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22話 アプルラの町防衛戦④ 最高戦力投入

ギルドマスターのカエラの早すぎる到着に僕は一瞬虚を突かれて固まってしまった。

だが、彼女が張った結界の力はすさまじく、僕の状況などお構いなしにガンロックドラゴンの攻撃を綺麗に防ぎきってしまった。


「どうやら間に合ったみたいだね。

あたいも全力で駆けぬけた甲斐があったよ。」


「レイ!

ギルドマスターはレイが連れてきてくれたのか。」


「ああ、そうだよ。

説明している時間が無かったから攫うようにして運んできて、運びながら事情を説明した感じ。」


レイはあっけらかんとした言い方で言っているが、相当な無茶をしたのだろう。

座り込んで立てなくなっていた。


「フウマ、おしゃべりもいいがまだ戦闘中だ。

現状を説明してくれないか。」


「了解、カエラ。

まずは被害状況から端的に説明する。

Aランクパーティー王救の探索者に死者はいない。

だが、現在このパーティーで戦闘可能な人員は後方担当の僕とマリアーナだけだ。

あとは全員あんたが来るまでの時間稼ぎで全力を振り絞りすぎてまともに立つことも難しいやつらばかりだ。

あと、マルクスはミスリルスケルトンナイトにこちらに運ばせている。

城壁の一部が破壊されているが、幸い端の方だったため被害はそれほど大きくはない。」

「次に戦況だ。

ボスだと思われていた最初のガンロックドラゴンは、フィーリアの決死の一撃で倒せた。

スタンピードの大半の魔物も僕のスケルトン達で殲滅できている。

だが、後から現れたガンロックドラゴン2体とゴルボルというらしい超級の魔物が暴れていて、僕たちはこいつらの攻撃をいなすだけでご覧のあり様といった状態だ。」


「説明ありがとう。

今の説明は私の風の精霊が、領主様と残りのAランク冒険者にも届けてくれた。

遠からず、彼らもここに到着するだろう。」


察するにカエラは、僕の発言を風に乗せて味方の最高戦力と指揮官に伝えてくれたということだろう。

その間もガンロックドラゴンからは砲撃が続いているのだが、光の壁は小動もせずにすべての攻撃を防いでいる。


「それにしてもこの光の壁はいったい…」


「これは私の結界魔法によるものさ。

自分で言うのも恥ずかしいんだが、これでも私は王国の盾と呼ばれているS級冒険者でね。

この程度の攻撃、私にとってはそよ風のようなものさ。」


「え、じゃあなんで…?」


「最初からここにいなかったのか、かい?

それは単純にこの結界魔法が頗る燃費が悪くて長続きしないんだ。

発動中はどんな攻撃も通さない自信があるけど、あともう3分も持たないかな。

結界が切れたら私も気絶しちゃうからね、まとめ役が使ったら気絶しちゃうような魔法を軽率に使うわけにはいかなかったのさ。」


「そういうことか!

それなら!!」


僕は収納領域から販売用に作っていた彷徨う盾を取り出した。

この盾には修復、体力回復、傷直し、MP回復の概念が付与してある。


「この盾を背負ってくれ。

その盾に向かってスケルトンに殴らせればMPも体力も回復していくから結界魔法の持続時間を大幅に伸ばせるかもしれない。」


「何!

そうか、君がマルクス達に付与していた魔法効果の乗った盾か!

よし、さっそく頼む。」


僕はカエラに盾を背負わせて、スケルトンに盾を軽く素早く攻撃するように命じた。


「これは素晴らしいな。

この回復量なら1時間は展開していられるだろう。

この盾は是非この戦いが終わったら購入させてくれ。」


「そいつはよかった。

まぁ売るのは構わないが、まずはあの魔物をどうにかしないとな…。」


こうしている間もガンロックドラゴンの砲撃は続いているし、ゴルボルはゆっくりとこちらに近づいてきていた。

マルクスの移送も光の壁の近くまできているので、あと少しでなんとかなりそうだった。


「一つ質問なんだが、あの光の壁は味方が通ることは可能か?

マルクスをこちら側に避難させたいんだが」


「光の壁にぶつかったら誰であれ弾き飛ばしちゃうから、場所を教えてくれる?

一部だけ穴をあけてそこを通ってもらうから。」


「分かった。

あそこだ、見えるか?」


僕はマルクスを運ぶミスリルスケルトンナイトを指さす。


「ああ、見えた。

結界越しだとミスリルスケルトンナイトがキラキラしているから見えづらいな。」


そうして開けてもらおうとしていたところ、領主様が到着した。


「待たせたな。

カエラくん、結界は後どの程度持ちそうだい?」


「領主様!

