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04:悪逆無道をひたすら進む悪女。非道で非常識な可憐な美少女。それが、わたし

「今日も来たのか?」

「今日も生きてるの?」

 僕とコイツは、またいつもの場所で出会ってしまった。

 正確には僕は二十五階もある自分のマンションの屋上で横になっていた。

 屋上の中心にある芝が植えられた広いスペースで、今朝コンビニで買った週刊少年誌を読んでいた。

 世界を愛すことができず。

 世界を憎み。

 世界から逃れようとしている僕が、なぜ週刊少年誌を読んでいたのかというと。

 答えは、とても簡単。

 漫画というのは作者が頭の中で描いた世界を、紙の上で具現化したものだからだ。

 つまり漫画を読んでいるときは僕は、この世界の住人ではなくて漫画という世界の住人になれる。

――現実逃避。

 しかし、それは短き夢。

 夢は簡単にみることができる。

 でもね。

 覚めることも簡単にできるんだ。

 突如コイツが目の前に現れて、僕は漫画という名の夢の世界から現実世界に引き戻された。

 いつものことだが意外にも驚く。

 なぜなら、声が聞こえるまで近寄られても全く気配を感じない。足音も聞こえない。

 一体全体どうなっているのだか。

 今日も「忍者かよ」と思いながら僕はコイツに、

「うっさい、悪魔」

 と言う。

 何回も何回も人のことをバカにする。

 というか自殺しようとしてる人がいるのに止めずに「死ね」とかありえない。

 だからコイツは悪魔なんだ。

「いきなり『うっさい』やら『悪魔』とか普通、言うかな」

「君に普通は、とか言われなくない」

「あれ? もしかして自覚なし」

「なにが?」

 どうせ、また頭悪いやら記憶力ないアホとか言いつもりなんだろう。

 しかし今日の僕は、気分がとてもいいからそんくらいじゃへこたれない。

「自殺しようと考えたり、実行しようとする時点で君も普通じゃないよね。つまりわたしと同類。異常者。変態」

 僕のグラスにヒビがはいった。

 頭悪いと言われようと、記憶力がないと言われようが、心に響くようなことはなかった。

 しかしコイツと同類と指摘され、心に届いたばかりか殴りに来た。

 言葉の暴力。

 コイツと同類扱いされるのは嫌だ。

 けど否定できない自分が嫌いだ。

「泣いてもいい?」

「生きていることに感謝してるのなら泣け」

「……」

 本当の本気で泣きそうな自分がいる。

 どうしよう。

「感謝できないのなら泣くなボケェ」

「……理不尽じゃないか?」

 コイツはなんで上から目線で語るのだろうか。

 コイツはなんで上司でもないのに、上からズバズバとそういうことを言うのだろうか。

「バカじゃなかろか。あ、ごめん。頭悪かったもんね」

「えっ」

「その答えは違う。間違いだよ」

「……じゃあ正解は?」

「悪逆無道をひたすら進む悪女。非道で非常識な可憐な美少女。それが、わたし。けして理不尽は振りかざさない」

 たまに意味を分からないことを言う。

 これがいい例だ。

 というか自分で自分のことを美少女って、おい。

「先生。意味がわかりませぇ~ん」

「めんこい。言った本人ことわたしですら意味不明」

「なんだそれ」

 本当に意味不明すぎる。

「つまりさ、真理や道理ってなんだろう」

「はい?」

「これ宿題ね」

「いや待ってくれ。意味がまったくわからないんだが」

「世の中ね。分からないこと理解しがたいことだらけなんだ。答えを見つけることができなくてもさ」

 コイツ……女の子は言う、

「それらを考えたりするのも面白いことなんだよ」

「……うっ」

 振り向きざまに見せられた笑顔にやられた。

 あの笑顔は反則だ!

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