エアリアン
虚構新聞×ノベルアップ開催の、ショートショートコンテスト『嘘』に間に合わんかったので、投稿します。
『最初の空気食は、いつからだったのだろうか。』
皆様も彼等の思想を、一度は聞いた事があるだろう。
“地球の動物も植物も虫も可哀想。
いのちを食べるなんて、凶悪で愚かな行為。
我々エアリアンは、新鮮な空気だけで生きていける。”
元々は、都会暮らしに嫌気が差し、田舎で自給自足暮らしを始めた人々であった。
他の人々よりも、少し敏感な──これは筆者の私見だが──人々が集まり、共同体を形成する。
山の中で暮らしを営む彼等の生き方は、偶に記事に紹介される程度であった。
エアリアン──彼等が一際、注目されたのは、SNSの炎上騒動に寄ってだったことは、皆様の記憶に新しいだろう。
彼等はより高みを目指すため、との理由から高地に住み、まるで仙人のように、霞を食べているかのような生活をしている。
そのためであろうか、SNSで彼等の生活が投稿された際、“標高高い系” ”山越えて空”などといった揶揄が集まり、炎上騒ぎを起こし、SNSサーバーがダウンしてしまったのだ。
騒ぎに気付いたエアリアンの方が、“これは天意である” “怒りの雷が落ちたのだ” などといった投稿を別のSNSにて行い、一気に燃え広がってしまった。
後に、その投稿はエアリアンの方ではなく、彼等を騙った偽物であったことがわかったが、後の祭りであった。
わざわざ、彼等の住処を探し出し、物を投げ入れたり、誹謗中傷の類を書いた紙を貼り付けるなど、事件化が加速し、ついには彼等は、本当に標高の高い所に追いやられてしまったのだ。
満足な食事を得る機会が少なくなり、やがて彼等は──エアリアンの子ども達は、“空気食”をできるようになった。
標高高く、酸素の薄い高地──空気が少ない──は勿論のこと。
地上に降りた彼等は、地上の空気を“爆食い”し、吐き出すと、まるで濾過されたかのような、新鮮な空気を産み出した。
彼等の光り輝く吐息は、“神の息吹”と呼ばれるようになり、今では崇められている。
エアリアンの寿命がひどく短いのが、近年、問題視されているが、それでもエアリアンを目指す者は、年々増加している。
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そら‐ごと【空事/▽虚事】
本当ではない事柄。つくりごと。
えっと、連載もがんばります。