31.交渉
気丈に振るまってはいるが、国王達の表情は硬く強張っている。
少しの時間をおいて、シドが溜息を吐きながら億劫そうに尋ねた。
「おぬし等は何の為にそれを聞こうというのだ。はるか昔に起こった事など、今を生きる者にとっては瑣末な事柄であろう」
どうやら質問しただけで怒りを向けられるような事態にはならなそうだ、と国王達は安堵の色を浮かべた。
「いや、瑣末な事柄などではない。今我が国とペンタミシア王国は、赤竜殿自身と、赤竜殿が封じられていた山から消えた理由をどう処理するかなどを議論しているのだ。それを解決するには過去に起こした件の事情はとても大事なのだよ」
今まで赤竜の封印を行ってきたのはペンタミシア王国とメランジュ王国ではあるが、『厄災の竜』が封印されている事実は各国が承知している。
国王に続いて宰相のトルトも続けた。
「正直に申し上げますが、どうか気を悪くしないでお聞きいただきたい。一部の者の中からは、貴殿を討伐するべきだという声がどうしても消えないのです。それは貴殿に敵う敵わぬという問題ではない。『人間』の敵である者を許してはならぬという、過去貴殿に殺められた者達への仁義。あるいは過去に貴殿が行なった虐殺が再び起こらないとは限らないと危惧する事から、たった一人の人間が勝ててしまったのであるなら赤竜は昔より弱体化しているはずだから今のうちに殺してしまうべきだという意見も。いくら言葉が通じる存在と知っても、過去の二の舞にはなるまいと恐怖しておるのです。しかし事実は消えぬとも、貴殿がそれを行った理由如何によってはその意見を覆す者も出てくるでありましょう」
「我にはお主等の事情など知った事ではない」
「……ごもっともですが、他にも貴殿が封印場所から居なくなった理由をどうするか決める事の参考にもさせていただきたい。例えば今のままでは『赤竜は弱体化しており見事討伐に成功した』とする説が有力であります。反対にペンタミシア王国にも何か非があったと分かった場合『赤竜の邪は払われた』とし、あなたは晴れて自由の身になったと発表する案も出ております」
もしかしたら赤竜側にも事情があるのかもしれない、と最初に言い出したのはグレンだ。直接話した事があるグレンの進言により、国王はより穏便に済ませられる道を、と模索し始めたのだ。
シドからの返答はない。先ほどと同じ、人間達の事情など我関せずといった風だ。
これでは暖簾に腕押しと悟った宰相は交渉の矛先を春澄へと向けてきた。
「何にしても、赤竜殿を従えたのは君だ。赤竜殿を『討伐』か『邪が払われた』どちらの扱いにするにしても、我が国は君が筆頭で活躍したとして褒美を用意するつもりでおる。だが解決案が定まらねば発表も出来ず、褒美も出せない。赤竜殿と契約したという君から頼んではくれぬかね」
平静を装いながらも、縋るような内心が伺える宰相からの頼みに、春澄の返答は実に淡々としたものだった
「話す話さないは全てシドに任せる。シドが話したくないというなら話させる気は無いし、俺も褒美とやらにそれほど興味はない」
「ううむ……」
シドに一番交渉出来る立場の者にまでそう言われ、トルトは瞼を下ろし難しい顔をして考え込んでしまった。国王も赤竜相手にどう対応しようか考えているのか、腕を組み床を見つめている。
春澄とて、先ほど宰相が述べた案の中では、どうせなら『邪は払われた』としてシドが堂々と存在出来る環境になるのが望ましいのではないかと思う。
なにやら民衆に植わっているらしいシドに対する恐怖はすぐには拭い去れないだろうが、面倒な追手が付くとか、まだ生きているのに討伐された事にするなどよりはいくらかマシなように思えた。
しかし何より大事なのはシドが過去の事を話す気があるかどうかであり、無いのであれば、春澄はその意志を尊重するだけだ。
たとえ国を敵に回す事があろうとも、春澄はシドに無理を強いる気はない。
