05:あなたさまは、もしかしてコミュニケーション障害者ですか?
とても嫌なことを思い出してしまった。
焦った。
辛かった。
苦しかった。
痛かった。
悲しかった。
泣きたかった。
心に大きな穴が空いた。
僕は生まれてきた意味。
生きている理由が分からなかった。
いや。
意味と理由は今でも分からない。
分かりたくない。
汚い世の中、酷い世界で「生」について何かを考えることは無意味。
強い者が弱い者を食らう。
ただそれだけ。
僕は弱者。
何もできない。
ただ強者の踏み台になるためだけに生まれてきたのかもしれない。
思い出すだけでも背筋が凍る。
身体中が熱くて痛い。
周りは真っ暗。
周りからは白い目でみられた。
思い出しただけで吐き気がする。
「やぁ」
今日も来た。
自称悪女。
自称異常者。
自称変態。
意味不明な女の子。
黙っていればそれなりに可愛く見えるかもしれない容姿を持つ神出鬼没なコイツ。
会いたくないときにまで、やってくる。
「悪魔か。またきたん……いや、何でもない」
やはり今日は気分がすぐれない。
話気にもなれない。
「いつも思うんだけど第一声にそればかりだとさすがに飽きる。てかそれしか言えないの?」
「うっさい」
「もう、それもやめなよ。あなたさまは、もしかしてコミュニケーション障害者ですか?」
「……っ!」
なぜコイツは。コイツは。コイツは。コイツは――!
「あれれぇ~。だんまりしちゃって。的中かい。これって笑ってもいいですか?」
相手を傷つけることを。
怒らせる台詞をピンポイントで言うんだよ。
付き合いきれない。
「帰る」
「あ、宿題……」
「宿題? んなもんしるか!」と吐き捨てて僕は、その場を去った。