1 鳥かごの楽園
清潔な寝床。減らない食事と水。
全てがそこにある。不満など感じないはずの姫は、悲しくさえずる。
その視線の先には、立派な小鳥。隣には小さな小鳥。仲睦まじく、2羽は鳥かごを飛び出した。今だ2羽のぬくもりがある鳥かごの中。姫は悲しくさえずる。
それを見た鳥かごの持ち主は、眠る立派な小鳥に言い聞かせる。
お前の名は
お前の好きなものは
お前の嫌いなものは
お前は・・・
眠っていた立派な小鳥を起こして、鳥かごの中の姫に会わせる。姫は喜ぶが、同時に悲しむ。この小鳥は、立派な小鳥だけど、立派な小鳥ではない。
それを見て、鳥かごの主は思いつき、眠る小さな小鳥に言い聞かせた。
お前の名は
お前の好きなものは
お前の嫌いなものは
お前は・・・
眠っていた小さな小鳥を起こして、鳥かごの中の立派な小鳥に会わせる。立派な小鳥は喜んだ。
そうして繰り返す。
人が死ぬのをたくさん見た。だから、人は簡単に死ぬということを知っている。
だから、私は逃げた。全力で。
あぁ、でもここで終わりみたい。転んで、手のひらや膝が痛い。足は、震えてしまって、うまく立ち上がれない。
そんな私の耳に、破裂音が聞こえて、私の意識は遠のいた。
姫は、鳥かごの中、悲しくさえずる。
立派な小鳥の元気がなくなってしまったから。
それを見た、鳥かごの主は、眠る小さな小鳥に言い聞かせる。
お前の名は
お前の好きなものは
お前の嫌いなものは
お前は・・・
眠っていた小さな小鳥を起こして、鳥かごの中の立派な小鳥に会わせる。立派な小鳥は喜ばなかった。
それでも繰り返す。
島にあるたった一つの港。そこには、旅立ちのカフェという店があり、その店の前で、2人の男女が出会った。
「ようこそ、楽園島へ。」
彼はそう言って微笑んだ。
太陽の光で、一層綺麗に見える金髪に清々しい青色の瞳。どこか西洋の貴族を思わせる彼の服装は、少し暑そうに感じる。
「招待してくれて、ありがとう。今日からよろしくね。」
「いいえ、こちらこそ。船は疲れたでしょう。少し休みますか?」
「全然平気!むしろ、どこかへ遊びに行きたいな~。楽園島って、どんなところなのかずっと楽しみにしていたの。」
楽園島とは、入島料として何億も支払わなければならないといわれる、セレブな島なのだ。その理由は、この島にお金が存在しないことにある。
島では、全ての物が無料。なので、この島に永住するなら、決して高い金額とは言えないかもしれない。
はっきり言える。ここは、その名の通り楽園だ。
なぜなら、この島に来て、帰ってきた者はいないから。
そんな島に、私は彼の紹介で来ることができた。本当に運が良いと思う。
「それでは、公園はいかがですか?」
「いいね。楽園島の公園って、どんなところ?」
「すぐにわかりますよ。とっても素敵な場所です。」
公園に着いた私は、感嘆の声をあげた。
きれいな緑の絨毯のように芝生が一面にあり、所々様々な色の花や木が植えられていた。歩道はしっかり整備されていて、穴ひとつないのでとても歩きやすい。綺麗。
植えられた木々が、風が吹くたびに葉と葉がぶつかる音をたてて、とても心地が良い。
「気に入っていただけたようですね。」
「うん、こんなきれいな公園初めて見たよ。見るだけで楽しめるし、良い運動になりそう。」
落ち着きなく、きょろきょろと見てしまう。まるで子供だ。だが、楽しいのだから仕方がない。みずみずしい葉は、虫食いひとつないし、花々に枯れたものはない。どこを見たって、美しい。完璧だ。
そんな風に景色を楽しんでいた私だが、一人の少年に目がとまる。
「どうかしましたか?・・・あぁ、迷子ですね。」
その少年は、高そうな服に身を包んで、髪の色は黒。髪の色と同じ瞳は、悲しそう。
私は、自分が子供の頃に迷子になったことを思い出し、一気にその時の不安が蘇った。そして、たまらなくなって、少年に声をかける。
「どうしたの?迷子?」