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鉛筆には頼らない

作者: 長井瑞希
掲載日:2015/03/27

 中学生の頃は余裕だった。

 高校生になって少し限界を感じてきた。

 そして高校2年の終わりの頃のことだ。

 進級が、危うくなった。

 まったく課題をしないままテストを受けたわけでもない。

 むしろ、それなりにやっている。

 どのクラスにもいる、まったくやらない奴らより十分にやっている。

 なのに、進級が危なくなっている。

 対して、課題を出していないやつはちゃっかり進級出来る立場にあるという。

 おかしい。

 この世界は、どこかおかしい。

 神様がいるというのなら、どうしてちゃんと頑張っている人を助けてくれないのだろうか。

 ……まぁ、過ぎてしまったことは仕方ない。今は前を見よう。

 そう決意し、俺は勉強に取り組むことにした。


 追試三日前。今日こそは頑張ろう。

 いや、今まで何もしていなかったわけではない。学校から出された課題もあったので、それはやった。

 だが、自主的に何かをやろうという気になれないのだ。

 シャープペンシルを持とうとしても漫画に手が伸び、一日を潰す。

 そんな日々が、今まで続いていた。

 そんな日々とも今日でお別れだ。今までの分を取り返してやる!


 追試二日前。昨日の記憶がない。

 きっと、勉強のしすぎで一時的に記憶を失っているだけだろう。

 ……そう思いたかったのに、自分の周りを囲んでいる漫画の数々は一体なんなんだろう。

 考えようとすれば頭が痛くなった。だから、考えないことにした。

 これが俗に言う現実逃避なんだなぁ、としみじみ思いながら今日こそは勉強したいな、と思った。


 追試前日。記憶はある。

 勉強はした。わからないところは携帯を使って調べたりもした。

 なのに、問題は解けない。

 理由は簡単だ。

 テストは数学なのに、保健体育の勉強をしたからだ。

 ……うん。バカだなぁ……。

 流石に今日は数学の勉強をしよう!

 そのために、まずは邪魔になる携帯や漫画を片付けねば!!

 

 ……やっちまった。

 片付けをしていたら、いつの間にか午後の三時だ。

 だけど、おかげで邪魔になるものは消えた!

 部屋もきれいになった!

 だから、頑張った自分へのご褒美に少しだけ……。


 現時刻、八時。

 どうやらご飯の時間のようだ。

「じゃ、ちゃんとご飯食べて頑張ってね!」

 母が言った。

 ……ん? そういえば八時にしては空が明るいような……?

 テレビをつけてみると、どの局もニュースばかり。つまり……

「今日の試験、頑張ってね!」

「あ、うん」

「困ったときは鉛筆転がせよ?」

「……ああ」

 いや兄よ。さすがに高校生にもなって鉛筆転がして答え決めるやつはいないだろ。

 なんて口には出せず、俺は家を出た。

 何とかなると、いいなぁ……。


「では、始めてください」

 試験開始だ。兄は、何を血迷ったか俺の筆箱に鉛筆(番号がちゃんと書いてあるやつ)を入れていたようだ。

 ……そんなことをする前に俺を起こしてくれよ。

 さて、気を取り直して問題を解こう。

 

 二十分がたった。残りは二十五分だ。

 テストは……半分ほど埋まった。だが

(……わからん!!)

 どれも記号問題だったり、整数の答えを出す問題なのだが、さっぱりわからん。

 ……しかたない。アレを使う時が来たようだな!!

 カンニングペーパーなど、俺には必要ない。俺に必要なのは……!!

「カラカラカラっっ……」

 ……2、か。

 ありがとう、兄。なんとかなりそうだ。


 のこり、十五分。

 とりあえず、全部埋めた。見直しなんか無意味なものだ。さて、どうしよう。

「かわいい絵でも描いて、先生におまけの点数もらえ」

 突然、兄の言葉を思い出した。

 (……やることないし、描くか)


「回答をやめてください」

 ・・・やれることはすべてやった。あとは結果を待つだけだ。

 テストに鉛筆は必要なのかもしれない。

 このテストで、それが学べた気がする。


『 結果  仮進級 』

 俺は、おちた。

 と言っても、進級はさせてもらえるようで、ただもう一度テストを受けなければいけないらしい。

 ……やっぱり、勉強するのが一番だ。

 鉛筆には、頼っちゃダメだな。


 

 

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