だが、先ほどからの対応を見るに、過去を口にする事をものすごく嫌がっているというわけではなさそうだ。おそらく『出来れば口にしたくはない』程度なのだろうが、その程度だったとしても、どうでも良い人間に語ってやる義理は無いという考えなのだろう。
シドが過去に何をしたかは知らないが、春澄が聞けばあっさり教えてくれるはずだ。
それを知りたがっている肝心の彼らに教えてやる気は無いが。
春澄は視線をテーブルに移す。今日は真面目な話し合いのせいか特に茶菓子も出ていないのでシドも退屈そうだ。それならさっさとこの場を去るべきだろうか、と春澄が判断している時だった。
突然、部屋のドアを慌しくノックする音が聞こえた。
「なんだ?人払いをしていたはずだが」
「申し訳ありません。急ぎのご報告があります。入室を許可いただけますか?」
「……わかった。入れ」
入室した騎士は一礼して国王のそばへ寄ると、耳元で話し始めた。
十秒にも満たない騎士の言葉を聞いて、国王の眉が潜められる。
「はあ……なんというタイミング。…………仕方がない。国賓の間でお待ちいただき、すぐに部屋を整えるように」
「かしこまりました」
国王は溜息を吐くと、雰囲気を変えるようにソファに座り直してから春澄へ尋ねた。
「ところで春澄君、私としては赤竜殿を討伐対象とするという事は君も敵にまわしてしまうものと同義だと思っているから、その案はなんとしても回避するつもりでいる。そしてその後君に与える褒美についてもいくつか考えていて、宰相が名誉爵位を与えようという話もしているんだが……」
「ああ、そういうのはいらない」
「……そう言うと思ったよ。では何か望みはあるかね?もしもの話で良い」
間髪入れず貴族の称号を断る春澄に、ディアス国王は苦笑した。
もしもと言われ以前にも似たような事を聞かれたが、春澄は再び思い浮かべてみる。
おそらく前回答えた騎士との手合わせのように、金では買えない、交渉に使えそうな望みが出てくるのではないかと、駄目元で尋ねたのだろう。
その騎士との手合わせはあちらにもなにかと都合があるのだろうし、国王が痩せてしまうほど忙しいのであれば最低でもシドの件が片付かないと呼ばれないだろう。
ふと最近の事を思い出し、そういえばアップルパイが食べたいと思ったな、と先日の事を思い浮かべた。
「郊外……騒がしくないところで、土地が欲しいな」
「土地?何に使う土地かね?」
「家だ。宿に泊まるのも良いが、自由に料理出来る台所だとか、物音を気にせず朝の稽古を出来たら楽だろ」
「……君は、料理をするのかね?」
「主は料理が作れるのか?」
国王は動揺し、まるで聞いてはいけない事を耳にしてしまったかのように目を見開き、それまで無関係のような態度で居たシドまでそこに食いついてきた事に、逆に春澄まで驚いた。
「そんなに驚く事か?作れるって言ってもほんの何種類かだけだ。本来料理は得意じゃない」
「いや、まったくイメージにないものでね」
「主はどのような料理を作れるのだ?我も食したい」
「……まあ、場所が手に入れば今度作ってやる」
町で食べる物や、『天空のゆりかご』の食事が美味しいので、シドも人間の食事がだいぶ気に入ったのだろう。それと合わさり、春澄が異世界から来たと知っているシドはその料理に期待を寄せているようだ。ふと見ればユキも目を輝かせている。
春澄の作れるものは本当に多くはない。もともと施設に居た時に幼い子供たちにせがまれて作っていた甘味類と、一人暮らしの為に覚えたものをいくつか作ることが出来るだけだ。
本来戦う事以外は非常に不器用な春澄が、人に出せるレベルになるまで練習した品々は良い思い出だ。
そして今はこの世界の宿で食べる料理の方が圧倒的に美味い上に、春澄が思う料理を作ろうにも、少し素材が違えば味も変わってくる。人に出せるくらいになるまでまた練習しなければならないだろう。
