群れ
俺は、この世界のことを知らない。
エリクシルの世界の月は、1つだった。
俺の今いる世界に浮かぶ2つの衝突した月とは違う。
だから、狼の俺のいるこの荒野とエリクシルのいる世界が違うことはわかるが、それ以外は全くわからないのだ。
俺は、とりあえずレベルを上げた。
レベルが82に上がってからは、象もどきを倒してもレベルが上がらなくなった。
象もどきの肉は大量にあるので、食事には困らない。
レベルは後回しにすることになった。
リリアーナを助けて、7日が過ぎる。
俺は、広い荒野の中で、3匹のレッサーウルフを見つけた。
見るからに食事にありつけていないやせ細った3匹だ。
3匹は生をあきらめており、目をつぶり荒野に横たわっていた。
俺は、見て見ぬふりをすることは出来なかった。
象もどきを倒し、肉を持っていった。
3匹は俺の様子をうかがう。
俺は、一吠えすると肉を置いて、下がった。
3匹は、俺が下がったのを見て、大人しく肉を食べ始めた。
俺は、3匹が肉を食べ終わるのを確認し、荒野に戻る。
ただの気まぐれだ。
気にするな。
そんな意味で、1吠えした。
すると、3匹は嬉しそうに一吠えして、何故か俺についてきた。
…。
彼らには、俺について来いと、言っているように聞こえたのだろうか?
まあ、そんなこんなで3匹を連れて、荒野を歩くことになったのだ。
エリクシルの午後の授業は、召喚獣ステータスという魔道書の作成であった。
「…先生。私の魔道書、変です?」
エリクシルは首を傾げた。
「うーん。ちょっと見せてください。」
小学生くらいの見た目のピンク髪の先生は、エリクシルから魔道書を見せてもらう。
「レッサーウルフの群れですか。珍しいことですが、召喚したレッサーウルフがリーダーとなる群れができたんでしょうね。」
「そうなんですか?」
エリクシルは1匹でも付き合いが大変なのになんで増えるのか…などと思っていたが、笑顔は崩さなかった。
3日、俺は象もどきを狩り、3匹はそれを食べ、体力を回復させた。
回復までさせたが、3匹は弱かった。
獲物を1匹も狩れないのだ。
これは、性格的な問題でどうしようもない。
神経質な太郎。
臆病な次郎。
アホの三郎。
皆、タイプが違うがともかく失敗する。
それでも俺は寂しさが紛れるのでいいそんな感じに考えている。
11日目の朝。
俺の足元に魔方陣が現れた。
そう言えば、前の群れと別れたのは召喚の後だったな。
これで、太郎たちともお別れか。
俺は、何となく3匹を眺める。
…3匹の足元にも魔法陣が現れていた。