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魔神、恐ろしい




 モーリア邸の近くまで行くと、やはりというべきか警備の数がかなり増えていた。理由は明白。俺の横で飄々としているこの男がここの主を殺害してしまったからだろう。


「警備が増えていますね。正面から行くのは危険でしょうか?」


 俺は隣に立つクロヴィスに声をかけた。


「ククク、何を言っておられるのです? それはいらぬ心配です。クロエ様はご自身の強大さにまだ気づいてないようだ。ご自覚がないだけであなたはこの私より遥かに強いのですよ?」


「それは……」


 確かに、俺はかなりの時間をエリーゼさんとの修行に使った。

 精神世界でのことだから、まだ現実味が帯びていないのだ。

 魔神の使徒よりも強くなった段階で修行は終わったはずだから、クロヴィスよりも強いのはそうなのかもしれないけど……。


「ご安心ください。いざという時は私もおりますので。あの程度の警備兵ならば、クロエ様が魔力の波動をあてるだけで気絶するかと思いますよ」


「そうですね。少し弱気になってました」


 心の持ち様は大切だ。いくら自分が力を持っていても心が負けていたら勝てるものも勝てなくなる。


 俺はすぅーっと息を吸い込み、吐いた。

 覚悟を決める。仲間のために戦う覚悟だ。


「正面から行きます。ついてきてください」


「フフ、承知いたしました」


 堂々と、モーリア邸の正面玄関から突入する。

 突入といっても、普通に歩いて近づいているだけなんだが。


「止まれ! お前達何者だ!?」


 案の定、門の前に立っていた衛兵に声をかけられた。

 無駄だろうが、俺は一応問いかけてみることにした。


「この屋敷の中に私の仲間が捕まっているんです。返していただくことは可能でしょうか?」


「仲間……? お前、その赤い左目、魔族だな? となると数時間前に連れてこられたあの2人のことだろうが――ダメだ。主の許可なしに決めることは出来ん」


「どうしても応じることは出来ませんか?」


「ダメなものはダメだと言っている! それに今、こちらも立て込んでいるんだ。これ以上しつこいようなら――」


 言って、兵士は槍を構えた。

 応戦の意思あり、ってことだな。


「力づくで追い返すまでだ!」


 兵士は槍をこちらに突き出そうとモーションを取る。

 が、今の俺にはその動作がどうしようもなく遅く見えた。

 これが精神世界で修行した成果なのだろう。

 動体視力が異次元なほどに上がっている。

 魔神として身体と魂が適合したおかげともいえるが――。


「仕方がないですね――」


 俺は魔力を少しだけ表に出した。

 魔術を行使したわけでもなく、魔力を圧縮して撃ちだしたわけでもない。

 ただ、少しだけ垂れ流しただけだ。

 だが――


「ぁ……」


 兵士の男はそれだけで目を回し、地面に倒れた。

 オイオイオイ、これが魔神の力なのか……。

 己が本当に強者になったのだと、身をもって味わってしまった。


「本当に気絶してしまいました……」


「でしょう? 今のクロエ様を脅かす者はこの街にはおりません。もしかするとこの世界にもいないかもしれないのです。ご自身が強者になったこと、自覚していただけましたか?」


「魔神という存在は、本当に凄いんですね。これはちょっと、力の扱いは気をつけないといけないかもです。加減も難しいですし……」


 強すぎる力は自分も破滅に追いやりかねない。

 マンガ・アニメ脳かもしれないけど、気をつけるに越したことはないだろう。なんというか、誇示するのはよくないってことだな。


「おや、騒ぎを聞きつけて兵士たちが集まってきたようです。いかがなさいますか、クロエ様?」


「一か所に集まってくれるのは好都合です」


 警備の数を減らすことが出来れば、2人を助けに行く邪魔者が減るということだ。ここで一気に叩けるのはついている。


「門番を倒したのはあいつらか!」


「やつら何者だ!? まさか、大臣を手にかけたのは――」


「どちらにせよ侵入者だ! 捕えろ!」


 一斉に兵士たちが各々の得物を構えて、俺たちの方へと突撃してくる。

 俺は先ほどと同じように、魔力の波動を外へ放出した。

 広範囲に向けて漂う魔力の波動は、やはりというべきか兵士たち次々に気絶させていく。


「ば、バカな……」


「いったい、どんな魔術で我々を……」


「ぐっ……眩暈が……」


 数秒もすると、兵士達全員が地面に横たわっていた。

 オーラだけでこれ程とは……。

 魔神、恐ろしい。


「これで全員かな……」


 辺りは一瞬で静まり返る。

 モーリア邸の広い庭は、倒れた兵士たちで一杯になってしまった。


「ククク、さすがはクロエ様。お見事でございます。では、先に進みましょうか」


「そうですね。行きましょう――」


 大勢の兵士の脇を通り、俺達は屋敷の内部へと侵入した。

 

 


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