8 好きな色は?
祭りばやしの音。
楽園島では、毎日のように祭りが行われる。
私は、彼から贈られたピンクの可愛らしい浴衣を着て、彼の隣をゆったり歩く。
屋台の並ぶ通り。人は多くもなく少なくもない。歩くのに十分なスペースがあり、人を気にする必要がないし、人がいなさ過ぎて居心地が悪くなることもない。
「定番の屋台から変わり種まであります。まずは何か食べますか?それともゲームでもして遊びましょうか?」
「うーん、どうしようかな。」
両脇に並ぶ屋台を一つ一つ見ていく。チョコバナナやりんご飴、金魚すくいや射的。ここらへんは定番のものが多い。
右斜め前にあるりんご飴の店で、カップルがりんご飴を買っている。ライトの光を頭で反射しているおじさんが、りんご飴を彼女に渡していた。
「働いている人がいるんだね。」
今まで行ったところは、覚えている限り無人の店ばかりだった。てっきり、楽園ではそれが普通なのかと思っていた。
「・・・働くことを望む者もいますからね。特に祭りの屋台は、そういう者が多いです。すべてではありませんが。」
「働きたくて働いているってこと?お金をもらえるわけではないよね?」
「はい。欲しいのならば、与えるとは思いますが、お金などあっても楽園では使えませんから、働いてももらいません。私には理解できませんが、彼らは働くことで、喜びを感じたり、存在意義を見出しているのでしょう。」
「・・・ボランティアというわけではないの?」
「そういう者もいるでしょうが、中には働かなければ生きていけないものもいるのですよ。不思議ですね。」
「生きていけないなんて、おおげさな。」
「それがそうでもないのです。ま、楽しんでいる者もいますが、ただ何かに操られているように、何かの恐怖観念にとらわれているように働く者もいます。」
「それは、なんだか可哀そうだね。」
「ですが、それで本人が満足するならば、それが幸せにつながる。どちらにせよ、そういう選択の権利があるのは羨ましい限りです。」
「どういうこと?」
彼には選択の権利がない。そう聞こえた。
「そのままの意味です。」
彼は、綿あめの店に近づく。私はそれに続いた。
綿あめは、パステルカラーで着色されていて、ピンク、水色、イエローと三色ある。
私なら水色がいいなと、なんとなく水色の綿あめを見た。
「どうぞ。」
彼に渡されたのは、ピンクに着色された綿あめ。
「ありがとう。」
私は受け取った綿あめを一口食べる。甘いふわふわは、口の中ですぐに解けて無くなった。
「一つ聞いていいですか?」
「ん?何?」
「好きな色は何ですか?」
その質問に、私は考えるまでもなく答えた。
「ピンク。」
「・・・そうですか。」
その後、彼が色付きの石を黒ひもで通したブレスレットを買ってくれた。石の色は何色かあって、どれがいいかと聞かれた私は、水色の石を選んだ。
「一つ聞いていいですか?」
「いいけど?」
「好きな色は何ですか?」
「ピンク。」
そう答えた私に彼は微笑み、ピンクの石の付いたブレスレットの隣にある、水色のブレス
レットを、私の手首に通した。