7話 スケルトン販売依頼
事情聴取のため兵の駐在場に行き、事の顛末を伝えた。
スタンピードから逃げていた冒険者は、アリエスが知っており、名をヤスランというこの街に来たばかりで、新人に毛が生えた程度の冒険者だった。
道中で力尽きてへばっており、アリエスの方が早くギルドへの報告を行ったらしい。
また、応援に来ていた冒険者達には魔物の回収と魔物に踏み荒らされた柵などの補修が依頼されており、無駄骨にならないような配慮がされていた。
「事情聴取の協力ありがとう。
また今度あったら飯でも奢らせてくれ」
「ありがとうございます、楽しみにしています。
アニエスもまた明日な」
「おう!
スケルトンの貸し出し頼んだぜ」
僕は二人から依頼達成のサインをもらい、スケルトンにおぶさりながら他の畑にも顔を出し、依頼達成のサインをもらっていった。
スケルトンを回収してゾロゾロ歩いているととても目立っていて気になる。
そういえば収納空間に入れられるか試す予定だったと思い出し、早速入れてみることにした。
スケルトンに触れ、収納空間に収めるように念じてみると問題なく収納できた。
これで大量のスケルトンを引き連れて歩く必要がなくなり一安心だ。
そう言えば収納空間内のスケルトンと感覚共有したら中が見れるんだろうか?
試しに感覚共有を使おうとするが、感覚は繋がらなかった。
「ん?箱庭内のスケルトンには反応があるな」
そういえば安全マージンをとるためにスケルトンが1体残った状態で箱庭の扉を開いていたんだった。
早速感覚共有してみると辺りには魔物の死骸や土に岩、木等が漂っており、宇宙空間を彷彿とさせる。
光はもちろんないが、スケルトンは光ではなく魔力で世界を見ているため、光のない箱庭の中でも視覚情報は生きていたようだ。
現状では出来ることは何も無いが、スケルトンを送り込めることが分かったのは収穫だろう。
一旦箱庭内のスケルトンとの感覚共有を切り、冒険者ギルドの様子を調べるためにギルド内のスケルトンに感覚共有を使った、まだ業務時間のため、2体になったスケルトンが忙しなくゴミ捨てを行なっている様子だったため、スケルトンを1体収納空間から出して走らせる。
そこでふと大量のモンスターを討伐してレベルがどうなったのか気になった。
そういえば最初の大量レベルアップの通知がうるさかったため、通知を切っていたことを思い出す。
結果的に逃げる時にあの大量の通知が流れてきて気が散るということがなくてよかったが、今なら確認してもいいだろう。
「ステータスオープン!」
――――
LV23
名前:フウマ
HP:150/160
MP:50/3200
STR:50
INT:620
DEF:40
DEX:90
AGI:40
LUK:40
◆チート
チート能力1:死霊魔法LV6
スケルトン召喚、死霊使役、感覚共有、ショートカット、服従腕輪生成[NEW]、知識共有[NEW]、遠隔指示[NEW]
チート能力2:合成魔法LV6
異種合成、同種合成、収納領域、ショートカット、合成解除[NEW]、素材生成[NEW]、素材化[NEW]
チート能力3:箱庭LV3
扉開閉、虚無の箱庭、ポイント変換[NEW]、ポイント交換[NEW]
◆スキル
テイムLV1
◆称号
なし
◆WP
0PT
――――
一気にレベルが13も上がっていた。
格上の魔物を100体以上倒したと考えればおかしくないが、異常なレベルアップに頭がついていかない。
大量の経験値のおかげで全てのチートスキルがレベルアップしている。
早速どんなスキルを覚えたか、詳細を確認する。
服従腕輪生成
死霊に命令する権限を他者にも持たせることができる腕輪を生成する。
死霊はこの腕輪を装備したものの命令を聞くようになる。
ただし、死霊が倒した魔物の経験値は召喚者に入る状態を維持する。
また、命令権限の最上位者は召喚者のままである。
