青柳朋彦
毎朝の日課は仕事を頑張る父のために弁当を作ることだ。いつもはもう少し寝ているのだが、昨日は怒って洗濯をせずに寝てしまったので五時に起きた。洗面所に向かい洗濯機を覗く。なんと、空っぽだった。
乾燥室の扉を数センチ開けると洗濯物が干されていた。ついでに除湿器もゴウゴウ音をたてて稼働している。せめてタイマーをセットして欲しかったが。イラつきより感謝が大きく、除湿器の電源をそっと切る。
心の中で父に礼を言うと、今度は米を炊き忘れたことを思い出した。
急いでキッチンに向かう。炊飯器の中は艶々の炊き立てご飯があった。どうやら父が炊いてくれたらしかった。
昨日の自分の行動を少し反省する。弁当には好きなおかずを入れてあげようと決め、冷蔵庫を開けようとする。と、冷蔵庫に貼り付けてあるメモパッドに父からのメッセージが書かれていた。
“弁当を作ろうと頑張ったけど、料理は壊滅的にできません。まず卵が割れなかった。俺には野球をする方がずっと簡単みたいだ“
それなら美味しい玉子焼きを作ろう。挑戦したのだから父は食べたかったに違いない。
しかしその考えは一瞬で消し去ることになる。なんと冷蔵庫上段に置かれている卵のパックが丸々無くなっていたのだ。
「一昨日、特売で買ったばかりだったんだけど」
まだ一個も使ってなかったのに、どうして全部使いきるほど卵を割る練習をしたんだ。
軽い殺意を覚えたことはいうまでもないだろう。
俺は怒りに任せ爆弾みたいに大きなおにぎりを二つ作ってやった。