第三話:暗黒執事リオデストロイ!
「え!? じゃあ、あんたが呉羽の彼女?」
私の隣で、ちゆりという人は私と呉羽とを交互に見ている。そして、何故か彼女はニヤリと笑って私を見てきた。
「ふぅん、あなたが呉羽の彼女なんだ? あんまり趣味はよくないのねぇ。でも、この私を前に堂々と挑戦状を叩き込んで来るとはいい度胸じゃない」
「はい?」
イイエ、アナタニ挑戦状ヲ叩キ込ンダ覚エハ毛頭ゴザイマセン。
私はただ、呉羽に先制攻撃を仕掛けただけである。
その時、バンと建物のガラスが音を立てる。
『ミカ! その女の言う言葉には惑わされんな!』
見れば目の前に、必死な形相でガラスを叩く呉羽の姿が……。
「別にまだ惑わされてはいませんよ。でも否定しないって事は、デートは本当にするんですね?」
『それは──』
「ええ、その通りよ。仕事が終わったら夜までずっと」
ちゆりと言う人が呉羽の代わりに答えた。夜までずっと、という言葉にギュッと胸が締め付けられ、目にジワリと涙が浮かぶ。
「呉羽のバカ……嫌いです」
『ミカ?』
その時である。
チリンチリンという音と共に、猛スピードのママチャリが、ジャジャッと音を立てて横向きで止まった。
道には止まった際に付いたと思われるタイヤ痕と、摩擦熱による煙と焦げ臭い匂い。
どれだけのスピードを出していたのか窺える。
そしてママチャリから降りたのは、黒い燕尾服に金髪がよく映える乙女ちゃんの執事の杜若吏緒その人である。
因みに、ママチャリの籠には葱の飛び出した買い物袋が覗いている。
「私に何か御用ですか? ミカお嬢様」
「吏緒お兄ちゃん!!」
『な、何でいきなり杜若が出てくんだ!?』
呉羽の驚愕する声を聞いた。
「凄い美形……おまけに執事?」
「お、王子様っぽいのにママチャリ……」
二人の女性はそれぞれに衝撃を受け、そんな事を述べている。
私は吏緒お兄ちゃんに駆け寄ると、「ナイスタイミングです!」と言ってそのまま彼に抱きついた。
『なっ!? 何してんだミカ!!』
真っ赤な顔で怒る呉羽。
バンとまたもやガラスを叩いた後、『そこで待ってろ!』と言って携帯を切ると目の前から姿を消す。
「ミカお嬢様?」
見上げると、戸惑った顔の吏緒お兄ちゃん。
何だか顔が赤いのは、全速力でママチャリを走らせた為でしょうか?
でも、息切れもしてないし、全然汗も掻いてないんですよね。
それどころか凄くいい匂いがするし。
思わず顔を埋めて匂いを嗅いでしまった。
一瞬、吏緒お兄ちゃんの体が強張ったけれど、直ぐ様呉羽の声がして私は顔を上げた。
「ミカ! 離れろ!」
「嫌です! 呉羽がその人とデートするというのなら、私も吏緒お兄ちゃんとデートするんだもん!」
「なっ!?」
呉羽は口をパクパクとしている。
すると吏緒お兄ちゃんは、私と呉羽とを交互に見てからちゆりさんを見て、なるほどと頷いた。
「つまりはミカお嬢様は呉羽様に愛想を尽かしたわけですね」
「へ? 吏緒お兄ちゃん?」
「おいっ! 何もそこまで言ってねーだろーが!!」
そのとおりである。
悲しみと憤りと嫉妬がごちゃ混ぜになって、今にも爆発しそうであるが、私はそこまでは思っていない。
出来る事なら今すぐ仲直りして、ラブラブしたいと思っているのだ。
しかし今は、作戦実行中。目には目を、歯には歯を作戦で私と同じように、やきもちをやいてもらう作戦である。
この際、男性は誰でも良かったのだけれど、私の知り合いの男性でこんな事を頼めるのは吏緒お兄ちゃん位なもの。
日向君には乙女ちゃんという相手が既に居りますし。
他の……例えば、生徒会長の大空竜貴だったり、乙女ちゃん兄の薔薇屋敷輝石だったりしたら……。
二人は私に好意を寄せている。
なので、この二人に頼むと、これを期に本物の恋人になろうと色々と画策してきて、何かと面倒な事 になりそうな気がする。
その点、吏緒お兄ちゃんならそんな心配はありません!
