悩みとレベルアップ
エリクシル・エアリルの朝は早い。
まだ、太陽が昇っていない時間に起きだし、身支度を整え、散歩にでかける。
今日は学園の近くにある湖まで来ていた。
「…つらいな。」
1人になると落ち込むことが結構ある。
だいたい人間関係で悩んでいる。
基本、1人が好きなエリクシルにとって、この学園は正直つらい。
「昔は特に気にならなかったんだけどな。」
思春期に入ってからだろうか、エリクシルは外向きの表情と内向きの表情を使い分けるようになった。
今では、異なる自分を演じることに疲れてしまっている。
「召喚獣のこともあるんだよな…。」
召喚獣のレッサーウルフとの付き合い方を考えるのが負担だ。
私はやっぱり使い捨て召喚士が似合っているんじゃないだろうか?
使い捨て召喚士は一回一回契約を打ち切る召喚士のことだ。
この学園の方針とは全く逆。
悩んでも答えは出ないので、結局保留にしたまま朝の1人の時間を楽しむのだった。
学園内は結界で守られているためほとんど危険はない。
だから、生徒は安心して暮らせる。
しかし、学園という檻の中で仮想敵のいない状態は蠱毒作成の過程にも似て、生徒同士の関係は良好とは言えなかった。
イベントは全て勝負事。
男女の付き合いも優劣をつけるための道具でしかない。
エリクシルは相当に面倒なこの人間関係が嫌いだったわけだが、それでも、どうしても色々な人に声をかけてしまうのはなぜだろうか?
落ち込んでいる人の話を聞き、クラスを盛り上げ、エリクシルは自分でも気づくほどにそれなりの人気があった。
もちろん、それは人付き合いが本当は苦手なエリクシルにとってはわずらわしいことに間違いなかったのだが…。
俺は、エリクシルという女の子に召喚され、召喚獣になった。
それは良いんだが、元いた場所に戻ったらすでに俺以外のレッサーウルフは遠くに行ってしまっていたようだ。
完全に群れから離れてしまったのである。
仕方ないので、1人で狩りを始める。
まずは、気配察知を最大限に使い、全神経で獲物を探る。
獲物の息づかいが俺の元に聞こえてくる。
俺は、駆けた。
見つけたのは、獲物かどうかは怪しいが、ライオンもどきだった。
まだ、若い個体で、多分狩りの練習をしているのだろう。
ライオンもどきの腕力は強い。
猫パンチで吹き飛んだ仲間を見たこともある。
素早さも俺たちと同じくらい。
ステータスで勝っているのは体力くらいだろうか。
追いかけられたら逃げる。
立ち向かわなければ、逃げ切れる程度の奴だ。
今の俺は、称号「召喚獣」のおかげで、少しステータスが上がっているので、簡単に逃げられるだろう。
そこまで考えると俺は、気配を殺し、ライオンもどきの後ろから近づいて行った。
まずは、尻尾をかみちぎろう。
俺は、そう狙いを定めた。
すーっと近づくと、何食わぬ顔で、ライオンもどきの揺れる尻尾に近づき、嚙みついた。
ライオンもどきはたまらず暴れだし、俺はそれに合わせて尻尾をかみちぎった。そして、そのまま、逃げる。ライオンもどきは怒りに身を任せ、俺を追いかけてくるが、関係ない。
逃げて逃げて逃げまくった。
2日くらい逃げた。
追いかけてくる気配が消えたところで、尻尾の食べられる部分を食べる。
まあ、ないよりはましだ。
俺は、しっぽの無くなったライオンもどきを探す。
ライオンもどきは、疲れはて眠っていた。
眠るライオンもどきの後ろ足の太もものあたり。
筋繊維に沿ってがぶりと噛みつく。
奥歯をしっかり食い込ませる。
たまらず飛び起きるライオンもどき。
無茶苦茶に暴れていた。
俺は、首を堅め足に取りつく。
体が大きいライオンもどきでは、俺には攻撃は届かない。
さらに歯をたてる。
思い切りが体をひねり噛みちぎる。
口の中に広がる生肉の感触を味わいつつ、距離をとる。
傷はけっこう深いはずだ。
ライオンもどきは、距離をとった俺をうらめしそうに見ていた。
俺は、その後もライオンもどきが油断するたびにライオンもどきに傷を負わせていった。
そして…。
ライオンもどきは眠ったまま動かなくなった。
レッサーウルフ
レベル35/100
+称号 ジャイアントキリング
経験値が入る。
一気に6上げである。
ジャイアントキリングは格上相手に全能力1.1倍になるというものだった。