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ギルドでのテンプレ、そして初依頼へ




「さァてここがインセクタのギルドか」



 インセクタ入国二日目。ゼノムはインセクタ王国の冒険者ギルドへと来ていた。活動拠点をここに移したことの手続きの為だ。冒険者はBランク以上になると、定住し拠点を決めた場合に手続きが必要になる。スタンピードなど災害が起こった際に、いざというときに所在がわからず連絡できないのを憂慮してのことらしい。


 ゼノムは元々中堅冒険者としてもそこそこに名を馳せていて、かつ超絶不本意ながら勇者クソパーティに居たこともあってそういった手続きには慣れている。あのアホがゼノムに手続きを押し付けていたこともあるのだが。そしてゼノムはギルドの門をあけ中に入った。ギルド内はまだらに人がいるもののそれほど人数はいない。数人の冒険者が早めの昼食を食べていたり、手すきの受付嬢が隣の受付嬢とかるいお喋りをしていたりしている。



 時間は昼に近い頃。旅の疲れで寝坊したのでこの時間になったが、理由はそれだけではない。冒険者がこなす依頼書はギルドの依頼書ボードに張られるのだが、依頼は早い者勝ちなので朝早く来ないといい依頼書はとられてしまう。なのでギルドが混むのは早朝辺り、従って中途半端なこの時間は空いているのだ。手続き面倒くさい雑事をするにはこの時間帯が一番いい。ギルドカードを出し受付嬢に提出するゼノム



「どーも」


「いらっしゃいませ、ようこそ冒険者ギルドへ! 今日はどんなご用向きでしょうか」


「Bランク冒険者ゼノム、この町に定住するんで登録よろっす」


「かしこまりました、ギルドカードをお預かりします。文字はお書きになられますか?」


「書けるよ。書類とペンちょーだい」


「かしこまりました、こちら書類です」



 受付嬢が奥に引っ込みギルドカードの登録をしている間に書類をパパッと書いてしまう。この手続きも慣れたものだ。あのアホ共せいでな!!(全ギレ)


 と



「おうおうオッサン、新顔か? 俺たち『激流の泥船』に挨拶もなしか? この町に来たからには先輩である俺たちを敬ってもらうぜ?」




 通過儀礼がゼノムを襲う。三人組の若手冒険者パーティに絡まれたのだ。その前に



「まぁそれは一旦置いといてだ。お前らパーティ名それでいいのか?」


「何言ってんだ、カッコいいだろ?!」



 ドヤ顔するリーダーらしき男だがその後ろに居る二人は頭を押さえて頭を振っている。この二人にちょっとだけシンパシーを感じたゼノムだった



「あー、その。うん、すまんな。ゴメンって」


「なんで謝るんだよ!! ブッ殺すぞ?!」


「落ち着け、まだ手続き終わってないんだよ。もうちょっとしたら終わるから待っててな」


「おう」



 ……思ったより素直だった。いや、バカなのか?





ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



「お待た」


「遅いぞオッサン!!」


「相手をどっしり構えて待つのも男の度量だぞ青年」


「お、おうそうだな……」



 なるほど、このリーダー君バカで正直でバカなんだ。まだ挫折は味わったことがないようだが



「ではお前らはこのギルドの先輩ということになるのかな? 君たちにお近づきの印としてプレゼントがあるんだ」


「お? 物分かりがいいじゃねーか」


「俺からのプレゼント……挫折と屈辱と二日酔いを差し上げよう。注文だ! このギルドで一番キツい酒と適当につまみを大皿に大盛で二種類、あと酒に合う果実水をたらふく持ってきな!!」



 手近な受付嬢に金貨を軽く投げつけ随分と豪快な注文をするゼノム。金貨を雑に投げ渡したり予想外の勝負に激流の泥船たちは目を剥いているし、残って酒を飲んでいた冒険者たちも興味津々でゼノム達を見ている。



「おい、どういうことだ?!」


「お前らは俺を屈服させたい、俺はお前らを屈服させたい。だが剣だの魔法だので戦うんじゃありきたり過ぎて面白くねぇ。ここは冒険者皆大好きな酒でチキンレースといこうぜ。俺のハラも減ったしな」


「お待たせしました、溶岩焼酎ストレート、ジャガイモと腸詰炒め、グレンペッパーとレッドボアの真っ赤っか炒め、スカイベリーの果実水です!」


「うわめちゃくちゃウマそうだな! 酒のアテにゃ最高じゃねぇか!!」


「ますますどういうことだ?!」



 リーダーの青年がワケがわからないといった風に絶叫する。がゼノムはそんな青年もどこ吹く風。自分の分の酒と果実水を混ぜてカクテルを作り、大皿のツマミを小皿に取り分けて既に臨戦態勢だ。



