9話 合成武装
一旦、人気のない街はずれの空き地に移動した僕は、フードの中に隠していたマナスライムを出して指示を飛ばす。
「マナスライム、今から収納領域から大量の生ごみを出すが、それを食べて増殖することは出来るか?」
マナスライムは返事をするかのように体を上下に伸縮してみせた。
これを出来るという返事だと受け取った僕は、収納領域からさっき回収してきた生ごみを展開する。
するとマナスライムは勢いよく生ごみに飛びついて消化を始めた。
しばらく時間がかかるかと思っていたが、みるみるうちに消化していき、30分もたたずに一つ目のごみを消化しきってしまった。
ダストゾンビを消化するのにあれだけ時間がかかっていたのに、マナスライムの力が上がったのか生ごみがダストゾンビになったことで強化されたのか。
真相は不明だが、思っていたよりも早く増殖できそうであることは間違いない。
これは嬉しい誤算だった。
二つ目のごみを消化しきったところでマナスライムが震えだした。
よく観察してみると核の部分が徐々に二つに分かれていっているのが見える。
どうやらマナスライムは単細胞生物のように核分裂で増殖する魔物のようだ。
早速分裂した1体と傷治しポーションを合成してみる。
「合成開始。
ベース指定、マナスライム。
合成素材指定、傷治しポーション。
概念抽出、傷治し。
目的設定、傷治しポーションを生成してくれる新たなる従魔の創造。
イメージ、ゴミを食べることで傷治しポーションを生成するスライムとして再誕す」
よしよし、成功だ。
こいつはヒールスライムと名付けよう。
「ヒールスライムとマナスライムはその生ゴミを食べて増殖してくれ」
僕は二体にそう指示すると、二体が増える間に剣と盾の合成を始めた。
「合成開始。
ベース指定、錆びたカットラス。
合成素材指定、研ぎ石。
概念抽出、修復。
目的設定、武器の強化。
イメージ、剣を使うたびに剣の切れ味が戻っていく、自動修復機能のある剣をここに生成す」
「合成開始。
ベース指定、錆びたヒーターシールド。
合成素材指定、研ぎ石。
概念抽出、修復。
目的設定、盾の強化。
イメージ、盾を使うたびに盾の耐久力が戻っていく、自動修復機能のある盾をここに生成す」
出来た剣と盾を軽く打ち合わせてみる。
すると一気に錆が地面に落ちていく。
最初は折れたり、欠けたりしないように慎重に打ち合わせていたが、錆がほとんどなくなったところで強めに打ち合わせてみる。
どちらも刃こぼれしたりかけたりする素振りはなく、どんどん本来の姿を取り戻していった。
しかも修復という概念を付与したためか、研ぎ石ではどうあっても修復できない剣の持ち手部分に巻かれた皮のほつれや汚れもなくなっていく。
気が付けばどちらも新品同様、あるいはそれ以上にぴかぴかに光り輝く装備として蘇っていた。
「いけるとは思ってたけど想像以上にいい感じだな!
