしなぁ。無理もない、か」



 隣がまた一段と騒々しくなった。

 そして僕はまた話についていけない。ヘルプミー。



「あのー、アラスさん。ミヤっちって?」


「ミヤル・ルコフスキー以外にあるまい?」



 アラスさんに聞いたのに別の方から答えが帰ってきた。

 それより。



 ミヤル・ルコフスキー。



 それは、この大陸を救った英雄の、名前だ。

 そう、英雄の。


 つまり、この2人の話が本当ならば、001番の少年は...






 僕が小さい頃より憧れ続けた、英雄の―――







謎の切り上げ方ですみません!


プロセカでカゲロウデイズとトンデモワンダーズのマスターをフルコンしてその後1時間ぶっ通しでプレイしてたら指がもげまして、慌ててガリガリ君に指突っ込んで冷やしたら次男に白い目で見られ、三男には「兄さんあほやん」と呆れられながら指のマッサージされまして(?)


とにかく色々あって楽しかったです。『自分がいちばん次男』ももう少し『兄さんおもいの三男』を見習って欲しいものです。(なんの報告)



というわけで『プロセカ(弟)おもいの長男』の指の労いに 【ポイント評価】 【ブックマーク】 〚イチオシレビュー〛! どれか一つでもよろしくおねがいします!

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