5.確定です!?
戦いの中で成長する系主人公。
5/28 微修正しました。
ぐっもーにん!沢山寝たのにナチュラルハイな鹿野木すずです!
あ、謝罪はどうだったか実里ちゃんからメッセージが届いてる。泣きながらケーキを貪る『糖と胃』スタンプを送っておこう。詳しくは、夢か現実か確認したら話すよ。
いやまぁ、そもそも推しが、同じ次元、同じ時代、同じ学校、同じ年齢に存在している時点で『事実は小説よりも奇なり』としか言えない話な訳ですがね。だからと言って素直に現実だと受け止められたら苦労しないんですわ。それでも少女漫画みたいに天然かましたり、乙女小説みたいに卑屈に拗らせたりはできないんですねー。ヒロインじゃないんでな!!
あぁ……、脳内で持論並べていたら今日も早くに学校に着いてしまった。恋愛の自己完結は災厄を招く。もしもあれが夢であれ嘘であれ向き合わねばならぬ。我いざ行かん……!!
戦に赴く武将の面持ちで教室まで歩を進める。昨日はドアを開けたら目の前に推しが居たから混乱の極みだった。細心の注意を払い下を向きながらドアを勢いよく開ける。
バ ン ッ ! !…………。
盛大な音の後の静寂。教室内に人も居ないみたいだ。昨日もなんで居たのかわからなかったし偶然だったのかな。少し緊張を解き教室に足を踏み入れる。
「おはよ、すず」
瞬間、ピキリと全身が固まった。
ああああああああああああ!?!?!?
後ろからの刺客!?
死角からの推し!?
「お、おはようございます……!!」
「あー…、やっぱ緊張するな。俺、彼女とか初めてなんだよ」
「か、かかっ……!」
彼 女 ! !
ゆ、ゆー……、ゅきじさんの彼女!!
初めて奪っちゃった!?
「駄目なとこあったら言ってくれな。直すし」
「い、いえ!勿体無いお言葉です……!」
駄目な所とか無いよ!!
パーフェクトだよ!!
むしろ駄目な所あっていいよ!!
「ぁ、でも――」
「ん?」
「いや、その。……他に好きな人ができたら、振ってから乗り換えて欲しい……です。」
私だってなぁ!昨日、一生懸命考えたんだよ!どうやら夢である説は違うらしいけど、ストーカー対策説が残ってる訳で。確かに毎日参拝に訪れていたけれど、私はストーカーでは無いので!だから、彼女にしなくても無害なので!振っても逆恨みとか皆無なので!私は貴方様の幸せを願うただのオタクなので!!……ハーレム系主人公が苦手なのは関係ナイヨ!
「へぇ……。すずに振られない限り他人に目がいくとは思わないけど、彼女の初めてのお願いだもんな。覚えとく」
は?完璧かよ?
ネガティブ発言を否定しつつも意見として受け止めるとか慈愛が過ぎるのでは??
人間として高みに居すぎか???
というか、ストーカー対策説が息をしてない……!?
え?てことはマジもんの恋人ってこと?
相思相愛な甘酸っぱい青春ラブストーリー?
徳の高い完璧な性癖滅多撃ち彼氏と変態地味オタク彼女?
神官に恋したゴブリンかな??
待って、神官服着て欲しい。ヒラヒラした詰襟とか――
「すず?」
「ッ!?」
挨拶からずっと動いていなかった私の前で雪慈さんがヒラヒラと手を振りながら顔を覗きこんでいた。覗きこむ関係で自然と上目遣いになった雪慈さんは、ちょっと目付き悪くて最高に性癖クリティカルヒット!!完全にスナイパーでしょ……急所しか撃ってこないんだけど……。
それなのに失神せずに普通に立っていられるなんて伸び代感じちゃうね!!
「早く来たし今日のテストの確認するけど、一緒にやる?」
「っは、はいっ!!」
はっきり言ってしまうと雪慈さんと一緒にだなんて全然集中できなかった。でも、今まで廊下からちらっと見るだけだった姿を目の前で拝める天上の園であったのは間違いない。もちろん正面から見れた訳じゃないけど!春休みの課題の問題を見直したり、教科書に目線を落とした時にね!しかも、「今日から一緒帰れる?」とか「嫌じゃなければ朝も」とか絶対勉強させる気がないと思う。こちとら好き過ぎて失神かますオタクだぞ?糖分過多で脳が砂糖漬けになるだろが!!
テストは程々に解けました。日頃の成果と暗記力が無ければ死んでいた。
読んでくださり、ありがとうございました!
すずの煩悩を全回収すると嵩張り過ぎるので、これでもコンパクトサイズ。