異世界転生と出会い
転生したら狼だった。
普通の中学生だったんだけれど、俺は今、狼だ。
学校で習った中国の虎になってしまう話みたいだなんて考えながら、群れで暮らしている。
狼としての生活には、最初は戸惑いがあったが、今は特に気にせず暮らしている。
生きている動物の肉をかみちぎるのにも慣れたし、外で用を足すのも慣れた。
困っていることと言えば、狼に対して欲情することはないので、子孫を残せないことくらいだろう。
ちなみに俺のいる世界は恐らく異世界である。
理由は、空に衝突した二つの月があることと魔法やスキルなんて不可思議なものがあることだ。
俺もスキルは持っている。
ステータスも自分で確認できるのだ。
まあ、そんなわけで俺は異世界ライフを楽しんでいた。
さっきまでは…。
俺の足元に幾何学模様が展開されていく。
次の瞬間に俺は、草原にいた。
「あなたが、私の召喚獣ですか?」
俺は、目の前の金髪の女の子を見る。
恰好は制服っぽいものを着ているので、学生だろうか。
「エリクシル!早く契約をしないと逃げられますよ!」
声の方を見ると先生っぽい男が叫んでいた。
俺はどうしていいかわからず体を動かそうとする。
しかし、何かに縛られたように体が動かない。
俺の様子を見て慌てた様子で呪文を唱え出した。
俺は、どうすることもできず呪文が終わるのを待った。
「…!」
呪文が終わると俺の腕に腕輪が現れた。
先生っぽい男が俺の方に近寄ってくる。
「レッサーウルフですね。Fランクのモンスターですが、固有スキルの気配察知は結構使えます。いい召喚獣を手に入れましたね!」
「はい。」
金髪の女の子はそれに答えた。
「一応野生のモンスターですので、クリーンの魔法は使っておいた方がいいですよ。」
先生はそう言った。
女の子はコクコクと頷き、俺に向かって呪文を唱えた。
体がさっぱりした。
状況はわからなかったが、ともかく周りを見回すと俺の他にもモンスターがたくさんいた。
俺の10倍以上あるドラゴンもいた。
俺は、周りの様子を探っていると、女の子が俺に向かって言った。
「エリクシルです!レッサーウルフさんこれからお願いしますね!」
金髪の女の子はエリクシルと言うらしい。
レッサーウルフ
レベル29/100
体力 E
攻撃 E
防御 F
魔力 G
魔法攻撃 G
魔法防御 G
素早さ E
知力 S
魔法 なし
固有スキル 気配察知
称号 召喚獣
そして、これで俺も召喚獣の仲間入りだ。
ちなみに召喚獣の称号は召喚主に危害を加えられないようになるが、全能力が1.1倍になるといういいものだった。
エリクシルが、俺を撫でまわす。
俺は気持ちいいが、何となく罪悪感も感じていた。
俺も男だからなあ…。
そんなことを思っている俺の所にエリクシルの友達らしい女の子が来る。
銀髪で、ゆるい感じの子だ。
「やっほー。エリちん、上手く召喚できたみたいね?」
「リリアーナちゃん!レッサーウルフちゃんです。ウルフちゃん!リリアーナちゃんにご挨拶してください!」
俺は、一鳴きした。
リリアーナはそれを不思議そうに見ていた。
「エリちん。この子、かわいいね。私も撫でていい?」
「多分、大丈夫だと思うよ。」
リリアーナが、俺を撫でる。
エリクシルより遠慮があるのか優しい感じだったが、なんともくすぐったかった。
リリアーナの召喚獣は銀カラスだそうだ。
俺を見るなり威嚇してきやがった。
無視していたが、つつかれそうになったので、俺も威嚇してやった。
こいつは嫌いだ。