どこまでも落ちた愚者たち、そして萌芽
近いうち大きくコトが動きます。そういえば日本ではチート生物である竜がガチビビリするヤベェ虫がいるみたいですよ? でもツバに弱いのはどうかと思うの
あと前話の最後におま〇け追加してます。良かったら見てね
俺は勇者だ。世界に蔓延る悪を切り捨て善なるものを救う至高の存在。俺の前では万物万象が平伏し、全ては俺の所有物だ。
『だから思い切り壊しても構わない』
「どうしてですか勇者様! どうしてあの子を……」
「あ? ンなもん俺の服を泥で汚したからに決まってんだろ」
「やめろぉ!!! それが勇者のやることか!!!」
「そうだ。だからお前も死ね」
「お前なんか勇者じゃない!!」
「お前がどれだけ吠えたところで俺が勇者なのは決して揺るがん。吠えてろ汚物が」
善とは何だ? 俺の思い通りになるものだ。悪とは何だ? 俺の思い通りにならないものだ。それこそが真理。俺こそがこの世の真理なのだ
「よっしゃこいつは餞別だ取っときな!!」
悪は滅ぼさねばならない。敵は殺さなければならない。悪とはなんだ? 悪とは
あいつだ
勇者ダケンたちのパーティは苦境に陥っていた。討伐依頼は簡単にクリアできるものの、その準備が致命的に足りていなかったのだ。例えば森の奥深くに入り魔物を狩るとする。出現する魔物はダケンたちの敵ではない、だが凄まじい力を持つ彼らとて人間だ。食いもするし寝るもする。ただ深い森という場所で暖かい飯を食べ柔らかなベッドで休むという訳にもいかない。木など地形を利用したテント、虫よけ、携帯食料、その他もろもろ。遠征などの準備をした経験は三人にはない。
ダケンは勇者であることを見出されてから甘やかされたせいでサバイバルの準備などは全て近くの雑用係がやっていた。聖女であるアルミナも聖女として担ぎ出されてからはずっと箱入り状態で育てられ、自分のことも周りのお付きの人がやっていた。アルベールも似たようなもので、聖騎士として神殿に配属されてからはずっと神殿を護ることに従事していたためサバイバルの経験はほぼ皆無。そんなパーティ三人がサバイバル素人状態なのはマズいと国のお偉がたが生贄に選んだのがゼノムだった。
ゼノムはブツクサしながらも三人の子守をこなし常に三人が最適な形で活躍できるように動いていた。それだけならよかったのだが、ここで問題が発生した。王太子による勇者パーティ干渉である。王太子は勇者パーティを利用し各地で様々な悪事を働き私腹を肥やし始めたのだ。殺人、強盗、窃盗、詐欺、婦女暴行、密輸、誘拐、放火、犯罪行為に準ずるもの全て例外なくダケンたちはやらかしている。それに気付かないゼノムではない。が、この時のゼノムはあくまで中堅だ。勇者という人としての理から外れた存在に対抗できるはずもない。かつ普通の冒険者が対応できない依頼をダケンたちはちゃんとこなしていたのだ。
だがゼノムの精神に限界が来た。三行半のあの妙なハイテンションは病みかけたが故のもの。ゼノムは勢いに任せダケンたちから逃げ出した。だが……勇者から逃げ出したことでゼノムの精神には負荷がかかりつつあった。
自分が居たからこそ止められていた一部の彼らの蛮行。自分が彼らの首輪だった。だが軛から解き放たれた駄犬は野犬となり最早猛獣となる。そして狂気に陥った獣はいずれ首輪の主に噛みつくのだ
「どうしたダケン、最近成果が優れないようだが。勇者ともあろうものが負け続けなど、英雄譚にはふさわしくないな」
「申し訳ございません、王太子殿下」
王城の一室、王太子の部屋にダケンと王太子はいた。ダケンが呼び出された理由は最近冒険者としての依頼の成果が芳しくないことの叱責。勇者としてダケンは他の追従を許さない華々しい活躍が期待されているが、最近の勇者パーティは依頼失敗が続いている。