知識共有
使役する死霊は知識を蓄積し、1体の死霊が覚えたことは別の死霊にも共有される。
遠隔指示
感覚共有している状態のスケルトンに指示が出せる。
合成解除
一度合成したものを元に戻すことができる。
ただし、形状が大きく変化したり、消費されたものがあるときは解除できない場合がある。
素材生成
一度でも素材として使用したものはMPを消費して合成用の素材として生成し、合成に用いることができるようになる。
素材化
意思のない物体を手のひら大の玉に変換できる。
変換された玉は変換前のものと同じ素材として扱える。
ポイント変換
箱庭の中にあるもの全てをWPに変換できる
ポイント交換
WPを消費して箱庭内に物を生成できる。
かなり色々増えたな。
だが今日は突然の戦闘でかなり疲れているので、検証や実験は明日にしよう。
スケルトンにおぶさりながら移動して、何とか冒険者ギルドに辿り着き、依頼達成を報告。
5つ目の畑の依頼についてはアリエスが気を利かせて可の判定ではあるが達成扱いにしてくれていたので、依頼未達成とはならずに済んだ。
MPもほぼ空だったためいったんゴミ捨て場に行き、マナスライムからマナポーションを生成してもらって飲み干した。
朝と同じようにダストゾンビを生成して討伐し、マナスライムに食べるよう指示してからその場を後にした。
解体場に着いた頃にはピークを過ぎており、解体屋の3人が一息ついているところだった。
「おうフウマ!
大変な目にあったらしいな。
スタンピードに巻き込まれたんだって?
良く生きてたな」
「そうなんだよライクス。
魔物を引き連れてる冒険者がこっちに逃げてきた時は死ぬかと思ったぞ」
「でも無事で良かったよ。
君から借りてたスケルトンをアリエスくんに貸した時に軽く聞いたけど100体以上の魔物が大挙して押し寄せてきたんだろ?
僕は不安でたまらなかったよ」
「ありがとうテッグ。
知り合ったばかりの僕なんかをそんなに心配してくれるなんて嬉しいよ」
「私だって心配していたさね。
主にあんたが死んじまった後に使えなくなったスケルトンとゴミ捨てについてだけどね」
「ハハ、それは酷いなエリンさん。
でも心配しなくてもいいよ。
僕が死んでもこのスケルトンに何か影響があるわけじゃないからな。」
僕は3人とそんな軽口を叩きながら業務終了時間までスケルトン達を働かせた。
時間になり、解散するタイミングになってライクスがある相談をしてきた。
「なぁ、ものは相談なんだが、お前のそのスケルトンをギルドに売っちゃくれないか?
こいつがいるとすごい助かるんだが、お前ほどの男ならすぐにランクを上げていなくなっちまうだろう。
このスケルトンはフウマからレンタルされたものだし、当然居なくなっちまう。
だが俺たちはこいつらを気に入っちまった。
だから何とか売っちゃくれねーだろうか?」
「いいよ。
というか元々販売するつもりだったしな。
ちなみに1体金貨1枚になるが大丈夫か?」
「いいのか!
それは有難いが、しかしそんなに安くていいのか?
明らかにスケルトンにはもっと価値があるぞ」
「いいんだよ。
確かに人件費を考えたら破格の金額だ。
だが、僕にとっては消費が重いとはいえMPで生成できるものだしな。
それに雑用してるのもお金がたまるまでの話だから、あと何回か仕事したら売る相談をしようと思ってたんだ。
さっきのスタンピードで、売るのにピッタリのスキルも手に入ったしな。
だが、売るのはいいがそれは明日にしてもらえないか?
さすがに今日はもう疲れた。」
「それもそうだな。
今日はもうこれであがっていいぞ。
ゆっくり休んでくれ」
「ああ、ありがとう。
お疲れ様」
「「「お疲れ様ー」」」
僕は受付で依頼達成報告を行うと、宿に戻る途中で串焼きを購入して食べながら帰り、宿につくなり倒れるように眠りについた。