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血染めの楽園  作者: 製作する黒猫
楽園島
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5 山神亭



 店の前に来ると、彼は扉に銀のカードをかざした。ピピっという電子音と共に扉が開く。


「塔に入るときも、そのカードを使っていたよね?」

「はい。これは身分証のようなものなのですよ。」

「身分証?」

 学生証とか運転免許証のようなものだろうか?でも、なぜそのようなものを扉にかざすのだろう?


「・・・ここは、何をするのにも自由と言いましたが、流石にそううまい話はありません。これは、そうですね、管理されているのです。」

「管理?」

「・・・監視と行った方が、正しいですけどね。このカードを持っていないと、移動をすることも買い物をすることもできません。つまり、このカードがなければ何もできない。」

 彼はカードをしまって、中に入るよう私を促す。私はそれに大人しく従って、店にある席の一つに腰を掛けた。


 店は誰もいない。店の人さえいない。


「ここは、無人の店です。少しお待ちください、メニューを持ってきます。」


 メニューを持ってきた彼に、私はカードの話を聞くが、まずは選んで欲しいと言われ、きつねうどんを頼んだ。すると、彼は奥の方へ消えていき、戻ってきたときには、きつねうどんとかつ丼をトレーに乗せて持っていた。


「お待たせしました。暖かいうちに食べましょう。」


 きつねうどんは、暖かいというより熱くて食べられない。だから、私はカードのことについてもう一度聞く。


「そのカードを持っていないと何もできないの?」

「はい。」

「私は、そんなカード持っていないけど・・・」

「はい、ですから、離れないでください。」

 にっこり微笑まれた。その顔を見た私は、ゾクリと悪寒がはしる。なぜだろう?


「あなたには必要ありません、こんなもの。自由とはすばらしいことですが、時としてそれに殺されることもあるのですよ。」

「ちょっと、意味が分からないかな?」

「わからなくていいのです。わかってしまえば、後戻りなどできない。」

 彼の言うことが何一つ理解できない。何かあったのだろうか?


 彼は、かつ丼を冷ますことなく、パクパクと食べ始めた。私もそれを見て、きつねうどんに手を伸ばすがまだ熱かったので、息を吹きかけて冷ます。


「これを食べ終えたら、滝を見に行こうかと思っています。滝は見たことがないでしょう?」

「そうだね・・・ないかも。テレビとかではあるけど、実際見たことがないかな。」

「ここには、大きな滝があるのですよ。」

「それは楽しみ!マイナスイオンだっけ?大きな滝なら一杯出てそうだね!」

 マイナスイオンが何なのかよく知らないが、良いものだった気がする。


 私は、やっと食べられる程度に冷めたうどんをすすった。おいしい。




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