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血染めの楽園  作者: 製作する黒猫
楽園島
13/50

13 少年の考え



「本当の楽園って、ここよりいいところなんだよね?」

「らしいな。」

「君は、行きたいとなぜ思わないの?より良い暮らしがしたいとは思わない?」

 まだここに来たばかりの私には、ここは本当の楽園だと思う。何をしてもいいし、何もしなくてもいい。お金の心配もいらない。それは素敵なことだ。


 でも、それが日常となってしまった少年には、偽りの楽園なのだろう。なら、もっと幸せになりたいと望み、本当の楽園を目指そうとする方が自然だ。


「俺は、怖いんだ。本当の楽園に行くことが。」

「怖い?」

「そうだよ。ここに来た時、なんてすばらしいところに来たんだろうって思ったよ。見る景色全てがキラキラしていて、将来の心配とかいらなくて。でもさ、それが今普通になったわけ。それって、怖いことだと思わないか?」

「・・・もったいないとは思うけど。怖いの?」

「うん。」


「姉ちゃんは、何のために生きているの?」

「え?」

 突然の質問に答えられない。何のために生きているかなんて、考えながら生きているわけではないし。


「楽園の外では、みんな人のために生きていると俺は思う。」

「人のため?」

「そう。親や子供、友達なんかのため。悲しませたりしないために、親なら子供を生かすためにでもある。人一人が死ねば、誰かしらの生活が変わってしまうから、それを変えないため・・・みたいな。」

「人のためか・・・」

 確かに、人が死ぬということは、周りに色々な影響を与えるのだろう。


「でもさ、楽園だとその影響が減るんだよ。」

「・・・どういうこと?」

「親が死んでも、子供は生活に困らない。もちろん、悲しかったりはすると思うけど、貧乏になってしまうとかはない。」

「それは、そうだね。普通だったら、将来お先真っ暗になってしまう人もいるし、人一倍努力する必要も出てきたりするよね。」

「悲しさは変わらないけどね。でも、俺はそれでいいと思う。」

「悲しいのがいいことなの?」

 少年は頷くが、私には理解できない。悲しいなんて感情は、いらないと思うから。楽しいことだけでいい、幸せになりたい。もう、悲しいのは辛いのは嫌だ。


 あれ?悲しくて辛いことってなんだっけ?


「だって、それが人間だと思うんだよ。俺は、そういう感情も抱けるのが人間だと思う。」

「でも、悲しくて辛いことは嫌だな。」

「僕も嫌だよ。僕だって、悲しくて辛い思いはしたくない。楽園にはそれがないらしい。でも、僕は楽園には行きたくない。だって、親が死んでも泣けなくなったら、それはもう僕じゃないと思う。」

 少年の言葉で、その情景が浮かんだ。

 死んだ両親の前で、幸せそうに笑う少年。それは、泣く少年よりも見たくないものだ。


 本当の楽園は、辛く悲しいことがない、幸せな場所。それは、とても恐ろしいことではないかと、少年に気づかされた。


「それに、楽園に行って、そこが日常になってしまったら、それはものすごく不幸なことだと思うし。だから、僕は行かない。この楽園島で生きることにする。」

「そうだね。それが一番幸せなのかもしれない。」

「幸せだと思う。それに、今は姉ちゃんっていう、新しい友達ができたから、それなりに楽しいしな!」

 少年は立ち上がると、にっと笑った。


「また、会おうな!」

「うん、またね。」


 走り去る少年の後姿を見送って、私は立ち上がる。


 今日も楽しみだ。




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