あの二人みたいに恋人になろうなんて思わないだろうし。それにそれに、何たってお兄ちゃんはスナイパー渋沢ですからね!
女子供にゃめっぽう弱い、最後は必ず助けてくれるさスナイパー!
と、いった感じで吏緒お兄ちゃんも助けてくれると思ったのだけれど……。
「分かりましたミカお嬢様。新しい恋人として、私を選んでくれた訳ですね」
そう言って、輝かんばかりの笑顔で私を見下ろす。
はぅあっ! 眩しい! 眩しすぎるであります!
それは一種の兵器でありますよ、お兄ちゃん!
おまけにキュウッと抱き締めてくる。
なのでその時、吏緒お兄ちゃんが呉羽に対して挑戦的な笑みを浮かべていたなんて知る由もなかった。
「なっ! てめっ! ミカを離せよ!!」
呉羽が怒鳴り此方に近づく気配がする。
でも、抱き締められている私には見る事は出来ない。
そして、パチンという音が頭上でしたかと思ったら、ザザッと何人かの気配を私の背後に感じる。
「うおっ!? 何だよお前等!」
「く、黒子!?」
「何処にこれだけ隠れてたの!?」
背後から聞こえてくる台詞によって、どうやら吏緒お兄ちゃんが黒子を呼んだらしいという事が分かった。
顔を上げてみてみれば、吏緒お兄ちゃんは不敵に笑いながら、口に手袋をぶら下げている。
顔の横には裸の手があり、どうやら先程のパチンという音は素手で指を鳴らした音のようだ。
そうだよね、今手が塞がってるもんね。
手を叩くなんて出来ないよね──って、何で黒子を呼んでるの!?
それにこれって、なんかヒーローもののワンシーンのようだよね!?
黒子達がヒーヒーって奇妙な掛け声上げそうだよね!?
ほら、通り過ぎる子供がなんか期待した目で見てるよ! 呉羽を、これから変身するのかなぁって目で見てるから!
それじゃあ何かい? 吏緒お兄ちゃんはヒーローもので言うところの悪の化身、暗黒執事リオデストロイかい?
そんでもって私はリオデストロイに捕まった一般ピーポーかい?
て事は、ここはヒーローに助けを求めるのかい?
正義のヒーロー、サンバトラー呉羽に……。
(※脳内妄想注意報)
♪チャラチャチャーチャラッチャ、チャラチャチャーチャラッチャ、パラパパパン、パラパパパン、チャラッチャーン!(無駄にヒーロー物っぽい曲)
バルブントスの名の下に世界征服を企む暗黒執事リオデストロイ。
世界中に執事をばらまき、人々から自ら働く意志を奪わんとしていた!
そして今、人質をとりサンバトラー呉羽の前に立ち塞がる。
「キャー! サンバトラー呉羽! たぁすけてぇー!!」
「ははは! 人質をとられては手も足も出まい! 今日こそはその息の根を止めてくれる! サンバトラー呉羽!」
「くそっ、卑怯だぞ! 暗黒執事リオデストロイ!! 悪に染まりしお前の心、このサンバトラー呉羽が正義の名の下、この日輪の輝きの下に成敗してくれる! とうっ!」
その時、日輪の輝きがサンバトラー呉羽を包み、聖なる力が彼に悪に打ち勝つ力を与える!
全身に漲る正義の力をその手に集め、サンバトラー呉羽は暗黒執事リオデストロイに立ち向かう!
