表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
血染めの楽園  作者: 製作する黒猫
楽園島
6/50

6 川



 ご飯を食べ終わった私たちは、少しきつい坂を歩いていた。山の中にはもう入っているので、両脇には木々が並んでいる。木の奥には、小さな川も流れていて自然豊かだ。

顔をあげれば、葉と葉の隙間から、きらきらとした光がもれている。正面を見れば、少し先を歩く彼の背中。

 私は、彼の後ろをついていく。


 静かな山は、風が吹けば葉と葉がぶつかり合う音が聞こえて、その音がない間は、川のせせらぎの音が心地よく聞こえる。


「川の音って、安心できるね。」

「そうですね。」

 彼は立ち止まって、川の方へと目を向ける。


 彼は、なぜか皮肉気に笑った。

「こうやって見る分には、川は美しくて、人々の心を癒してくれます。ですが、近づけば人の命を奪うものでもある。まるで・・・」

 何かを言おうとした彼だったが、私の方を見ると目を伏せた。


「なんでもありません。」

「・・・そう。」

 何でもないってことはないと思うが、私には彼の言いたいことが見当もつかなかったので、相槌だけをうった。


 歩き出した彼の背中は、落ち込んでいるようで、先ほどより歩くペースが速くなっていた。私から離れようとでもしているようで、なんだか嫌な気持ちになる。


 私は、少しペースを速めて、彼を追い越した。そんな私を彼は驚いたように見上げる。


「意外とネガティブだね。さっきの川の話を聞いて、そう思ったよ。でも、そんなもの視点を変えればいいだけのことだよ。」

「視点を変える?」

「うん。聞きたい?」

「それは・・・そうですね。」

「なら、私を捕まえて。鬼ごっこだよ。そうしたら、教えてあげる。」

「え?」

「よーい、どん!」

 私は、彼の返事を待たずに走りだす。そうしなければすぐに彼に追いつかれるだろうから。


 坂だけでなく、階段もある道のり。しかも川が近くにあるせいで、所々滑る。

「待ってください!危ないですよ!」

「なら、捕まえて。そしたら、走らなくて済むから。」

 私の言葉を聞いて、やっと彼は動き出した。いつも優雅な動きをする彼だが、男性で足も長いものだから、すぐに私に追いついた。


 追いつかれたことに焦った私は、階段を踏み外して転んだ。痛いのと恥ずかしいのとで、顔に熱が集まる。

「いつっ」

「大丈夫ですか!?」

 彼がすぐに駆け寄ってきて、私を助け起こす。


「ははっ。恥ずかしい。」

「だから危ないと言ったのに。あぁ、膝をすりむいていますね。近くに川があって良かった。すぐに洗い流しましょう。」

「そう、それだよ。」

「はい?」


「近づいたら命の危険があるけど、近づかなければその恩恵は受けられない。なーんてね。」

「・・・全く。」

 先ほどの川の話をすれば呆れられたが、彼は笑った。


「まさかとは思いますが、それを教えるために怪我をしたのですか?」

「それは、違うよ。ただ、走ればのどが渇くから、川の水を飲んで、川は恵みを与えてくれるって言いたかったの。」

「そうですか。・・・あなたの言いたいことは十分にわかったので、もうこんな危ないことはしないでください。」

「わかっているよ。私もこりた。」

「そうだといいのですが。」


 彼は、私に手を差し伸べた。それを私は見惚れながらも、その手を取った。


「同じかと思っていました。」

「え?」

 彼が小さく呟いた言葉は、私の耳には届かない。


「何でもありません。ただ、あなたは私が幸せにしたいと思っただけです。」

「え?」

 言葉が理解できず、何度も頭でその言葉を繰り返し理解する。そうしたら、またもや私の顔は熱くなった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=713270280&s
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