両隣から注がれる期待に満ちた視線に応えてやるにはどの位かかるだろうかと、春澄は頭を悩ませた。
「君が料理をしている姿を見てみたいものだね。ちなみにどんな家が良いんだい?」
「そうだな、料理の手際があまり良くないから、広めの台所だと良いな。あと稽古が出来る庭と……出来れば風呂が二つ付いた家だな」
「ほう、風呂が好きなのかね」
「風呂は好きだ。毎日風呂に入る習慣のある所で育ったせいもあるかも知れないが」
風呂が二つというのは、どうせ自分の家を持つなら、熱湯好きのシドの風呂は別にしようかと今思いついた事を言ってみただけだ。
しかしこの風呂が好きという発言により、国王の中で春澄という人物の生まれに疑問が大きくなった。
初めて会った時は身分証を持っておらず相当な田舎の出かと思っていたのだが、どうにも春澄から受ける情報と田舎がイコールでつながらない。
毎日風呂に入る習慣があり身分証を持たない田舎など存在するだろうか。
護衛を依頼した数日の間に一応聞いてはみたものの、『遠いとこだ』しか聞くとこは出来ず、答えたくない質問には『ノーコメント』と返ってきた。
あまり貴族などに良い印象を持っていないようだった春澄に無理に聞くのも憚られ、もう少し親しくなってからにしようと今まであまり聞かずにいたが、今もう少し踏み込んで聞いてみようかと国王は思案する。
国王の観察するような視線に気づかず、春澄はそのまま想像の続きを考えていた。
「ああ、望みといえば、馬車を作れるいい職人とかも紹介してもらいたいな。普通の移動手段が欲しいと思ってたんだ」
「なるほど。先ほどは君の料理の話に驚いてしまったが、つまり君はメランジュ王国に腰を据えるつもりだと期待しても良いのかね?」
「そうだな。今はいろいろとやることがあるから国内に居ない事も多いだろうが、多分メインはこの国になるんじゃないか?」
「おお!そうか」
国王の顔に隠し切れない喜びと興奮が浮かんだ。
そして瞬時に宰相と視線を合わせ、この件を赤竜を討伐するべきと考えている自国の者達を丸め込むための交渉材料の一つに出来ないかと着想した。
実力的に冒険者のランクでSに相当する者が自国に留まるというのは、国家にとってとても意味があるものなのだ。
例え有事の際に国家の依頼を受けてもらえなかったとしても『高ランクが腰を落ち着けている国』という事実があるだけでも影響がある。
あとは赤竜を警戒している数人の者達を説得する事が出来れば、いろいろと懸案を解決する事が出来るのだ。
国王と宰相が目線で算段を取り合っていると、部屋の外がかすかに騒がしい事に気が付いた。室内に居る者の視線が扉の方へ向けられる。
慌てたような声が遠くから聞こえるが、徐々にこの部屋に近づいてきているようだ。
「まさか……」
ディアス国王はそれが何なのか見当がついているようで、額に手を当てて溜息をついた。
そのうち扉のすぐ外に騒ぎの元が来たらしく、その声はわざとらしく言った。
『いやあ、散歩していたら部屋がわからなくなってしまいましてね。おっとこの部屋だったかな?』
『困ります!どうかお戻りを!』
がちゃりと扉が開けられ、紺色の髪の優しそうな青年がひょっこりと顔を覗かせた。
「これはディアス陛下ではありませんか!申し訳ありません。部屋を探していたら迷ってしまいまして」
青年は容姿を裏切らない穏やかな声をしていたが、そのセリフはまるで大根役者が台本を読んでいるかのような聞こえだった。
「……下手な言い訳はやめなさい、ルーク王子。大人しく部屋で待っていられないのかね?私が国家機密などを話している最中だったら君でも罪に問われる可能性もあるのだぞ」
「申し訳ありません。幼い頃、リディア王女と一緒に城中に落書きしても笑って許してくれた陛下なら、これくらいの事は許してくれるかなぁと。それに、陛下が誰と会っているか、何の話をしているかは知っていましたしね」
