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三十秒の世界
そこには、老婆が座っていた。
老婆は、こちらを見ると、いらっしゃいと言って笑いかけてきた。
「今日話すお話は、三十秒の世界というお話です。どうぞお聴きください。」
と騒がれた声で話し始めた。
彼は今、とても暗く小さな光りがあるとある空間にいる。
その空間では、自分が声を出すこともできない。
仮にできたとしてもその声は、相手に伝わる事はない。
それに息をする事すら人間には許されない空間だ。
彼は小さな光をその小さな手で取ろうとする。しかし、手の動く感覚はあるが、自分の目に手が映る事はなかった。
それでも彼は、諦めず小さな光を取ろうとする。しかし、彼の息はもう持たなかった。
「ぷは〜。」
我慢できず彼は勢いよく体を起き上がらせた。
すると、隣から声がした。
「五歳になって、三十秒もお風呂の中で息を止められたじゃないか。」
そうお父さんは彼を褒めるように言った。
彼は。満足そうにウヘヘと笑った。
「いかがでしたでしょうか。今日のお話はこれまでです。」
と老婆は、言った。
「それでは、次回のお話まで御機嫌よう。」