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悪魔の住む石  作者: Aino
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宝石

「あ、如月。今日は俺の母親、出かけてるから、でかい声で喋れるで。」

亜希は、顔を真っ赤にしながらしゃれたドアの中に入った。千都世が、彼女を部屋に案内する。中は高級なお店のようにきれいに掃除されていて広い。梨乃が住んでいた豪邸よりは少し狭いが、とても裕福そうな雰囲気である。

「この前、如月が梨乃の父親の後をつけたら女がおったんやんな。」

千都世が言った。真剣な眼差しで亜希を見つめる。

「はい。その女の人の名前はおそらく『リカ』です。梨乃のお父さんがそう呼んでいたから。それで、来週の頭から同居しようって言っていたんで、もう同居してると思います。」

亜希はハキハキと言った。千都世がうんうんとうなずく。

「あと、梨乃のお父さん、梨乃のお母さんが死んで良かったって言ってたんです…。だから、もしかしたら梨乃のお父さんがお母さんを殺したんじゃないかって…。」

この話も付け加える。でも、千都世は首を横に振った。

「別にそうとは限らんと思うで。…そうや、録音してんやろ。それ聞かせてえや。」

千都世は慎重に物事を判断する性格である。亜希は、この前録音した音声ファイルを開いて再生した。

「『じゃあ、奥さんは亡くなられたんやね。』『そうや。だからもう心配せんでもいいで。ちょうど良かったわ。…そういえばリカ、同居はいつにする?』」

そこまで流れた時、千都世は「止めて」と言った。亜希は、その声に反応して、一時停止ボタンをタップした。

「『ちょうど良かったよ』って、自分が殺したんやったらそんなこと言わんと思うで。『ちょうど良かった』っていうのは、自分も奥さんを消したいとは思ってたけど、別の人が殺してくれたから、ちょうど良かったっていうことやと思うわ。おそらくは。」

千都世が丁寧に説明する。亜希はあぁ、と理解した。

「…ということは、梨乃のお父さんの他にも梨乃のお母さんを恨んでいた人がいるってわけですよね。一体誰が…!?」

「そうやんなぁ。でも、梨乃のお母さんがそんな恨みを買うようなことをするとは思われへんし。これは、一方的な僻みや妬みかも。そうなったらきりないやん。難しいわ…。」

千都世はまた考えこんだ。亜希はふっと時計を見た。…6時を過ぎていた。

「あっ!私の家の門限、6時なんです!ごめんなさい、帰ります!」

亜希はポシェットを肩にかけて立ち上がった。千都世もさっと立つ。

「ごめんな、また調査したら報告お願いな。俺も出来れば考えとくし。じゃあ、また、メッセージ送って」

ガチャン、とドアノブを慌ただしく回す。亜希は少し残念に思いながら千都世の家を出た。クラスでトップの足の速さで自宅に向かう。早くしないと亜希の母、彩子の堪忍袋の尾が切れるからだ。あるいは、もう切れているかもしれない。


次の日、亜希、奈々絵、小夏、蒼璃が教室に入ると、いつもよりクラスがざわめいていた。

「昨日の夜、赤口んちに借金取りのヤクザがおったらしいで!」

誰かがそう叫んでいる。「赤口」というのは、4人の天敵、奈緒のことだ。4人が、ランドセルを背負ったままクラスを見渡していると、クラスメートの聡美(さとみ)(けい)が近寄ってきた。この2人は、亜希たち4人ととても仲がいいのだ。

「この話、ほんまやねんて。亜希は地区ちゃうから知らんかったと思うけどな、奈緒と家近い人は、ヤクザの声で夜寝られへんかったらしいで。」

聡美が言った。圭もうなずく。

「ウチらも同んなじ地区やけど、その時間はお眠りタイムやったから。知らんかった。」

圭がペロリと舌を出した。亜希たちも思わずクスリと笑う。

「おはよう!聞いて聞いて!」

同じく、亜希たちと仲の良い真穂(まほ)もやって来た。

「あたしのママ、奈緒のママと仲良いねんけど、奈緒のパパ、毎日ギャンブルとかゲーセンで遊びまくってて、しかも酒飲みで女ったらし。だから借金も返されへんねん。ママが言ってた!」

真穂が得意げに言った。それを聞いていた他のクラスメートたちも、「ええっ!」と新しい情報にかぶりつく。

その時、チャイムが鳴った。話をしていた児童たちが、バラバラと四散し、着席する。

「おはようございます。今日は授業参観ですから、12時下校です。」

担任教師の高野が、ノートをチェックしながら言う。先ほどの話で、皆そのことを忘れていたのだろう。みんな、あっと声を上げた。その時には、奈緒がきていた。彼女の仲間、さくらに、玲も。

「あ、お母さん!」「ママ!ここ!」次々に児童らの母親が入室する。

「あ、お母さん」

奈緒の声が上がった。みんなの視線が、奈緒の母、咲子に集中する。

「え…」

なんと、奈緒の母は、借金取りが家に来るにも関わらず、体中に宝石をちりばめていたのだ。ネックレスに、指輪、ブレスレット、髪飾り…。

「赤口さんとこ、すごく着飾ってますやんね…」

「借金取りが家にきてるらしいのに、本物のダイヤモンドって…」

どの母親も口々にヒソヒソと話す。

(おかしいな…。お金無いはずやのに…。あの宝石嘘もんなんかな…?)

亜希は思った。ミステリー好きの亜希探偵は、事件の匂いがするらしい。おかげで、授業には全く集中出来なかったのだ。後で母の彩子に叱られるだろう。


授業参観が終わり…

「奈緒のお母さん、おかしない?」

「うん、おかしい。」

小夏や奈々絵、蒼璃も、亜希探偵と同じことを思っていたようだ。

「ちょっと、奈緒のお母さんを探ってみいひん?」

小夏が言った。亜希はもちろんうなずく。奈々絵、蒼璃も賛成した。

「よし、じゃ、母親軍団説き伏せて、夜の外出許可をとろっか!」

亜希はズンズンと帰り道を進んでいく。小夏たちは、慌てて彼女に続いた。


「咲子さん、あれはマズかったんじゃ…?」

「でも…ほかの親御さんたちに軽侮されるようなまねはしたくないんです…。」

「そうやんな…。」

暗い小学校の門の陰で、2人は話していた。…それを、亜希たち探偵が息をひそめて聞いている。いわゆる、「盗聴」だ。

(奈緒のお母さんと喋ってる人、誰なん?)

声からして、あきらかに男だが、誰とまでは分からない。

「ねぇ、逃げません?ここにいてもろくなこともないんですから。」

そこまでしか聞こえなかった。探偵たちは、一生懸命耳を傾ける。

すると、奈緒の母、咲子と、見知らぬ男が出てきた。亜希たちは、とっさに公衆電話の陰に隠れる。

(あっ!)

男の正体が分かった。亜希、小夏、奈々絵、蒼璃の目に映っていたのは…担任教師、高野英治だったのだ。

男の正体が分かった途端、宝石の謎も解き明かされた。

(あの宝石は、高野先生が奈緒のお母さんに買ってあげたもの。つまり…高野先生と奈緒のお母さんは密通していたのよ!)

それから間もなく、高野教師は学校に辞表を提出し、奈緒の母、咲子と一緒に姿と行方をくらました。一方、奈緒は、九州の親戚に引き取られて行った。


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