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ゾンビヘイブンon-line  作者: 習志野ボンベ
四章
58/59

リーサルウェポン!!!

「……4、8、5、2、3……ふむ、これで最後だね」



 手にした小型銃――レーザー照準器へ楽しそうに数字を打ち込んでいく銀行リーダー、二階堂さん。

 で、すべての発射コードを入力するとレーザー照準器から、新たなガイド音声が響く。



『解除コードを確認しました。臨時発射権限者として認証します。電力チャージ完了まで30秒。安全措置として砲撃開始までロックオンした標的へのレーザー照準を続けてください』




 ――その案内に二階堂さんはよゆうたっぷりの笑みを見せた。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 着々と作業を進めてく二階堂さんの横顔――不思議そうにながめたサユリさんがたずねてくる。 

 


「……タッくん。あの銀行リーダーさん、なにしてるんでしょう?」



 首をかしげた剣術美少女さんから、さっきまでのタタリガミみたいなどす黒いオーラは消えてた。基地ヘイブンの悪口に激怒してたのも忘れ、あっけにとられてる感じだ。

 まわりが先にキレると、なぜか怒れなくなってしまう、あの現象のせいだろうか?

 


 ……あ、いや。そんなことより。

 二階堂さんの持ってるアレが予想通りのものなら、これからスゴイことになるかもしれませんよ。

 ちょっと警戒しといたほうがいいかもしれませんね。



「――え? なんでですタッくん? それほど危険なものには見えないのですが……」



 現代兵器に関しては武人の勘もニブるのだろうか、ちょっとボケてるサユリさん。

 それでも念のためサユリさんを下がらせようとしたとこで――空がかすかに明るく光った。



 チカッ……



 最初は見まちがいかと思ったけど、そうじゃなかった。

 小さな点にしか見えなかった閃光が黒雲を白く染めながら、どんどん面積を増していく。

 そして、わずかのち――ぶあつく垂れこめた雲をぶちぬき、一筋の光の柱が降り注いできた!

 瞬く間に視界を真っ白に染めた光の渦に、オレは確信させられる。  




 ――うん、やっぱアレって衛星砲サテライトキャノン

 いつかユズキさんが使ってたSFみたいな超兵器だ!!!



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ――カッ!!!!!


    

 垂れこめてる雲をぶちぬき、はるか上空にある衛星軌道から舞い降りた砲撃がすさまじい光を放つ。

『ジェイクズ・ラダー』とかいう攻撃衛星からのビームはかなりの太さがあった。

 ていうか。前にユズキさんが使ったときより大きくなってるんじゃなかろうか?

 そのぶん、チャージ時間がかかるようになってるような気もするけど――。

   


 で、その極太の光は二階堂さんのつけた狙いどおり、ボスゾンビと戦闘ドンパチやってるエリアの中心に一気に突き刺ささった。

 圧倒的なまぶしさ、目が痛くなるほど強烈な純白の光があたりを包み、基地ヘイブンとの戦いで弱ってた超大型ゾンビ・アルコフリバスを一気におおい尽くす!



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 同時刻、

 基地ヘイブンとアルコフリバスとの戦場近く、物陰にて――、



「な……なんなんだ、これは!!?」

 


 降り注ぐ白光のシャワー。その輝きは危険なほどに強い。隠れていたガレキの影にも押し寄せてきた反射光に病院ヘイブンリーダー・院長サカマキは混乱していた。

 震えるその手にはクロスボウ――銃と弓を合わせたような武器があり、先端の矢じり部分には毒々しい色合いを放つ液体が光っている。

 塗られていた液は、もちろん病院のヘイブンスキルにより作り出した猛毒だ。基地ヘイブンの猛攻にまぎれ、サカマキはこの毒矢を打ち込むチャンスを狙っていたのだが……。

 


 ……しかし、その野望は驚異の超兵器の前についえようとしている。 




 砲撃の少し前――、

 アルコフリバスへの攻撃機会をうかがい、サカマキは基地ヘイブンの目を盗み、戦場に潜入スニーキングを果たしていた。



「――ガルガンチュアはあの青二才にしとめられてしまった。だが、まあいい。やつはしょせん前座にすぎん。真のボスは今度こそ、わたしが倒す!!」



 目ざわりなライバルをハメて、巨大ゾンビのえじきにするつもりが、あのタクとかいう若者はあろうことか反撃し、ガルガンチュアを倒してしまった。 

 他ヘイブンにボスを二体とも倒されてしまう最悪の事態――功績を稼ぎたいサカマキはおおいに焦ったものの、もう一体、さらにボスがあらわれたことに安堵し、同時にそちらへ標的を切り替える。

 大枚はたいて買っておいた『光学迷彩クローキングデバイス』を使用し、病院ヘイブンのリーダーは基地ヘイブンが周囲を固めるボスゾンビとの戦場に潜んでいったのだった。  


 

「――ふっふっふ。基地ヘイブンの戦闘バカどもめ。わたしのためにボスを弱らせ、装甲に傷をつけてくれておる。ありがたい話だなァ」


  

