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02:質問に質問で答える人は、高確率で頭の悪い人なんだよね

 翌朝。

 いつも通り学校へ行かず、僕は二十五階建てのマンションの屋上にいた。

 昨日と同じように、二メートルはある転落防止用のフェンスを超えた。

 やはり高い。

 でも気づかされたこともある。

 それはフェンスの向こう側に広がる世界が、とても綺麗だということだ。

 最期に良い物をくれてありがとう。

 今度こそさようなら。

 一歩。

 たったそれだけ進むだけで、新しい僕こんにちわ。

――さようなら。

「あれれぇ~」

「うぇ?」と間抜けな声を漏らしながら僕は声をした方に眼を向ける。

 僕から見てフェンスの向こう側に、昨日と同じ女の子がいた。

 不思議そうに僕の顔を見つめると、

「なんでいるの? あ、違う。なんで生きてるの?」

 実は、昨日。結局、死ねなかった。

 この女の子に「感謝してるのなら泣け」と言われた俺は、泣いてしまった。

 僕の情けない姿を隣から眺めていたコイツは「ダサッ」と言葉を残して、その場を去っていった。

 それから一時間近く泣き続けた僕は、夕日が沈むと同時に家に帰った。

 ハイ。情けない話です。

 どうせ俺はヘタレだよ。

 うっさい。俺がいつ死ぬかは俺のかって。

「逆に聞くけど君はなんでここに来たんだ?」

「少年よ。心優しい純粋無垢な美少女のわたしがあなたに一つ良いことを教えてあげよう」

「はい?」

「質問に質問で答える人は、高確率で頭の悪い人なんだよね」

 この女は、喧嘩でも売ってるのか。

「あ、ごめん。頭悪いから死ぬことしか考えられないもんね。本当にごめん。頭悪い人」

 なぜこうも言いたいことをずばずば言ってくるんだ。

 なんで相手を傷つけるような、怒らすようなことをピンポイントで言ってくるんだ。

 さすがにヤラれっぱなしでは男がすたる。

「おい、いいか。世の中には言ってもいいことと、悪いことがあってだな」

「あなたって本当に頭悪いバカ?」

「んだと」

 これってキレてもいいですか?

 いいよね?

 いいよな?

 答えはきいてねえ。

「昨日、言ったよね。わたしは普通じゃなくて異常者だって」

「あ……ああ。たしかに言ってたな。だからなんだよ」

「忘れてたんだ。頭悪いバカなら直しようがあったんだけど、記憶力がない頭悪いバカだと絶望的だわ」

 お願いだから、これ以上は何も言わないでくれ。

 俺、メチャクチャ傷つきやすいんだよ。

「だから普通の人の常識はわたしには通用しない」

「……」

 この女の告白は遠まわしに「わたしは厨二病真っ最中で~す」と言ってるも同然だと思うのは僕だけか。

 どちらにせよ、もう話したくない。

「君、友達いないだろ」

 だから僕も女の子が傷つきそうなことを言う。

「ご名答。でも君もね」

 返す言葉もございません。

 完敗です。

「……帰る」

「待ってよ。ここから飛び降りないの?」

「うっさい」

「せっかく第一発見者になれると思って来てみたのに。あなたって気がきかないよね、ほんっと」

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