「サンバトラー必殺奥義サンバニッシャー!!」
「説明しよう! サンバニッシャーとはサンバトラーが日輪(太陽)のエネルギーを集めた非常に地球に優しいエコな攻撃なのだ!」
「ミカお嬢様? 一体何を言っているのですか?」
「へ?」
非常に困惑した様子の吏緒お兄ちゃんの声がして、私はハッと我に返る。
おおぅっ、思わず妄想の彼方へとトリップしてしまっていたようであります。
しかも声に出してしまっていましたかな? いやはやお恥ずかしい……。
「ご、ごめんなさい。あまりの事に現実逃避を……」
色々とありすぎて、もう何が何やら……。
すると、吏緒お兄ちゃんは私を痛ましげに見下ろすと、再びギュッと抱き締めてきた。
「ミカお嬢様が幸せであるならと諦めておりましたが、よもや呉羽様…いえ、如月呉羽がこのようにミカお嬢様を裏切るとは思いませんでした!」
「勝手に勘違いすんな! オレはミカを裏切ってねー!」
「ほう? ではそこにいる女性は何ですか? ミカお嬢様の、あなたが彼女とデートすると言う話は?」
そういえばと私がそちらに顔を向けると、繭羅さんもちゆりという人も、茫然として私達を見ていた。
話に付いていけないのだろう。
「それは、この女に無理矢理一日恋人にされたんだ! この事にオレの意志なんてこれっぽっちも無い!」
そうなんだと私は今度は呉羽を振り向こうとしたけれど、吏緒お兄ちゃんがそれを出来ないように、がっしりと抱き締めていて叶わなかった。
「例え、あなたの言う通りだとしても、ミカお嬢様の事を考えれば断れた筈。やはりあなたにはミカお嬢様を任せられません」
そう言うと漸く抱き締める力を弱めてくれる。
けれど、完全には放してくれなくて、私の事を真剣な顔で見下ろしてきた。
「吏緒お兄ちゃん?」
どうしたのかと言うように見上げていると、吏緒お兄ちゃんは青い瞳を切なげに揺らし、
「やはりあなたを他の男には任せられません」
「え? ひゃあ!?」
私はひょいと抱え上げられた。それもお姫様抱っこである。
いきなりの事に、その見た目からは想像できない位がっしりとした首に抱き付いてしまう。
その時、何かの拍子でカシャーンとメガネが落ちてしまった。
「ああっ、Myオアシスが!」
私の大事なMyオアシス(メガネ)は滑って黒子達を越え、誰かの靴に当たって止まった。
しかしその誰かというのは呉羽で、彼は身を屈めてそれを拾うと私に向って掲げてくる。
「ミカ、いい子だからこっちに来るんだ。ほら、お前の大事なメガネだぞ」
ああっ、これは呉羽お得意の物質ではありませんか!
サンバトラー呉羽が聞いて呆れますな!
ヒーローの風上にも置けぬ所業。
と、その時てある。
「え!? ミカちゃんその顔……あのショーウィンドウの?」
「うそ……凄い美形じゃない!」
ハッ! しまったぁ!
私はバッと顔を覆うが今更隠してももう遅い。
もうこうなったら開き直るしかないであります。
私は顔から手を外すと、吏緒お兄ちゃんがこんな事を言ってきた。
「ミカお嬢様ご安心を。メガネであれば私がすぐにご用意致します。ですので、あんな卑怯な手を使う者の所へなど行く必要はございません」
「本当?」
と、私は吏緒お兄ちゃんに顔を向ける。
「ああっ、こらミカ!」
呉羽が怒鳴った。
だって呉羽、私は只今作戦実行中なのであります。
呉羽をいいように手のひらで転がし、翻弄せねばならぬのです!
そして今、手のひらで転がされているかどうかはさて置き、いいように翻弄はされているようです。
と言うか、なんか私自身も翻弄されている感は否めない気がしないでも無いような……。
隊長!! 何故か最初に立てた作戦が大幅に脱線しつつあります!
落ち着けお前達! まだ修正可能な段階だ! このまま作戦を続行する!
イエッサー!!
「吏緒お兄ちゃん、早く私を連れていって下さい。私、吏緒お兄ちゃんとデートします」
「なっ!?」
ショックを受けたような呉羽の声を聞いた。
私は呉羽の方を向くと、泣きそうな顔になりながら、「呉羽のバカちん!」と言って吏緒お兄ちゃんにしがみ付いた。
いえ、嘘泣きではございません。
本当に泣きそうなのです。
だって呉羽のあんな顔見たら……。
ううっ、凄く傷付いた顔してました。
でもでも、いいんですよね? これで後々ラブラブ出来るんですよね? そうですよね、杏也さん!