よし、スライムを作り終わったらこの武器に色々能力を付与していくか。」
しばらくすると、ヒールスライムとマナスライムが2体に分裂した。
次は体力回復ポーションと経験値ポーションを合成していくか。
毒消しポーションを合成するのは後でいいだろう。
「合成開始。
ベース指定、マナスライム。
合成素材指定、体力回復ポーション。
概念抽出、体力回復。
目的設定、体力回復ポーションを生成してくれる新たなる従魔の創造。
イメージ、ゴミを食べることで体力回復ポーションを生成するスライムとして再誕す」
「合成開始。
ベース指定、ヒールスライム。
合成素材指定、経験値ポーション。
概念抽出、経験値取得。
目的設定、経験値ポーションを生成してくれる新たなる従魔の創造。
イメージ、ゴミを食べることで経験値ポーションを生成するスライムとして再誕す」
体力回復ポーションを生成するスライムは、スタミナスライムでいいかな。
経験値ポーションを生成するスライムはどうするか。
エクスペリエンススライムじゃあなんか長いし…
そういえば某ローグライクゲームでレベルが上がるアイテムは幸せってつくアイテムだったな。
よし!このスライムはハッピースライムと名付けよう。
僕はこの4匹のスライムに生ゴミを食べてポーションを生成するように命じると次に箱庭の検証に移った。
箱庭スキルのレベルアップで手に入った能力はポイント変換とポイント交換だ。
ポイント変換は箱庭内にあるすべてのものを一括でWPに変換するスキルだった。
一括でしか変換できないので大変不便な力だが、レベルアップで選択して変換できる能力が手に入るのを期待するしかない。
そうじゃないとせっかくWP交換で手に入れたものも一緒に消えてしまうだろうから。
次にポイント交換だが現時点で交換できるものは以下のようだ。
―――
・重力発生 10,000WP
・疑似太陽生成 25,000WP
・酸素生成 10WP
・窒素生成 10WP
・二酸化炭素生成 100WP
・アルゴン生成 100WP
・水素生成 1,000WP
・ネオン生成 1,000WP
・ヘリウム生成 2,000WP
・クリプトン生成 2,500WP
・キセノン生成 2,500WP
・メタン生成 3,000WP
・オゾン生成 3,000WP
・空気組成調整 1,000,000WP
・熱生成 5,000WP
・温度調整 150,000WP
・電気生成 280,000WP
・水生成 100WP
└水草生成(指定可能) ??WP
└水生生物生成(指定可能) ??WP
・大地生成 1,000,000WP
└草生成(指定可能) ??WP
└木々生成(指定可能) ??WP
└陸生動物生成(指定可能) ??WP
└菌類生成(指定可能) ??WP
└家生成(指定可能) ??WP
└大地の起伏生成(指定可能)??WP
└鉱石生成(指定可能) ??WP
└石油生成(指定可能) ??WP
・魔力生成 4,000WP
・第二空間生成 100,000WP
・固定扉設置機能解放 20,000WP
└固定扉移動制限機能解放 10,000WP
└固定扉解除機能解放 10,000WP
・特殊効果付与(指定可能) ??WP
―――
かなり数があり、しかも軒並みポイントが高い!
これを全てポイントを使わずに、しかもいい塩梅で最初から使える状態というのが箱庭スキルを100%のスキルで取得した状態なのだろう。
50%の出力で取得していたら必要ポイント数が減っていて初期からある程度入れるくらいには整えられているといった具合だろう。
流石はワールド級のスキルだ。
??は指定したものと量によってポイントが変わるものだろう。
└がついている項目は派生系で、大本を解放しないとアンロックされないというもののようだ。
これをまともに使えるようになるまでにはかなりの時間がかかりそうである。
まぁ気長にポイントを貯めていくしかない。
とりあえずは第二空間生成を取得までは他の項目にポイントを使う余裕は無いな。
これか、もしくは選択ポイント変換みたいな機能が無いと折角作ってもポイントに変える時にすべてWPに変換しなくてはならないからだ。
一旦この前のスタンピードで箱庭に入れたものをWPに変換してどれだけ貯まるのか確認しよう。
「ポイント変換使用!」
スキルを使用した瞬間に箱庭内にいたスケルトンの反応が消えた。
「ステータスオープン!」
――――
LV23
名前:フウマ
HP:150/160
MP:2950/3200
STR:50
INT:620
DEF:40
DEX:90
AGI:40
LUK:40
◆チート
チート能力1:死霊魔法LV6
スケルトン召喚、死霊使役、感覚共有、ショートカット、服従腕輪生成、知識共有、遠隔指示
チート能力2:合成魔法LV6
異種合成、同種合成、収納領域、ショートカット、合成解除、素材生成、素材化
チート能力3:箱庭LV3
扉開閉、虚無の箱庭、ポイント変換、ポイント交換
◆スキル
テイムLV1
◆称号
なし
◆WP
26,430PT
――――
スタンピードで一気に百体以上の魔物を箱庭に収めたとはいえ、結構なポイントが入っていた。
1度の使用でこれだけポイントがもらえるなら必要ポイントの多さを嘆く必要はなさそうで安心した。
やはりポイントを積極的に貯めるためにも冒険、そしてダンジョン攻略が必須だろう。
ポイント獲得に向けてやる気がモリモリわいてきた僕は、この剣と盾に傷直し、体力回復、魔力回復、経験値取得の効果をつけてダンジョンに潜ろうと考えていた。