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蛇のように狡猾に、蠍のように鋭く

訂正とオワビ


七つの大罪、色欲ラストをラースと勘違いして表記してしまいました、大罪の方々にはご迷惑をおかけし申し訳ありませんでした。なのでダケンをボコボコのネチョネチョにしてください




砂刃サンドブレード!!」


「どぉうわぁぁ?!」



 強烈な日差しが降り注ぐ中、ゼノムはグラトニーホッパーとおやっさんの能力をフル活用しながら砂漠をせわしなく飛び回っている。ラースギルタブリルの女性、リリアが両手に持った杖から砂を操る魔法を絶え間なく乱射してくるからだ。



「(現時点わかってんのは、地面に沿うように飛んでくる砂の刃、ピンポイント足元に生えてくる砂の槍、そして面攻撃の砂の大波……チッ、これだけでもヤベェってのに……)」



 次々と飛んでくる砂の刃や槍を避け続け、そしてついにゼノムの強化された動体視力が僅かな隙を見出す。やはり連続で魔法を使い続けるとどこかでインターバルが出てきてしまうらしい。



「チェェェェェェェリヤァァァァァァァァァァァ!!!!!!!」



 一対の鉈鎌を連結させ、薙刀のようにして突進するゼノム。ゼノムの足元の砂が爆発したかのように吹き飛び、そしてその余りの勢いと速さにリリアの反応が僅かに遅れる。が



ガッギィィィン!!!!!



 薙刀がリリアに直撃する寸前、不思議な衝撃音が響き薙刀の強烈な一撃が直撃寸前で完全に止められてしまった。刃は鉈状態で薙刀にしたカスミナヅチは発動している攻撃重化のエンチャントと遠心力、さらにゼノム自身の強化された筋力ですさまじい威力を持っている。だがそんな強力無比な一撃を彼女は涼しい顔をして防いだのだ。



『ムダだ!! 我が魔力障壁は人間ごときに貫かれるものではない!!』



 刹那、ゼノムの背筋にゾクリと怖気が走る。障壁を蹴りながら緊急離脱すると、ゼノムの居た場所に一対の巨大なハサミが凄まじい『バチィィン!』という音を立てて閉じられていた。


 若干スライドするように着地したゼノムの額には冷や汗が流れていた。あの時離脱していなければ上半身と下半身がグッバイしていただろう。ゼノムは普段相手にしているようなただのモンスター相手に苦戦などほとんどの場合ありえない。だが今回は違う。モンスターの能力と人間並みの高い知能を持つ、まごうことなき強敵だ。正直マトモにやり合うと命がいくつあっても足りない。


 対人戦とモンスター戦が交じり合う特異な戦闘。ゼノムは今まで経験したことのない戦いに、僅かな恐怖と燃え上がるような高揚感を覚えていた。



「ハッハァ……やべぇな。楽しくなってきやがった」


『フン、恐怖で発狂したか』


「いーや、俺はこれ以上にないくらい正気だぜ? そういや自己紹介が遅れたな。俺は冒険者ヴェルゼノム・セルクタス。さぁ、おっぱじめようかァ!!!」



 人間としての理性を持ったまま、ゼノムの真紅の眼球は獲物を見つけた獰猛な獣のように妖しく輝く。その人並外れた異様さにリリアは警戒度を引き上げた。コイツは弱い、だが油断できる存在ではない、と。



『……砂漠の守護者一族、ラストギルタブリルのリリア。思い上がったその妄言、砂塵の中に沈めてくれよう!!』




 ゼノムは懐から投げナイフを取り出した。知り合いの魔道具屋特製のとっておきの仕込みがなされた小道具。それをちゃらりという軽やかな音と共に空中にバラ撒く



「ダララララララララ!!!!!」



 ゼノムは落ちてきた投げナイフの柄をパンチで思い切り殴り連続で射出した。人並外れた力を以て射出された投げナイフ数十本は、砂を巻き上げながら尋常ではない速さと威力でリリアの障壁に突き刺さる。それが連続で次々と飛んでくるのだが、リリアの自信は揺るがない。




『ムダだ!! やはり人間は愚かだ、なぜわからぬ』


「ムダかどうかはその身を以て体験してみな!!」


『なんだと?』



 リリアが障壁に目を見やると、なんと障壁にヒビが入ってきている。投げナイフの切っ先が淡く光っており、それが障壁に何らかの影響を及ぼしているようだ。


  魔術阻害ナイフは主に魔術師などが地面などに描く魔法陣を崩すための小道具で、対魔術要素に関しては非常に高い効果を発揮する。刃は対魔術加工の印が彫られており、さらにその刃には魔封石と呼ばれる魔法魔術の発動を阻害する鉱物が混ぜ込まれている。とはいっても単体ではそれほど目を見張るような効果は得られない。これで魔法陣を崩すときは魔法陣にある魔法発動の要となる部分を切り裂かなければ効果は発揮されず、正直マイナーもいいところな道具だ。