私は心の中で杏也さんに語り掛けるが、思い浮かぶのは彼の鬼畜な笑顔だけ。
…………。
………。
……。
は、果たして、私は杏也さんに頼って良かったのでしょうか?
なんか一番頼ってはいけない人のような……。
私はそろそろと顔を上げ、もう一度呉羽を見ると、彼は顔を強張らせて私から顔を逸らしてしまう。
ガーン! もう顔も見たくないって事ですか!?
あうあうっ、なんか本格的に泣けてきました。
そうですよね、私が杏也さんの言葉を鵜呑みにしたばっかりに……。
「ううっ、私の方がもっとバカです……」
吏緒お兄ちゃんの肩に顔を埋めての呟きだったので、きっと吏緒お兄ちゃんにしか聞こえなかっただろう。私を抱き締める吏緒お兄ちゃんの腕に力が籠もったのを感じた。
「……如月呉羽……あなたにはこの場でお仕置きをと思いましたが……」
なぬっ!? お仕置き!?
私がビクンと身体を強張らせて不安げに吏緒お兄ちゃんを見ると、彼は私を見て安心させるようにフッと微笑んでからキッと呉羽を睨んだ。
「ミカお嬢様に免じてまたの機会にして差し上げます」
その言葉を聞いて、ホッと胸を撫で下ろす。
「それでは参りましょうか、ミカお嬢様」
吏緒お兄ちゃんはそう言うと、私をお姫様抱っこしたまま歩きだす。
私はこのままでいいんだろうかと悶々と悩みながらも、何も出来ずにいた。
++++++++
「ちょっと待ってぇ! ミカちゃん、これは全部おばさんが悪いのぉ!! お願い! 呉羽を見捨てないでぇ!!
って、あら? ミカちゃんは?」
「出てくんのおせーよ。もう行っちまったって……」
「えぇ!? そんな! せめて私が出てくるまで、何で引き止めておけなかった、私の息子!」
ガクッとその場に膝を付く音羽。
建物の外で起こっている出来事を、スタッフの一人に聞いて急ぎ駆け付けたのだが、既に事が終わった後であった。
「それで誤解して他の男に連れてかれたと……何も出来なかったのか、私の息子!」
ダンと地面を叩きつける音羽。
「んなの、あんなミカの顔見たら何も言えねーよ」
呉羽は思い出していた。
あの傷付き泣きそうになっているミカの表情。
「だからこそ引き止めて誤解を解いてあげるんでしょーが! そんな所はあの人そっくりだ、私の息子!」
「っ! あの人ってあいつの事か!?」
呉羽の脳裏に父親の顔が浮かぶ。
最近はよく話すようになったが、嫌いな事には変わらない。
そんな男とそっくりと言われて、少なからずショックを受ける呉羽。
しかし呉羽の質問に答える事なく、音羽は声の限りに叫んだ。
「ミカちゃんカァムバァーック! お弁当マァイラァーヴッ!!」
ミカが去っていったであろう方向に向って手を伸ばす。
「って! 結局弁当かよ!」
呉羽の突っ込みが虚しく響くのだった。
一方、今回の原因になった深山ちゆりと、そしてミカの友となった葛城繭羅はと言うと……。
「はぁー、なんかここまで無視されると怒る気も起きないわ……何てゆーか、いきなり執事は出てくるわ。黒子は出てくるわ。しかも執事ママチャリで来るし、でも何故か帰りは高級車。残ったママチャリは黒子が乗って帰ってくし……」
「ち、ちゆりちゃん……あの、私帰っても……」
「おまけにまゆの妹分みたいだと思ってた呉羽の恋人は、本当はすっごい美人だったし。まゆはまゆで、私を差し置いてARAMISのモデルになったっていうのに、いつまでも垢抜けなくてオドオドしてるし!」
「ひぇっ、ちゆ──」
「もう! だからオドオドしないでって言ってるでしょ! 私があんたをいじめてるみたいじゃない! 不本意だわ!」
バンと壁を叩いて繭羅を睨み付けるちゆり。その音でビクリと震える繭羅に益々不機嫌そうな顔をした。
