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血染めの楽園  作者: 製作する黒猫
楽園島
4/50

4 家



 鳥のさえずりが聞こえる。朝が来た。

 目を開けると、見知らぬ部屋にいた。机やいす、たんすなど一通りの家具がそろった部屋を見て、私は思い出した。

「そっか、楽園島に来たのだっけ。」


 朝日が、私の顔を照らす。カーテンは閉めていない。

 昨日、あまりにも星空が綺麗だからと、カーテンを開けて、星を見ながら眠ってしまったからだ。


 外を見れば、清々しい青空と輝く太陽。今日もいい天気だ。



 コンコン。部屋の扉が控えめにノックされて、次に聞こえるか聞こえないか程の小さな声がした。

「失礼、お目覚めですか?」

 その声の主は、昨日一緒に過ごした彼だとすぐにわかる。


「起きてるよ。ちょっと待ってね。」

 そう返事をして、私はテーブルの上に置いてある手鏡を手に取って、今の自分の姿を確認する。少し髪がぼさっとなっていたので、手櫛で直し鏡をもとの位置に戻した。

「いいよ、入って。」


 扉がゆっくり開き、彼が部屋の中へと入ってきた。

「おはようございます。少し早かったようですね。」

「おはよう。ごめんね、こんな格好で。」

 パジャマ姿の私は、少し照れながら言う。


「そのために、早めに来ました。お困りかと思って。」

 彼は、手に持っていた紙袋を私に渡した。


「着替えです。見繕ったものなので、気に入っていただけると嬉しいですが。あ、もちろんインナーは、他に頼みましたが。」

 その言葉で、私は着替えを持っていないことに気づいた。一応、昨日着ていた服はあるが、流石に今日も着るのは辛い。


 私は、楽園島に何も持ってきていなかったのだ。お金も必要ない島とわかっていたからだとは思うが、流石に生活用品などは準備しておくべきだった。


「ありがとう。お金が必要ないからって、着の身着のままきちゃうなんて・・・ちょっと恥ずかしいかも。」

「・・・あなたの服を選ぶのは楽しかったので、それでよかったですよ。他に欲しいものはありますか?一応、女性に必要そうなものは、一階の段ボールの中に用意していますから、後で見といてください。他に何か必要なものがあれば、言ってください。用意しますから。」

 微笑む彼の顔が眩しい。どれだけいい人なのだろうか。


「とっても助かるよ。えっと、開けていい?」

 紙袋を机に置きながら聞くと、彼は笑って頷く。私はそれを見て、紙袋を開けた。


 中には、薄手のニットと、ミニスカートが入っていた。可愛い。

 ニットの方は、通気性がよさそうで、涼しそうな感じ。この島の気候は、春に近いので環境にあった服だ。ちなみに、色は薄いピンク。


 ミニスカートの方は、学校の制服のような折り目が付いたもので、色は水色だ。


 他にも、こまごまとしたものが入っているのが見える。


「ありがとう、可愛い服だね。」

「気に入っていただけて良かったです。では、私は一階で待っていますので、ゆっくり準備してください。」

「わかった。すぐに着替えていくよ。」

「ゆっくりでいいですよ。楽園は、時間に追われる必要なんてありませんから。何もかも、ここでは自由ですから。」

 そう言って彼は部屋を出て行く。


 私は、彼にはゆっくりでいいと言われたが、自由にしていいとも言われたので、早く彼と話をしたい一心で、着替えた。3分もかかっていないと思う。


 そして、部屋を出る。寝室は二階で、彼がいるのは一階なので、階段を下りた。

 この家は、彼が私のために用意してくれた家で、私は楽園にいる間ここで暮らすことになっている。二階建てで、その上に物置部屋がある。各階は一人で暮らすには少し広すぎるし、余るほどの部屋がある。


 本当に至れり尽くせりだ、なんてことを考えながら、下に降りて行く。


 階段を下りた先にあるリビングで、彼は紅茶を入れて優雅に過ごしている。私が降りてくると、こちらに視線を向けて微笑んだ。


「おはよう!・・・て、さっきも言ったっけ。」

「おはようございます。いいですよ、挨拶は何度してもいいものですから。」

「そっか。」

 彼と一緒にテーブルの前に腰を掛ける。


「今日はどこを案内いたしましょうか。希望などはありますか?」

「うーん・・・今日は天気がいいし、屋外がいいかな。」

「それなら、山登りはいかがですか?登るとは言っても、舗装されているので、散歩をするのと変わりませんが、公園とは違った景色が楽しめますよ。あとは、山神亭という和食屋さんがあります。和食が大丈夫なら、そこで朝食をとりましょうか。」

「いいね。和食ならはずれもなさそうだし・・・山登りしようか!」


 今日の行き先は決まった。

 私たちは、紅茶を一杯飲み終わると、山へと向かった。まだ朝食を食べていないので、食事が先だから、山神亭に向かったと言った方が正しいかもしれない。




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