お早い到着ですね、この結界なら50分以上は持ちますよ。

この盾とスケルトンくんのおかげです。」


「なんだって?

そいつは朗報だ、この結界を維持したまま戦えるならこちらの被害を気にせず彼らに全力を出してもらえる。」


領主様の後ろから3人の人間が姿を現した。


一人はこの暗闇に溶けるかのような真っ黒い体毛で覆われた2Mくらいの体長をもつ精悍な顔つきの狼獣人の男性。

もう一人は狼獣人の男性とは対照的に真っ白な体毛を持ち、140cm程度の小柄な体格をしたキリっとした顔の狼獣人の女性だ。

この二人はおそらく同じパーティーを組んでいるのだろう。


二人の距離が近いし、どちらも狼獣人だ。

おそらく恋人か家族ではないかと思われる。


「よお、なんかやべー状況みてぇだなぁ。

だが、俺たちが来たからにはもう大丈夫だ。

安心して任せな!」


「もう!

兄さんはそうやってすぐに安請け合いして!」


「わりぃなシロナ。

こいつはにぃちゃんの性分でよぉ。

おっと、新顔も居やがるじゃねぇか。

てめぇの噂は色々聞ぃてるぜぇ?

俺はAランクパーティー最果ての旅人のクロムってんだ。

よろしくなぁ。」


「はぁ、兄さんは本当に仕方ないんだから。

ごめんね、僕。

私も同じく最果ての旅人のシロナよ。

君は小さいのに頑張り屋で凄いね?

後は私たちに任せて?」


僕は怒涛の勢いで喋るクロムとシロナにあっけに取られていたが、なんとか返事を返すことに成功する。


「あ、あぁ。

僕は王救の探索者に支援要因として参加したDランク冒険者フウマだ。

よろしく頼む。」


「自己紹介は済んだか?

悪いが時間がないんだ。

さっそくやつらを倒しに向かってくれるか?」


「あいよぉ。

任せな領主様!

行くぞシロナぁ、付いてこい!!」


「あ、兄さん!

もう!

それでは行ってまいります領主様!!」


二人はあわただしく城壁を乗り越えて走っていってしまった。

獣人種特有の高い身体能力に加えてなにかスキルを発動しているようで、レイの電光石火ほどではないがかなりのスピードで駆け抜けていく。


「我はどうする、クレイグ」


クレイグというのは領主様の名前だ。

今領主様に話かけているのは3Mはあろうかという巨体を持った筋肉質の冒険者で、おそらく巨人族というやつだろう。

見た目は巨大な人といった感じだが、その巨体からは並々ならぬ迫力を感じる。


「グラム、俺たちは最果ての旅人が倒しきれなかった場合に備えて光の壁の前で待機だ。

二人が倒しきれなければ俺たちで敵に攻撃を仕掛ける。

そして、最悪でもあの二体のガンロックドラゴンは倒す。

それでいいか?」


「我に異存はない。

君の方針に従おう。」


「ありがとう友よ。

そういうわけだ。

ここの指揮は君に任せたよカエラくん。」


「了解しましたわ、領主様。

ご武運を」


二人はそのまま城壁から降りて行きそうだったので、僕は慌てて言いつのった。


「あの!

もし、敵を倒しきれないと判断したら4人ともこちらに引いて来てもらえませんか?

僕は戦場に罠を仕掛けています。

1度だけなら確実に敵を倒せるはずですが、味方がいると巻き込んでしまいますので、無理だと判断したら全員で引いて欲しいんです。」


「そうか、保険があるというのはいいな。

ありがとう、その時は君を信じて引かせてもらうよ。

では行ってくる!

この場は頼んだぞ!!」


そう言って、二人もまたこの城壁から飛び降りて光の壁の向こうを目指していった。

領主様は普通の人間種なので流石に城壁の上から降りられるわけがないと思っていたのだが、巨人のグラムが領主様を肩に乗せて降りて行った。


「カエラ、なんで領主様まで前線に行ったんだ?」


僕はカエラにお偉いさんが前線に向かっていった理由を聞いてみた。


「なんだ、知らなかったのか。

この町の領主であるクレイグ殿は武勇伝に事欠かない人物でね。

若いころは王都の剣術大会で優勝していて、剣鬼領主の異名をとっているんだ。

今回は非常事態ということで世界を黒く染めると言われている家宝の魔剣も持ってきているみたいだし、そんなに軟な人じゃないから心配しないでいいよ。」


「なるほど、そうなんですね。」


やはり最前線の町ともなると強い人が配属されやすいのかもしれない。


そう考えて見ているとちょうどミスリルスケルトンナイトが光の壁の穴を通りマルクスをこちらに連れてきているところだった。


そして最果ての旅人の二人が入れ違いになるようにゴルボル達に向かっていった。

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