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血染めの楽園  作者: 製作する黒猫
楽園島
8/50

8 好きな色は?



 祭りばやしの音。

 楽園島では、毎日のように祭りが行われる。


 私は、彼から贈られたピンクの可愛らしい浴衣を着て、彼の隣をゆったり歩く。


 屋台の並ぶ通り。人は多くもなく少なくもない。歩くのに十分なスペースがあり、人を気にする必要がないし、人がいなさ過ぎて居心地が悪くなることもない。


「定番の屋台から変わり種まであります。まずは何か食べますか?それともゲームでもして遊びましょうか?」

「うーん、どうしようかな。」

 両脇に並ぶ屋台を一つ一つ見ていく。チョコバナナやりんご飴、金魚すくいや射的。ここらへんは定番のものが多い。


 右斜め前にあるりんご飴の店で、カップルがりんご飴を買っている。ライトの光を頭で反射しているおじさんが、りんご飴を彼女に渡していた。


「働いている人がいるんだね。」

 今まで行ったところは、覚えている限り無人の店ばかりだった。てっきり、楽園ではそれが普通なのかと思っていた。


「・・・働くことを望む者もいますからね。特に祭りの屋台は、そういう者が多いです。すべてではありませんが。」

「働きたくて働いているってこと?お金をもらえるわけではないよね?」

「はい。欲しいのならば、与えるとは思いますが、お金などあっても楽園では使えませんから、働いてももらいません。私には理解できませんが、彼らは働くことで、喜びを感じたり、存在意義を見出しているのでしょう。」

「・・・ボランティアというわけではないの?」

「そういう者もいるでしょうが、中には働かなければ生きていけないものもいるのですよ。不思議ですね。」


「生きていけないなんて、おおげさな。」

「それがそうでもないのです。ま、楽しんでいる者もいますが、ただ何かに操られているように、何かの恐怖観念にとらわれているように働く者もいます。」

「それは、なんだか可哀そうだね。」

「ですが、それで本人が満足するならば、それが幸せにつながる。どちらにせよ、そういう選択の権利があるのは羨ましい限りです。」

「どういうこと?」

 彼には選択の権利がない。そう聞こえた。


「そのままの意味です。」

 彼は、綿あめの店に近づく。私はそれに続いた。


 綿あめは、パステルカラーで着色されていて、ピンク、水色、イエローと三色ある。

 私なら水色がいいなと、なんとなく水色の綿あめを見た。


「どうぞ。」

 彼に渡されたのは、ピンクに着色された綿あめ。


「ありがとう。」

 私は受け取った綿あめを一口食べる。甘いふわふわは、口の中ですぐに解けて無くなった。


「一つ聞いていいですか?」

「ん?何?」

「好きな色は何ですか?」

 その質問に、私は考えるまでもなく答えた。


「ピンク。」

「・・・そうですか。」


 その後、彼が色付きの石を黒ひもで通したブレスレットを買ってくれた。石の色は何色かあって、どれがいいかと聞かれた私は、水色の石を選んだ。


「一つ聞いていいですか?」

「いいけど?」

「好きな色は何ですか?」

「ピンク。」

 そう答えた私に彼は微笑み、ピンクの石の付いたブレスレットの隣にある、水色のブレス

レットを、私の手首に通した。





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