表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
妄想内の推しが居た!?  作者: らくま
本編
5/10

見てるだけ【side椎名雪慈】①

参拝されてる頃の雪慈です。

主人公とのテンション差ぁ!!

 俺、椎名(しいな)雪慈(ゆきじ)は、まぁ普通だ。普通って何だとか言うなよ。勉強も運動も得意では無いけれど不得意という訳でもない。友人もいるし、不細工と罵られるような顔でもないと思ってる。……身長?まだ1年なんだから成長期待ちだ!


 とにかく、普通の俺は毎日それなりに過ごしている。


 ただ最近、何となく気になる女子がいる。惚れたとか、そんな甘酸っぱい感情ではない。このところ良く見かけるから何となく、そう、何となくな。



*****



「そういえば、最近昼に本持って通り過ぎる女子のこと知ってるか?」


 10月も末の頃、昼休みのだらけた空気の中で聞いてみた。彼女は、俺が覚えている限り2週間前位から良く見かけるようになったと思う。


「おーいおいおいー!青春ですかー?青春しちゃってるんですかー?椎名もお年頃かなー?」


 煩い。東條(とうじょう)なら交流関係が広いし丁度いいと思ったが、聞く奴を間違えたか。


「そうか、知らないか。ならいい」


「冷たーい!てか、多分それ鹿野木(かのき)だろ?鹿野木すずちゃん♪」


 知ってんのかよ。何か言い方がイラっとするけど。


「眼鏡かけて、無表情でスタスタ歩いてんの。俺、笑ってるとこ見たこと無いわ。でも結構胸がデカい!」


「セクハラやめろ馬鹿」


 胸がデカいのは認めるが、わざわざ言うんじゃぇ。周りにクラスの女子も居るのに大声で言いやがって馬鹿。こんな奴がモテるとか、やっぱり顔なんだろうな。


「まー、確かに最近見かけんね。向こうの階段使いたく無いのかね?まさか霊的な!?」


「さあ?ま、あんがと」


 煩い奴だが、教えて貰ったので礼を言う。「椎名がデレたー!!」煩い……。





 彼女、鹿野木さんは、これまで見たことが無かったから、多分1階のクラスだと思う。俺らのクラスは2階で、図書室も2階だからそれで通るのだろう。ただ、俺らのE組側の階段よりH組側の階段の方が図書室に近い。だから、図書室に早く行きたいなら、こっちを通る理由にならない。


 ここを通る鹿野木さんを東條は無表情だと言うけれど、俺には何か楽しそうに見えた。口元を引き締め、でも瞳は宝探しをする子どもみたいにキラキラしているのだ。


 その楽しげな様子の理由が、本でも図書室でもなくこの廊下を通ることにあるのなら。何を楽しみに通り過ぎて行くのだろう。


 それを考えると、少し面白くなかった。



*****



 冬場の移動教室はツラい。名前に雪が入っていようが、特に寒さに強くなる訳ではない。冬の寒さに悪態を吐きながら廊下を進むと、校庭に体操服姿の彼女を見つけた。


 こちらに背を向け、微かに横顔が見える。友人が声をかけたのか、こちらへ振り返る。


 そして、笑った。


 頭を殴られたような衝撃だった。無表情とは何だったのか。ほにゃりと崩れた笑みは本当に子どもみたいだ。陽だまりのように暖かく、どこか気が抜けてしまう。


 それとは逆に俺の表情は自然と強張った。


 いつも1人で本を抱えて行く彼女。無表情に見られる彼女。彼女の楽しげな様子に気づいているのは、自分だけの気になっていた。だから、ただ見かけるだけの関係の癖に彼女を取られた気分になっている。彼女の笑顔すら見たことなかったのに。


 あまりに傲慢な考えに自分でも驚いてしまう。いつの間にか生まれていた独占欲。恋と呼ぶには余りにもドロドロとしている醜い感情。こんな気持ちで近づいたら、彼女のキラキラした瞳が濁ってしまう気がして恐ろしい。


 見えるけれど届かない。今の距離がきっと丁度いい。そう言い訳して、早足にその場を去る。


 それでも、「誰かのモノにはならないで欲しい」などと考えていて、己の自分勝手さには呆れてしまう。


読んでくださり、ありがとうございます!

ドロ甘ヒーローside好きなせいで、長くなりそう……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