悪気無く話す青年の後ろから、彼と色合いが似たような服装をした男性たちが青ざめた顔で頭を下げていた。
「ディアス国王陛下!真に申し訳ありません!」
「お止めしたのですが、我らの力足りず……」
「気にしなくていい。ご苦労だったな」
青年は春澄とシド、ユキへ視線を走らせると、笑顔を収めて背筋を伸ばした。
「失礼します陛下、入室、及び発言の許可を頂けますか?」
「はぁ……その気満々で乗り込んでおいて何を言うか」
「ありがとうございます」
微妙にかみ合っていない会話をしながら、青年は迷わずシドの近くへ来ると腰を低くし、膝を折った。
「初めまして。貴方がかの赤竜殿ですね。私はペンタミシア王国の第二王子、ルーク・ファンドラント・ペンタミシアと申します。赤竜殿が言葉を介する事が出来ると聞き、どうしても直接お話させていただきたく、こうして参りました」
彼の目は、シドだけを真っ直ぐに捉えている。
「貴方に真実をお聞きしたい。赤竜殿、貴方は何故その昔、ペンタミシア王国を壊滅させたのですか?」
「またその質問か」
先ほど質問されたばかりの事を再び聞かれ、シドが不機嫌そうに言葉を吐き出す。
「ルーク王子。それはこちらで聞くと言っただろう?」
「では陛下。どうかお願いします。今、聞いてくださいませんか?」
「……既に聞いた後だよ。それを聞くためにこんな強引な手に出るとは。君は何故だか、妙なところで頑固さがうちのリディアとそっくりだよ」
ディアス国王は何度目になるかわからない溜息をつくと、気まずげにへと春澄達へ言った。
「突然すまないね。名乗った通り、彼は隣国の第二王子だ。基本的に問題のない人間性なんだが、欠点を挙げるとすれば自国愛が非常に強くてね」
「ええ、私は国をとても愛しています。だからこそ昔からずっと疑問でした。何故我が国だけが過去壊滅状態に陥らねばならなかったのか。……ペンタミシア王国は、黎明の花が咲き乱れる美しい国です。文献によれば、花の生息場所は現在の比ではなかったと聞きます」
黎明の花とは、幅の広い花弁が20枚ほどふんわりと重なり合っている可愛らしい植物で、自身を構成するすべての場所から用途の違う油が採れる非常に実用的な植物だ。
地中へ伸びる根からは武器や金属製品の手入れ用に適したもの、花を支える少し太めの茎からは調理用、花弁からは主に肌に適したものが採れ、花の色によって効能や香りが違う。
昼に刈るよりも夜明け頃、つまり黎明に刈り取ったものの方が油の質が高いとの事で、そのまま名前の由来となっている。
摘まれた花の殆どはそうして油の抽出に使われるが、根と茎の境目から僅かに採れる部位は妙薬の材料にもなり、茎や花も一応食用にもなるという実に多才な花だ。
用途だけではなく、その見た目も素晴らしい。
油分を含んだ花弁は艶やかに日の光を映し、雨上がりには花の中心に露を溜め、普段とは全く違う表情を見せてくれる。
文献によれば人工的に栽培されているものの他に、王宮の庭や、森の中、人の往来する街中の道端や、使われていない山道など、あらゆる場所に生息し国中を素晴らしく明媚にしていたようだ。
今でも国には黎明の花があちこちに生息している。
しかし、昔より生息地が減ってしまったのは、花粉を運ぶ役目をしていたグロスホーネットという蜂の一種が当時赤竜によってごっそり数を減らされてしまった事と、生き延びたものも遠くへ逃げてしまった事が関係して一部の地域では花がそのまま枯れてしまい存在できなくなったせいもあるのではないかと推測されている。
赤竜に干渉される事が無ければ今も現存したかもしれない光景でも空想したのか、ルーク王子がギリッと唇を噛んだ。鋭い眼差しでシドを射抜き、手の平に爪を食い込ませている。
