王との謁見、そして闖入者
更新不定期になってしまって申し訳ありません、今回もオマケはなしです。絶対にオマケは書くので追記したらお知らせします。
「面を上げよ」
威厳と高貴を纏い玉座からゼノム達を見下ろすはインセクタ王国の王『フェリクス・ガーランド・インセクタ』だ。老いてなお健在のとびぬけた魔力、そして覇気は幾多の修羅場をくぐった現役冒険者たるゼノムですら委縮させる。魔族達も初めて見る身内以外の強者に思うところがあったようで、姿勢よく上品に振る舞っている。
ゼノム達が顔を上げると王は覇気を抑え不敵にニコリと笑う。
「そう身構える必要はない。冒険者ヴェルゼノム、意図せずとはいえ此度の魔族との接触、そして疑似的とはいえ融和を結んだ功績を余は称えよう。よくやった」
「もったいなきお言葉でございます………ん?」
ふとゼノムは疑問を抱いた、なぜ王は『意図せず』魔族と交流を結んだことを知っている? ゼノムの様子に王は満足げに笑い姿勢を崩した。
「ハッハッハ!! 頭もそれなりにキレるようだなヴェルゼノムよ。何、これほどの大事だ、余もここでただ座して沈黙するわけにはいかん。常に最悪の想定をし、いざとなれば余が先頭に立って戦わねばならんからな。情報収集は戦いの要である、もちろん穏やかな解決が一番でそうするために全力を尽くすがな」
これが正真正銘の王なのだ、ゼノムはそう思った。ただ国のため、無辜の民を護るためにあらゆる手段を尽くして戦う者。それがこの王なのだ。今までいけ好かない貴族しか会ったことが無かったので、フェリクス王との謁見は新鮮なものになった。
「本題に入ろう。ヴェルゼノム、後ろのレディ達を紹介してもらえるかな?」
「はい。それではリリアから」
リリアは姿勢を正し胸の前で腕を交差させ首を垂れる。そしてヴィーネとスーラも姿勢を正し首を垂れる
「砂塵の覇王・ファラオギルタブリル、ラーセリオス・タクラマキアが娘。ラストギルタブリルのアルメリリア・タクラマキア。良き隣人であるこの国の王に敬意と親愛を」
「エンヴィーホーネットが一女王、名はエルヴィーネ・ワスプリア。人族の王に敬意と親愛を」
「スロースアラクネ、名はスーラ。お会いできて嬉しいですわ」
「うむ。余はインセクタ王国の王、フェリクス・ガーランド・インセクタである。此度の新たなる友人との出会いに喜びを」
それぞれ『多少』異形ではあるものの絶世の美女であることには変わりなく、王は顔をほころばせながら答える。王たるもの多少の事では動じることはないのだ。と、静謐だった玉座の間に遠くから騒ぎ声が近付いてくる。どうやら玉座の隣にある王族専用のドアの向こうから聞こえてくるようだ。小さな女の子らしい高い声とそれを咎める声が複数聞こえてくる。スキルで人より耳がいいゼノムは会話の内容もはっきりとわかる。
「いけません姫様、王は今大事な謁見の途中で……」
「私だって王族です! 大事なお客様ならなおさら私もでなければいけません!!」
「いけませんったら、ちょ、誰か姫様を押さえろ!!」
「はぁ、ここまで来たら手遅れね、これじゃもう聞こえてしまっているでしょう……」
もうすぐドアの向こうまで近付いてきた声にフェリクスは苦笑いを浮かべながらこちらを見やる
「すまぬがもう二人、顔を見せてほしい者が居る。会ってやってくれんか。悪いようにはせぬ」
「構いません」
ゼノムが答えるとフェリクスがドアの隣の兵に手で合図する。兵が頭を下げドアを開けると少々わんぱくそうな小さな女の子と高貴な雰囲気を纏った妙齢の女性が入ってきた。
「ごめんあそばせ、遅れてしまい申し訳ございませんでしたわ」
「申し訳ございませんフェリクス様、止めたのですが……」
「構わぬ、客人もよいと言ってくれた。さて我が娘よ、お客様に自己紹介を」
「はい!」
小さな女の子と女性は美しいカーテシーでゼノム達に挨拶する
「インセクタ王国第一王女、プルメリア・インセクタです。大森林より来られた隣人なる魔族の方々との出会いに感謝を」
「インセクタ王国王妃、ユーリア・インセクタ。魔族の方々、よろしくお願いますわ」
思わぬ可愛らしい闖入者に彼女達の頬が思わず緩む。およそ五~六歳だろうか、幼少ながら器は王の血統を感じさせる。ゼノム達は王女様達のためにもう一度挨拶をした。
「うむ。話は逸れたがヴェルゼノムよ、お主の功績を湛え褒美を取らそうと思う。何か欲しいものがあるならば言ってみよ」
「は。もし許されるならば、我々が望むのは家でございます。現在冒険者が使う宿屋に間借りしているものの、彼女達には非常に窮屈ですし何より他の冒険者や客を怯えさせてしまうこともあり……私自身、そろそろ一つの国に根を下ろすことを考えていましたし、いずれの目標に据えていました」
「なるほど。彼女たちの家になるなら彼女たちの為の構造、つまり新築にした方がよかろう。望む立地はあるか?」
「は、出来れば王都と大森林の中間地点の平原が望ましいです」
「よかろう、そなたらの願いを聞き届けよう。いずれ使いをやる、その者と相談するように」
「ありがとうございます。そしてフェリクス王に彼女たちから友好の証として献上品があります、お受け取りください」
そう言ってゼノム達は献上品の準備にかかった。
おま〇け
魔石を使ったエンチャントについて
二つ目のエンチャントは属性の魔石を使ったエンチャントである。武器や防具には元々魔力を通しやすい性質を持つものがあり、普通の鉄の剣などはこれに当てはまらない。主に魔素に晒され続けた生き物である魔物の素材で出来たものや、ミスリルやオリハルコンなど魔力を通しやすい金属などがこれにあたる。
付与方法は簡単でモノに魔石をこすり合わせるだけでいい。そうすれば魔石の魔力が武器や防具に一時的に移り、属性が付与される。ただそうした場合、使用した魔石のランクによって付与される魔術効果が左右され、さらに魔石がエンチャントした影響でカラの魔石になってしまう。
さらに武器や防具のランクによってもエンチャントが微弱なものとなる場合があり、例えば強力な武具に火の魔石(小)でエンチャントしようとすると火属性が武具の力によって打ち消されてしまう場合がある。
このようにエンチャントする武具と魔石のランクを一致させること、使った魔石はカラになってしまうことからコストパフォーマンスが非常に悪く面倒ということになる。
この付与方法は最近発見されたもので、発見当時は画期的ともてはやされたものの、前述のデメリットが判明し今では緊急手段の一つとして認識されている。おそらく付与術師の追放ブームはここから来ているのではないだろうか。
どれにしろ、自衛の手段は多いに越したことはない。知識は力なのである。