 あとはアルコフリバスが弱り切ったところで傷口――装甲がはがされた部分に毒矢を打ちこめばいい。 

 それだけで超大型ゾンビ撃破の称号は自分のものになるのだ。サカマキはゲスな笑みを見せ、その機会を待つ。 

 実際、サカマキの思惑は、あと少しのところでうまく実現していただろう。

 基地ヘイブンメンバーの猛攻が体力を削り、さすがの超大型ボスも足取りが怪しい。弱り切った今ならば毒の一刺しで十分とどめになりうる状況だった。



――だが、銀行ヘイブンリーダー・ハルトマンの決意と行動が、サカマキの計画を打ち壊す。



「……ふふふっ。そろそろいいだろう。悪いな、基地ヘイブンの諸君。お前たちの貢献は忘れんよ」



 と、成功を確信し、物陰でほくそえんでいたサカマキの耳へ――。

 基地ヘイブンメンバーのざわめく声がとどく。



「なんだよ、これ!?」

「なにが起こってるんです?!」

「……第三次大戦だ」



 謎の異変、思わず猛攻の手を止めた兵士たちが見上げる頭上。

 天を染める閃光にサカマキは気付いたが――そのときにはもう遅い。



「……こ、これは、いったい……?!」



 ぼうぜんとつぶやいたサカマキは――かなう寸前だった願いとともに、光の奔流に飲みこまれていった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 同時刻、オレとサユリさんが見つめる戦場では――、


 

 ビームを相手の頭上に射撃シュートォォォ!!! 超ッ、エキサイティィィィング!!



 ――てな感じに標的を撃ち抜いた衛星砲サテライトキャノンが、そのまま薙ぎ払うように地上を横切ってた。



「GUOOOOOOOOOOOHHHHHHHH!!」



 ――ボフッ、ヂュンッ!!!

 


 極太の光柱に飲みこまれたアルコフリバスから、最期の叫びが漏れる。

 わずかの間、抵抗を見せたものの、サテライトキャノンの放った超高熱の前に強固な装甲が耐え切れず溶けだした。体内の水分が一気に蒸発して内側から巨体が破裂し――次の瞬間。超大型ゾンビのシルエットはほどけていく。



 ……うお。どこぞの魔砲少女さんもビックリな大威力だ!  



 そして、さらに――、 



「目がッ、目がぁぁぁぁーっっ!!!!」



 滅びの呪文でも聞かされたのだろうか? どこかで聞いたようなオッサンの絶叫も遠く響く。

 その絶叫も廃ビルの群れも、熱戦を繰り広げてた基地ヘイブンと巨大ボスも――なにもかもがすべて白い光の中に吸いこまれていった。

 


 ……な、なんて超威力なんだ、衛星砲サテライトキャノン

 さすが最後まで吸引力の変わらない唯一の兵器!!!

 やっぱ衛星砲ってすごいよな。最後まで威力たっぷりだもん!


 

 天変地異みたいな状況を目の前にして、オレもサユリさんも口を開けない。

 オレの頭に浮かんでくるのはアホな感想ばかりだ。



 ――こうして、しばらく視界を白く染め上げたサテライトキャノンは、いきなり幻のように消え去る。



垂れこめる雲の一部、ぽっかりと丸く打ち抜かれたとこから青空が見え隠れしてた。

 さらに発射の余波だろうか? 虹色にゆらめく光幕オーロラも空に出現してる。



「……わぁ、キレイですね」



 と、空を見上げたサユリさんが思わずつぶやいてしまった気分もわかる。

 さっきまでゾンビがうごめいてた戦場とは思えない、幻想的で美しい光景だった。


 一方、ファンタジーな上空とは打って変わり、地上には、まだまだ混沌が渦巻いていた。

 着弾に遅れて暴風と爆風が駆け抜け、土煙、煙、蒸気――さまざまな気体がまき散らされ視界をふさぐ。

 その後しばらく、もうもうと立ちこめたぶあつい煙幕は、ゆっくりと時間をかけて薄くなり、戦場に吹いた風に押し流されていった。

 そして、ようやく見通せるようになった戦場、目にしたものにオレは絶句させられる。



「うわぁ……」

「……な、なにもかも」



 そう……サユリさんの言葉通り。さっきまで戦場だったそこには、なに一つ残されてなかった。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



 ……うわ!! ホントに……なにもかもなくなっちゃったよ!!



 フル・フロンタ……じゃなかった真平フルフラットになってしまった景色に声も出ない。

 ぼうぜんと立ち尽くすオレのサユリさんの目の前。焼き尽くされた平原がただただ広がる。

 ちょい前まで廃ビルやら巨大ゾンビやら基地ヘイブンやら、どこぞのゲスなオッサンやらがそこに立ってたとは思えない光景だ。

 きれいさっぱり何もなくなった地表は、砲撃の熱のせいか紅く光ってたけど――それもすぐにくすんだ色合いにもどる。



 そんな、あっけなくそっけない景色が広がるさなか――、  

 唐突に無機質な機械音声が腕の端末から届く。 



『――アルコフリバスの撃破を確認、周囲に敵影およびゼータ反応はありません――』



 と、あっさりミッション終了らしき連絡を告げた音声は、続けて驚くべき内容をオレの耳に届けた。


 

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