「黎明の花が咲き乱れるペンタミシアは、さぞやよく燃えたでしょうね……」
押し殺したような、掠れる声で呟かれた言葉は無意識だったのだろう。はっと我に返ったルーク王子は俯いて『申し訳ありません……』と呟いた。
深く息を吸い込み、時間をかけてそれを吐いてから再び上げた顔からは、先ほどの形相はすっかり消えていた。
その様子を見たシドが無感動に言葉を吐く。
「我には理解出来んな。お主の知人が死んだわけでもあるまい。気にせず今を生きればいいであろう?」
「貴方達上位の竜種は、気高く高貴で温厚。自らは人間を襲わないとされていた。その竜が唯一襲った国が、その後なんと言われているかご存知ですか?」
「…………」
「ペンタミシア王国に何かしらの穢れがあったからだと。ペンタミシアこそが邪に身を落とし、その被害を貴方が受け狂ったのだと。……そう思っている者達が、今だ存在します。濡れ衣であるなら誤解を解きたいし、我が国が貴方に何かしたのなら、今さらと言われようとも謝罪をしたいと思っています……私個人からの、非公式な謝罪になってしまうと思いますが……。どうか、貴方の口から何があったのか聞きたい。真実を話せるのは貴方しか居ないのです。お願いします!」
王子の想いは、今まで必死に抑えてきたものなのかもしれない。それが、件の赤竜が言葉を解す事が出来ると聞き、居てもたってもいられず行動に出たのだろう。
温度の感じられない視線を返すシドに、まるで自分の熱を移さんばかりにルーク王子は必死でシドを凝視する。熱を移せば、この竜の感情を動かせるとでも思っているように。
互いの鼓動が聞こえそうなほど静かな空間で、状況を見守っていた春澄が口を挟む。
「つまりあんたの言いたい事はこうか?『赤竜に襲われた自分の国が悪かったとは思いたくはないが、もしかしたら何か竜を怒らせる事をしたのかもしれない。もやもやした恨みを抱えるのも気持ちが悪いから、出来れば真実を聞いて恨みの先をはっきりさせたい』と」
「っ!私はそういうつもりは……!ただ、真実が知りたくて……確かに、赤竜殿を恨んでいないとは、言えませんが……」
淡々と問う春澄を凝視し、心外だというように目を見開いたルーク王子には動揺は見られなかった。
なるほど、と春澄は感心する。こういう場合、自分の恨みの先をはっきりさせたくて蟠りを抱えているものだと思うが、この王子は心底『真実』を知りたいだけのようだ。
国に落ち度があろうとなかろうと、国を愛する気持ちも、その愛する国を害したシドへの感情は変わらないのだろう。
そして先ほどの態度から、それを表に出す事は筋違いであると王子もわかっている。
「そうか、邪推して悪かった」
ユキが心配そうに様子を伺うなか、意外にもシドが諦めたように息を吐き出した。
「一度なら話してもよかろう。だがそこにいる人間のように、我から直接聞きたいと言い出す者が現れても、我は次からは知らぬぞ」
「……え、……ほっ!本当ですか!?」
話が聞けるまで粘り続けそうな気迫を纏っていたルーク王子は、シドの口から出た返答を理解するのに数秒の時間を要してから前のめりになり叫びを上げた。
「で、では!今からお話し頂けるのでしょうか!?」
「良いと言っておる」
「はい、よろしくお願いします!」
「ち、ちょっと待ってくれるかね」
シドの近くに行儀悪くも座り込んで聞く体制に入ったルーク王子に、ディアス国王が待ったをかけた。
「先ほど赤竜殿は二度目は無いと言った。であるなら、急いで席を整え他の者も是非とも呼びたいのだが、構わないだろうか。ルーク王子、君のお付きの者達も他に居るのだろう?」
「あ……そうですよね。赤竜殿、他の者も呼んで構いませんか?」
「あまり長くは待たんぞ」
「もちろんです。早急に」
そう言い放つと踵を返し、ディアス王と一言二言交わしたルーク王子は速足で部屋を飛び出して行った。




