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悪魔の住む石  作者: Aino
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山奥の怪しい影

「ってわけで、帰ってきてん。」

学校の休み時間、亜希は梨乃のことを奈々絵、小夏、蒼璃に話した。

「でもさぁ、亜希、いいなぁ。憧れの早水先輩と2人っきりで旅行やで。私も中川先輩と…」

早速小夏の妄想が始まった。彼女は、「早水先輩、完全に亜希のモノやん!」とだだをこね、新しい憧れの先輩を見つけることに専念していたらしい。そこで見つけたのが、大阪府のエリート校の「星光学院」に通っている、中川裕司という中学1年生だ。少し乱暴な言い方をするが、ルックスも、ガタイも、かなりいいらしい。

「もう、また…?この前浜松から帰る時もずっと言っててん。あきれるわぁ。」

蒼璃が言った。奈々絵は、はっと思い出したように蒼璃を見た。

「そういえば、蒼璃、受験日、いつなん?」

前にも挙げた通り、蒼璃は中学受験をするのだ。

「四天王寺と教育大附属と、あと帝塚山は1月の中旬くらい?で、西大和が1月の下旬かな?」

「す、凄い…、いっぱい受けるんだね。」

奈々絵が言った。凄さに圧倒されて、言葉を失っている。

「どれが第一志望?」

小夏が訊いた。

「うん。四天王寺が第一志望。あ、でも西大和も好きやねん。」

蒼璃は、いつもはあまり染まらない頰を紅潮させて熱弁した。

「すごい…志望校愛がやばい…蒼璃、あんた恋愛したことないやろ。志望校にしか。」

亜希の言葉に、3人は笑った。

すると、教室の前の方から、騒ぐ声が聞こえた。

「わぁ!このブレスレット、可愛くない?」

聡美と圭だった。イタズラ好きの2人は、担任の机を覗いていたらしい。それを、学級委員の仁川卓朗が止めようとしている。

(あのブレスレット、どこかで見たような気ぃする…)

亜希はそう思った。

その時、3時間目開始を告げるチャイムが鳴った。…と同時に教師が入室する。高野の代わりに来た、西田(にしだ)康太(こうた)という教師は高野よりも少し年をとった男の教師である。

「早く座りなさい。もうチャイムは鳴りました。」

落ち着いた雰囲気の教師だ。西田は、聡美と圭を厳しく叱責した。

「このブレスレットは僕のじゃないです。多分前の先生のものやと思うから、保管してるんです。」

西田はそう言ってブレスレットを引き出しにしまい、算数の教科書を開いた。

「比例と反比例の法則で…」

授業が始まっても、亜希は先ほどのブレスレットで頭がいっぱいだった。どこでそのブレスレットを見たのだろうか…。


「あの山奥で、やっぱり宗教活動が行われているらしいで。それも、キリスト教とか仏教じゃなくて、有名じゃない宗教やねん。聞いたこともないわ。」

千都世が言った。学校のパソコンで検索したのだ。

「何ていう宗教?」

「ムーラフィー教。これがこの宗教のホームページ。」

千都世は印刷した紙をヒラヒラさせた。亜希が紙面を読む。

「『ムーラフィー教 体験者募集中!場所…長野県 野辺山原 八ヶ岳山頂付近◯◯△△□お問い合わせ…◯◯◯◯-◯◯◯-◯◯◯まで…。怪しい雰囲気、ないですねぇ…!?」

ごく普通のホームページだ。亜希は首を傾げた。

「いいや。怪しい雰囲気を出さないでやるんやと思う。プロは。」

千都世が言った。亜希はふーんと相槌を打った。

「じゃあ、奈緒のお母さんもこの宗教に…。」

亜希が言った。千都世はうーんとうなる。

「『奈緒のお母さん』っていうのは、この前野辺山原に行った時すれ違った人やんな…?」

千都世が言った。亜希はうんとうなずき、

「結構美人ですよね。咲子っていうんです。」

と付け加えた。千都世はまたうなった。

「ああ、梨乃、また帰ってきてほしいー。」

亜希は、天井に向かってつぶやいた。ずっと前、梨乃が1人で帰ってきて、亜希の家に泊まって行った時のことを思い出す。

「あっ!」

思い出した。あのブレスレットのことを。千都世はびっくりしてひっくり返っていた。

(梨乃が持ってたパワーストーンとかいうブレスレットと、先生の机に入っていたブレスレット…同じや!)

「如月、どうしたん?」

千都世が訊いた。亜希は、ブレスレットのことを話した。

「ということは、如月たちの前の先生と梨乃の母親が、何か関係ある…。」

「前の先生は、その、赤口咲子と密通してたんです。」

「ややこしくなってきたなぁ…。」

「あの、私、先生の机からブレスレット盗んで来ます!何か分かることがあるかもしれへんし。」

…というわけで、亜希探偵は泥棒をやることになったのである。


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