「ん? どうした、席に付けよ。それとも、青年は自分が吹っ掛けた勝負を逃げるってのか? オイオイ、冒険者どころか男として恥ずかしくないのか? ン?」


「……じょーーとーーだ!!!! やってやろーじゃねーか!!!」


「ほいほい、んじゃ座れや」



 結論から言うと青年は一口目でオチた。ドワーフが好む喉を強烈に焼く酒だ、人間が飲むには水などで割らなければ飲めたものではない。それを小さなコップとはいえ一気に飲んだのだ。ちなみにゼノムは果実水をカクテルするだけでなく、実はコッソリ低級解毒ポーションも混ぜていた。これでやっと比喩でなく喉を焼き焦がす酒は美味しいカクテルとなり人間に飲みきれるものになったのだ。


 周りの冒険者や彼の仲間は止めたのだが……



「あーあー、悪いね職員さん、コレは後でその辺の納屋にでも放り込んどくよ。バケツだけコイツに被せといて。おいお前ら、この量のツマミ俺一人じゃ食いきれないから一緒に食おうぜ」



 ゼノムはしれっと激流の泥船のメンバーを買収し懐柔した。周りの冒険者たちも爆笑しながらゼノムと酒を飲み交わす。余談だが、この後冒険者ギルドでは冒険者同士の揉め事の解決にこの酒飲み対決が流行り、なぜか勝負の後は友情が生まれたりと確実に良い方向へ向かっていったとされる。






ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ



 飲み対決(一方的な蹂躙)から数日後。ゼノムは依頼でパンゲアス大森林へと赴いていた。





「さァて。聞いた話じゃ信じられんかったがこりゃマジでヤバいトコだな、この大森林は」



 森林地帯を抜けた先、そこには広大な砂漠が広がっていた。驚くべきことにこの砂漠はパンゲアス大森林内部に内包されたエリアだ。ぽっかりとその部分だけ綺麗に砂漠が広がっている。そもそもこの大森林、一つの森林に森はもちろん砂漠や沼地さらに海、挙句の果てには火山エリアすら存在している異常地帯なのだ



 ちびりと飲み水を一口飲んで口を潤し、改めて手帳に挟んでいた依頼書の内容を確認する。




『シャボテンイチゴの納品



シャボテンイチゴ×二十粒


依頼人・甘いもの大好きな受付嬢


 私、ジャム作りが趣味なんです。いままであらゆる果物を買ってはジャムにしてきましたが、今回は大森林の砂漠エリアに生育している真っ赤なシャボテンイチゴをジャムにしようと思います! なので材料となるシャボテンイチゴをジャム一瓶分二十粒の納品をお願いします。乱獲を防ぐため回収数の上限は四十粒、追加で取って来てくださった分はギルドで買い取り追加報酬が出ます。あまり一つの場所から取りすぎないようにお願いします。詳細は職員から情報を聞いてください』



 ということだ。ゼノムがあらかじめ入手していた情報によると、この砂漠エリアに点在するサボテンの群生地によく生育しているらしい。果実はとても甘く水分も大量に含んでおり、よく砂漠を旅するもののオヤツになっているらしい。ギルド支給の地図に大体のサボテンの群生地は記されているため、それを目指してゼノムは歩き出す。


 しかし熱い。砂漠は極限環境だ、イチゴを採取できるサボテンの群生地は砂漠の中心部に纏まっているので砂漠の外周を回りながら回収することもできない。ラクダなどの動物を連れてこようにもラクダにとって足場が悪くそもそも危険な森林地帯を抜ける必要がある。以上の理由からこの依頼も大分ホコリを被っていたようだ。


 だがゼノムは違う。砂漠に適応した虫の魔物がいれば軽く依頼は達成できる。例えば今しがた砂を巻き上げて出現した巨大なサソリの力を借りるとか



『シャァァァァァ!!!!』


「シャオラッ!!!」



 両側から襲い来る巨大なサソリの鋏に抜剣した鉈鎌をぶつけ威力を殺し、サマーソルトキックでサソリの顎を思い切り蹴り上げる。体長数センチほどでありながらレンガを蹴り砕くほどのキックを放つグラトニーホッパーのキックが人間大になるとどうなるか。



『ゲシャァァ?!?!』


「よっしゃぁイッパツくれてやったぜ」



 凄まじい威力のキックに顎を撃ち抜かれ仰向けにひっくり返されてしまった巨大サソリがもがいていた。




もしも虫が人間大になったらって考えるとゼノムマジチートよな

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