だがそれが今でも絶え間なくリリアの障壁に打ち込まれ続けている。ゼノムの知識とヒュージドラゴンフライの能力で視力を強化し見破った障壁の弱い点。そこに的確に打ち込むことで障壁自体の魔術的影響力を弱めつつあるのだ。



『バカな?! 父ですら敗れぬ障壁をこんな小さな刃でヒビを入れるだと……?!』


「魔術阻害用のナイフだ。見えてる景色が狭いな、リリアさんよ」



 障壁に刺さるナイフとナイフ射出の勢いで巻き上げられた砂塵でリリアの視界はよくない。その隙を見逃すゼノムではない。鉈鎌を貫通能力に特化した槍形態にしそれを薙刀状に接続、拳を構え標的を定める。



「狙うは一点。そこだ!!」



 魔術阻害ナイフが何本も打ち込まれたことにより障壁の強度が一部分だけ著しく弱くなる。そこをゼノムは狙う。エンチャントで高められた貫通能力にゼノムの怪力、そして弱められた障壁。もはやこの槍に貫けぬものはない。



刺抉サシエグル蛇蝎ノ牙 (ストライク・インジェクション)!!!」



 ゼノムの強烈なパンチによって圧倒的な推進力を得たその魔槍は真っすぐにリリアの障壁へ向かってんでいく。その一撃は一瞬障壁に衝突し



 バギャァァァァァン!!!



『ッ、がぁぁぁぁ?!』



 リリアの肩を切り裂いた。






ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



『ッ、つぅ……』



 持っていた砂魔術の発動媒体である王笏を一本取り落とし、傷口を空いた手で押さえる。あの一瞬でどうにか身をかわして致命傷を避けたが、リリアの勝機は限りなく遠ざかってしまった。あの障壁があるからこそ、魔術の呪文の詠唱時間を気にせず大技を連発できたのだ。近接格闘もできなくもないが、ゼノムの身体能力やスキルも加味すると圧倒的に不利だ。



「ハァ、ハァ、ハァ……とりあえず、だ。俺はシャボテンイチゴを二つだけ手に入れられればいいんだ……二つだけ譲ってくれ、そしたら帰るから……」


『っ、貴様……』



 ゼノム自身もかなりの消耗具合だ。このままどちらかが死ぬまでやり合うのは得策ではない。互いに見逃し合おうというゼノムの提案にリリアは唇を噛み締める。



 次の瞬間、二人の周囲の砂漠が急激に陥没し、辺りのサボテンもろとも引きずり込んでいく。流砂だ。先ほどの戦いでオーバーワーク気味に能力を使っていた為、ゼノムは砂漠に完全に足を取られる



「どぉ?! っ、やべ、クッソ!!」


『クッ……まさか、お父様?!』



 リリアがそう呟いた瞬間、辺りに尊大で大きな声が響いた。



『クフハハハハハハハハハ!!!!! 面白い!! 我が娘を退ける者よ!! 我が宮殿に招待しよう!!! 貴様をこの目で見たくなった!! フハハ、フハハハハハハハハハハハ!!!!』



 数分経たずにゼノムとリリアは砂漠の底へと招待された。






おま●け


 ラストギルタブリル


 大きなサソリの下半身に美しい女性の上半身が乗っている魔族の一種。生まれつき強力な魔力を持っており女性しか存在しない。なぜ名に色欲ラストが付いているのかといえば、その苛烈な繁殖方法によるものから来ている。


 彼女らは繁殖する際に適当な人間の男を連れ去り尾にある毒で全身をマヒさせる。そして巣に持ち帰ると絶頂が止まらなくなる猛毒を対象に打ち込む。種袋は不眠不休で枯れるまで種を搾られ続ける。


 枯れ果てるまで搾り取られた種袋はそのまま砂漠に廃棄され砂漠の一部となる。そういった苛烈な繁殖方法により色欲の名がつけられたと言われている。



 もし砂漠を歩く時、砂嵐に出くわしたときは背後に気を付けることだ。背後に巨大なサソリの針が迫っているかもしれないのだから

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― 新着の感想 ―
[一言] おまけの部分なんですが・・・ ラースは色欲ではなく憤怒では?
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