「いい! あんたはこの私を負かしたんだから、もっと堂々と自信を持ってもいいもんじゃないの!? ていうか、持ちなさい! でないと私が惨めだわ!」
「でも、私なんかよりちゆりちゃんの方が……」
自信なさげに目を伏せる繭羅。
ちゆりはイラッとしながら、
「仮にも“睨みモデル”で通ってるんだから、私を睨み付けるとかしてみせなさいよ!」
「だって、好きで睨み付けてる訳じゃないし……メガネが無いと良く見えないから、どうしても目付きが悪くなっちゃって……」
何処までもオドオドする繭羅に、ちゆりは呆れた顔を向ける。
「だったらコンタクトにすればいいじゃない。だからいつまでも垢抜けないのよ。おまけに根暗なのよ!」
「だって……写真撮ってる時、皆が私を見ててなんか恐い……」
「それがモデルの仕事でしょーが!!」
ガーと吠えるちゆり。美人なだけに迫力も凄かった。
「だって……だって……」
「もうっ! だってだって言い過ぎ! 一人前にファンだって付いてんでしょ!? あんた!」
生意気だと言って、人差し指をグリグリと繭羅の額に押しつける。
「いたたたた。爪が痛いよ、ちゆりちゃん。それにファンって言っても、なんかその人たち恐いんだよ? 自分の事を罵ってくれとか、踏んでくれとか、汚物を見るような目で睨み付けてくれってお願いしてくるんだよ?」
「そ、それは確かに恐いわね……」
眉を顰めて繭羅の額から指を離す。
「でしょ? それに私が着る服って、ロック系っていうか、物凄く恐い感じの服でね。露出度も高くて、私はもっとヒラヒラの可愛いのが……」
「あんたバカ?」
いきなり罵られきょとんする繭羅。
ちゆりはフンと鼻で笑う。
「いい? モデルって言うのはねぇ、着る服は選べないの! 用意された服を如何に着こなすかがモデルなの! どんなに露出が高くても、例え乳首が見えちゃってても、文句言わないで着こなすのがモデルなの! 第一、あんたにそんな可愛い服──」
そこでちゆりは、繭羅が何か言いたそうにしているのを見た。
「何よ?」
「えっと……ちゆりちゃん、いつも着る服に文句言ってるかなー……いたっ!」
ベチッと額を叩かれ、繭羅は涙目になる。
ちゆりは目を据わらせると言い放った。
「私はまだ一流じゃないからいいのよ」
何だか納得いかないながらも、これ以上ちゆりが不機嫌になるのは良くないと、繭羅は頷いてみせる。
そして「あ」と声を上げた。
「そう言えば、ちゆりちゃんデートはどうするの?」
折角仲良くなったミカの恋人とのデートである。
何だか、ちゆりを見る目が非難がましくなってしまう。
しかし、ちゆりは手をを振ると、
「あー、なんかもういいわー。ムシャクシャしてたから、いじめがいのありそうなの探してただけだしぃ。あんなの見せられた後じゃ、デート行く気も失せちゃったわ」
それを聞いて、ホッとする繭羅。
今すぐミカにメールで教えてあげようと、携帯を取り出していると、
「その代わり、繭羅私に付き合ってくれるわよねぇ?」
「え……?」
ニッコリと笑ってそう言ってくるちゆりを見て、繭羅は携帯を取り落としてしまう。
「わ、私レポート書かなくちゃ……」
「フン、そんなの私が男に頼んで書かせてやるわよ。とにかく、あんたは今日は私にとことん付き合う事。いいわね?」
有無を言わせぬ雰囲気。顔を近付け凄んでくるちゆりに、繭羅はうんと言わざるをえなかったのである。
な、何だろう、暗黒執事って……しかもリオデストロイって……。
吏緒ファンの方はすみません。と一応謝ってみたりなんかして……。
てな感じの今回のお話、如何でしたでしょうか。
いい感じに杏也に振り回されている一同です。
次回、吏緒とミカ二人っきりです。どうなるかな? 自分でもドキドキ。