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三題噺もどき2

真面目な

作者: 狐彪

三題噺もどき―にひゃくななじゅうなな。

 


 だから嫌なんだ。

 だから嫌いなんだ。

 だから。

 だから。

「……」

 だから、私なんて。

 生きてても意味がないんだ。

「……」

 こんなこともできない。

 出来て当たり前ができない。

 他人は出来るのに、私は出来ない。

「……」

 だからこうして怒鳴られる。

 訳も分からないままに喚き散らされる。

「……」

 正直、何を言っているのか全く分からないけれど。

 何かが気に障ったらしい。

「……」

 何だろうか。

 何を言われているんだろう。

 ―ホントに心当たりがない、

「……」

 んん……?

 それは、あなたのお気に入りの子がやっていたと認識しているのだけど。

 違うのだろうか。

 私の勘違いだろうか。

「……」

 あぁ、でもあの子が「できる子」だと思っているから、なにも「できない子」である私のせいだと思っているのか。

 あぁ、勘違いをさせてしまったのか。

 思い違いをさせてしまっていたのか。

 私が悪いのか。

 だからこうして怒鳴られているのか。

「……」

 あぁ、やばいやばい。

 意味は分からないし、訳も分からないが、嫌味がヒートアップしている。

 関係ない事まで話し始めた。いやまぁ、正直最初から私は関係していないが。

 今の話に全く関係ない、話ということだ。

「……」

 一度、水浴びでもしてきて、頭を冷やしてきたらいいのに……。

 私が何も言わずに、ただ俯いて、うんうんと真摯な態度で聞いているのが、果てしなく気に食わないらしい。

 どうしてだろう……。こんなにいい子にしてるのに。

 出来ない子なりに、いい子をしているはずなのに。

「……」

 なんですか。

 一度深呼吸をして、落ち着いてくださいとでもいえばいいのでしょうか。

 それは私ではなくあなたのお気に入りがやったことですと言えばいいんだろうか。

 私は全く関係ないので帰りますと踵を返せばいいのだろうか。

「……」

 何をしても逆上する癖して。

 何も言わずに俯いていれば。

 そんなしてないで何か言え。何とか言え。これはどうしてこうなった。はっきりしゃべれ。どう責任をとるんだ。文句でもあるのか。お前はいつもいつも。あの時だって。なんでこんなことができない。あいつは出来るのに。お前は何なんだ。

「……」

 口を開けば、昼に食べたオムライスが出てきそうで無理だし。

 顔を上げたら睨みそうで無理だし。

 というか、正直言うと、ここに居ること自体が無理だし。

 あーなんか涙が出てきそう。

「……」

 あぁ、泣けばいいのか。

 そうすれば、終わるだろうか。

 泣いて喚いて事の詳細をつまびらかにすればいいのか。

 それで納得するのか。

「……」

 するわけないな。

 逆に、泣くなだの文句言うなだの嘘をつくなだの。

 私ごときの話は全て、聞くに値しないし、信用するに値しないらしい。

「……」

 まぁ、毎日毎日。

 嫌な気分で出社して。

 空元気もいいところな気分のままに仕事をしてしまえば、不愉快には思うかもなぁ。

 私の空元気は、割とうまく隠しているつもりではあるのだが。

 んーもっとうまくしないといけないのかぁ……。

 だからこんなに、怒らせてしまう。

「……」

 そろそろ落ち着いただろうか。

 あまりに何も動きがないから飽きたらしい。

 いや、それにしても長かったなぁ。

 この人ただでさえ話長いのに……私だから特にってところだろうか。

「……」

 真面目に聞いている風なのが伝わったらしい。

 なにより、なにより。

「……」

 何も言い返したりはしない。

 辺にわめいたりもしない。

 関係なくとも何も文句は言わない。

 ひたすらに受け身の姿勢。

「……」

 それで何が悪い。



 お題:深呼吸・空元気・水浴び

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