「なぜだ? 以前のお前たちなら軽くこなせていたレベルの依頼だぞ? なにか調子を崩すことでもあったのか?」
「それが……雑用係が逃げ出しまして。その尻拭いに余力を裂かれてしまったのが原因かと。ヤツは雑用係とはいえ勇者パーティに在籍していました。我々のやることに色々とカンづいていたことでしょう、始末をつけようとしたのですが……不意を突かれ逃走を許してしまいました」
困ったダケンは逃げ出したゼノムに全て押し付けることにした。自分の華々しい出世街道におぞましい汚点は必要ない。真実を知っているのは勇者パーティとヤツだけなのだ。
「まったく、そういうことは早く言いたまえ。暗部を向かわせる、貴様と私の栄光に汚点などあってはならない。即刻ヤツを始末させる、貴様はもっと業績を上げるのだな」
「は」
一先ずの危機は去った。だがそれも一時しのぎだ、早急に新たな使い捨ての駒を手に入れなければならない。奴隷は使えない、勇者パーティが奴隷などと言う汚らしい存在を使っていると知られればイメージダウンにつながってしまう。
「つきましては王太子殿下、私めに従属の首輪の使用許可を」
「ほう? アレか、確かにアレを使ったほうがよかったな。早急に準備させよう。もっと早くに気付いていればよかったな」
彼らは笑う。これから訪れるであろう裏切り者の末路に。そして訪れるであろう栄光に。
そんな都合のいいことが自分たちのような愚か者に起こるはずのないのにも気付かずに。
ЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖЖ
「で? お前らはどこの差し金で俺を殺しに来た?」
「「「「「勇者様と王太子殿下の指示です」」」」」
「よしわかった、然らば死ね」
その瞬間暗殺者たち五人の首が胴体と永遠の別れを告げた。残念だがこういった存在はどうあがいても任務失敗の時点で死んでしまうのでせめてケジメとしてゼノム自身がトドメをさす。ヘタに生かして帰すと余計な情報が敵に伝わってしまうからだ。これも自己防衛の一環なので罪には問われない。多分。どっちにしろリリアの毒により死ぬのだが、ゼノムは自分の都合に巻き込まれたリリアの手に血が付くことになるのを嫌ったのだ。
王太子と勇者の秘密の会談から数日後、ゼノムの元に王国腕利きの暗殺者部隊が派遣された。ゼノムは暗殺を虫たちから聞いており、余裕をもって対策を立てそして返り討ちにしたのだ。リリアからラストギルタブリル特製の(いうまでもなく強烈な)自白毒を貰い、黒幕を特定した。これを繰り返すこと数回。もうそろそろコトが大きく動くことになるだろう。
「上等だ。お前らがそう出るンなら俺も容赦しねぇ。テメェら纏めて地獄に叩き落してやる」
ゼノムの赤い目が妖しく輝いた。愚者は魔王の芽を発芽させてしまったのだ。
おま〇け
勇者の定義
過去この世界の永い歴史の中で様々な勇者が生まれた。そのどの勇者にも共通するのが『体を神話の生物に変化させることができる』能力を持っていたことである。ある勇者は体をドラゴンに変化させ、ある勇者は不死鳥に、ある勇者は神をも叩き落す巨人になったという。
余談だが例に挙げた生き物は現在ではほとんどが絶滅し人々の前からいなくなってしまったものの、太古の地層が露出した崖などから神話生物の化石が発見されているので、こういった生物がかつて存在していたことは間違いない。
そして勇者という存在も長らく確認されておらず、半ば伝説となりかけていたが……とある男がスキル選定の儀によって見出され勇者となった。勇者は人々の希望となったものの、関係者たちはある懸念事項があった。気になる予言の一節が教会の古い古い記録に残されていたのだ。
『一つの国に双子の勇者の芽あり。されど片割れは成長すれば魔王となり、片割れを必ず殺すだろう。そして愚者たちは国ごと魔王に飲み込まれ、地獄で報いを知るだろう』




